第九小節:前を通り過ぎて
よいこの皆は授業をサボっちゃだめだぞ☆
チャイムが鳴る。それで目を覚ます海翔。起き上がろうとしたら腕が痛いことを忘れていておもいっきし使ってしまった。
「たく、不敏だぜ。」
海翔は立ち上がり首を左右に傾ける。
「よし、行くか。」
保健室にから出る海翔。
「一生くるなよ。」
「こっちから願い下げだ!」
溜め息をつく海翔。取り合えず次は体育だから体育館へ向かう。教室棟とは逆の方へ歩く。
「この腕じゃなにも出来ねぇな。見学でもするか。だったら保健室で寝てりゃよかった。」
自分の中で会話を繰り返す。そして海翔達のバンドが占領している部室の前を通りすぎようとした。
「あぁ、なんできづかないの。鈍感な貴方に寄せた思いに苦悩するのは結局私。」
歌が聞こえた。胸が苦しくなるこの歌。海翔は部室の中を覗いてみた。
「あぁ、いつも貴方の隣に、私を置いて欲しいだけ。」
そこに麗奈がいた。伴奏もなにも無いのに、あれだけで曲に聞こえた。
「なによ、」
海翔は思わず見とれていた。それに気づいた麗奈は目に溜まっていた涙を指で擦り落として聞いてきた。
「いや、上手いなって。」
仁王立ちをして海翔を凝視する麗奈。
「当たり前じゃない。私を誰だと思ってるの?」
麗奈は片頬をプイッと膨らませて恥ずかしそうに顔を赤らめながらそっぽを向く。
「麗奈は麗奈だろ。」
「違うわよ!」
イタズラに笑う海翔。明らかに答えを知ってそう言ったのだろう。
麗奈は組んでいた両腕を下に振り下ろして体を前屈みにして顔を真っ赤にして怒った。
「元気になったな。」
麗奈はその言葉に驚きドキッとする。
「うるさいわよ!海翔はまずその腕の事でも気にしてなさいよ!」
その時、チャイムが鳴る。
「やば、遅刻…!お前もさっさと行けよ。体育だからな。」
海翔は体育館の方へ走っていった。
「わかってるわよ。バカ。」
麗奈もまた体育館の方へと走って行く。
「ちょっと待ちなさいよ!」
海翔を追いかけて。
私も歌います!
ララララ〜♪