第八十七小節:浜辺で
さんさんとふりしぎる日光は浜辺をきらびやかに輝かせ、海から流れてくる風が萌えた木々を優雅に揺らしていた。
そこに、麦わら帽子の少女が海を眺めながら、風で帽子が飛ばされないように押さえている。
「ヤッホーーー!!」
なにかの衝動にかられたかのように突然叫ぶ。
「ここは山か!」
すかさず海翔が突っ込む。
「いいじゃん。
減るもんじゃないし。」
麗奈は海翔を見て、ニッコリと笑った。
「恥ずかしくてオレの寿命が減るっつうの。」
ボソリと呟く。
と言うことで、6人は予定通り海に来ています。
浜辺はほぼ満帆、海の家も大にぎわい。
まさに夏の海日和に来た、失敗した人たちが押し寄せていた。
「おい、カナ、やっぱり外れだろ。」
「いやいや、当たりね。」
いつかのプールに行ったときの水着で狭い陣地にパラソルを張り始めた男子陣。
「だって、胡桃ちゃんが来てるのよ!」
どうやらカナは胡桃ファンのようだ。
「しかも、良いとこいつの間にか取ってるし。」
昨日から泊まりで陣取りをしていたらしい。
「いやぁ、こんぐらいね。」
「1人で喋ってんなら手伝え!」
結局後で取らなければいけないと気付くことになるが、段取りよくパラソルを設置した。
その後は、まず浮き輪、もちろんダイゴが全て膨らませるが、それを着け、海に突っ込む麗奈とカナ。
それに続いて海翔とダイゴが入っていく。
「僕たちも行こっか、」
ユウヤとシナは未だにパラソルの下にいた。
ユウヤが立ち上がり、シナの方を見る。
「待ってください。」
明らかにおかしなシナだった。
「待ってください。
は、離れたら、荷物取られちゃうかも知れませんし。
誰1人残らなければ、」
「じゃぁ、僕が残るよ。
シナはみんなと遊んできなよ。」
「いえ、わ、私が、」
「わかった。2人で待ってよう、ね。」
「は、はい。」
2人とも、顔を真っ赤にさせていた。
海翔はふざけて麗奈の浮き輪にしがみつき、沖の方まで向かっている。
カナは怖くていけなく、中途半端な所でプカプカ浮いてダイゴと合宿の話をしていた。
「そんなことあったんだ。」
「あぁ、跡形もないだろ。」
「うん。ある意味スゴいね。」
そうやってライブの時間まで待つ作戦のようだ。
まだ帰ってこない4人を待っている、ユウヤとシナ。
「シナさぁ、好きな人いる?」
「わ、わたし、ですか!?
い、いませんよ…」
「そうなんだ。」
少しの沈黙が起きる。
暑いのかシナの胸元を汗が流れる。
出た分をペットボトルのカルピスで補給する。
ユウヤはそれをまじまじと見ていた。
「どうしました?」
「い、いや。」
ユウヤは焦って海を見る。
「あの、私、ユウヤの事が好きです。」
「え!」
再びシナの方を向いた瞬間だった。
ユウヤの目の前には目をつむったシナの顔があって、唇に熱くて柔らかいものが触れていた。
シナがゆっくり離れ、目を開いた。
「迷惑ですか?」
ユウヤは放心状態だった。
しかし、すぐに我に帰り、
「ぼ、ぼ、ぼぼぼくも、好きだったんだ!」
ユウヤはシナに抱きついた。
「あの2人熱いねぇ。」
海からパラソルの下の2人を始終見ていたカナとダイゴは、羨ましそうしていた。
「お前は、めぼしいのいないのか?」
「は!?あたし?
あたしは良いの、応援してるだけで。」
「少しは素直になれよ。
後悔しないように。」
「う、うん。」
複雑な思いを胸に、そろそろ時間なので戻ることにした。
キターーー!!
とうとうっっっ!!




