第四十三小節:玉子焼き
玉子焼きは甘い派?しょっぱい派?
お昼、玉子焼き大会。
「みんな作ってきた?」
学校の屋上にいるのは7人。女性が4人で、海翔、ユウヤ、ダイゴだ。
なぜか机が4つ一直線に並べられ、その上にクロスが引かれている。
「もちろん。」
女性4人は机の上に各々のお弁当箱を乗せた。
「で、なんで薫先輩がいるんですか?」
麗奈は聞いてしまった。
そもそも事の原因は薫だ。
昨日、麗奈が玉子焼きを作ってくるよう海翔が話しに乗せたが、それをたまたま聞いていた薫が、
「なんならみんなで味見大会にしない?」
と言うからこんなことになった。
「さぁ!まず私のからお食べなさい!」
薫は真っ赤なお弁当箱を開け、中から真っ黄色の玉子焼きが出てきた。
審査員である男子3人はそれを指でつまみ一口で食べた。
「うん。」
「まぁ、」
「普通。」
薫は落ち込んだ。まさにOTLの形をしている。
辛口の男子陣であった。
「次は私のはいかがですか?」
シナはお花柄のお弁当箱を開け、いつもと変わらない玉子焼きが出てきた。
「おいしい。」
「…………。」
「どうりで麗奈が奪うわけだ。」
「奪ってないわよ!」
騒がしい連中に比べて、ユウヤだけは静かにシナを見つめていた。
「じゃぁ、次はあたしの。」
お弁当箱としてはダサいカナのお弁当が開き、茶色っぽい玉子焼きが出てきた。
「しょっぱい、」
「から!」
「しょっぱ!」
カナもOTLの形で落ち込んだ。
「最後ですよ。」
「わ、私はいいよ。」
いつになく弱気な麗奈。
「怖じ気づいたのか?」
ニンマリと海翔は笑った。
「そ、そんなわけないでしょ!」
「じゃぁ開けろよ!」
「わ、わかったわよ!」
意をきっしていつもの青いお弁当箱を開けた。中からは真っ黒の玉子焼きが出てきた。
「こ、こんなんよ。」
顔をそっぽを向けた。
「焦げてんの。どうせ私は玉子焼きも作れないのよ!悪かったわね。」
ユウヤとダイゴはお互い顔を見合わせた。
海翔は黒焦げの玉子焼きを指でつまみ、少し眺めてから口に入れた。
「バカ!不味いに決まってんじゃない!」
海翔は辛そうな顔をして口を動かし、飲み込む。
「不味いよ。だけど、食べないと採点出来ないだろ。」
「ホントに、バッカじゃない。」
そっぽを向いた顔は少し赤らんでいた。
「結果、一番は言うまでもなくシナ。」
「二番は薫先輩です。」
「三番カナ。」
その結果を聞いて納得しなかったのはカナだけだった。薫に負けたのが悔しいらしい。
海翔は麗奈に近寄る。
「なによ。」
「上手い玉子焼き作れるようになったら食わせろよ。あんな不味い玉子焼き食ったままじゃ口が腐っちまう。」
「うるさいわね。二度とあんたなんかに玉子焼きなんてあげないわよ!」
麗奈は室内に入っていった。
麗奈はやらなければならないことがまた増えた。
結局失敗……