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第四小節:自分の気持ち、変わる貴方

曲がなかなか出てきませんねぇ。もう少し積極的にいきたいものです。




 放課後も終わり海翔と麗奈はいつものように帰路に着いた。


 近い訳でもなく微妙な距離を置いて歩き続ける。


 いつもは口喧嘩をしながら帰るのだが今日に限って2人は会話すらする様子がなかった。


 なにもしないまま駅に着く。電車もいつもどおり同じ。


 いつもは五月蝿いと思われているのだが妙に静かなのだった。


 海翔の方が降りるのが早いので麗奈はそれを笑顔で見送る。


 電車の自動ドアが足早に閉まる。麗奈は右手を邪魔にならない程度に左右に振っている。海翔は右手を制服のポケットに入れたまま左手を頭の所まであげる。


 電車が走る。麗奈の視界から海翔の姿は容易に無くなる。麗奈は少しでも海翔の姿が見たくてドアに張り付く。


 麗奈はこのやり場のない感覚に慣れていなかった。少し俯き目を閉じる。すぐに頭をよぎるのが海翔であった。


「別に、あなたが好きな……」


 そこで呟くのをやめた。


 自分がなぜそう呟いたのかわからない、ただ自分は海翔の事が……


 そう思うだけで恥ずかしい。電車の窓に写っている麗奈の顔は仄かに赤く染まっていた。





 翌日。


 海翔はいつものように麗奈を待っていた。ただ今日は待たなかった。同じ電車に乗っていたのだ。


「今日は早いな」


 正直な感想を吐いた。


 ただその言葉を聞いて麗奈は顔をぶすっとさせた。


「わるい?」


 なぜか怒っている口調。麗奈でさえもなぜ怒っているかわからない。


「いや、逆に良いことだ。これからも続けてくれよ」


 海翔は流れで麗奈の頭を優しく2、3回叩く。


 麗奈は嬉しかった。笑顔を見るだけで満足感が満たされた。


 だけど、この早くなった胸のドキドキを海翔にだけは気が付かれたくなかった。



 そんな事をしているほど時間は生易しくなかった。


「ヤバイ! 急ぐぞ!」


 海翔は麗奈の手を引き走る。


 麗奈はこの瞬間が好きだった。


 海翔と手がつなげるから。


 温かい手、ギターのせいか固い指。少しでもその感覚に触れていたかった。


 しかしいつまでも続く訳ではなかった。


 いつものようにギリギリで間に合う2人。


 相変わらずのギリギリを薫先輩にいびられるが、それも嬉しく思うのはおかしいのかと思い赤面させる麗奈。


「そう、海翔くんだっけ」


「はい、」


 海翔が薫先輩に呼ばれる。


 なぜか体が熱くなる麗奈。気持ちが浮かぶような感覚。


「ライヴがあるんだけど、やりたい曲が2ギターなのよ。手伝ってくれないか?」


 海翔は低く唸りながら悩む。麗奈の心情は、お願いだから断って、であった。


「お願い、どうしてもやりたの。この通り」


 先輩に頭を下げられると断れるはずない。


「わかりました」


 海翔はそう言った。


 麗奈は溢れそうな涙を必死に堪えていた。


「ただし、」


 海翔の笑顔。


「本命でいきませんから」


 麗奈は何を言っているのかわからなかった。


「当然よ」


 あの薫先輩の笑顔を拝めた2人。


「それより遅刻するわよ」


「うわ!」


 海翔は麗奈の手を引き走り出した。


 間に合ったのは言うまでもない。


 しかし、麗菜の気持ちは置いてきぼりのままだった。




さぁ入りましたドロドロ。海翔は麗奈を選ぶのか、薫を選ぶのか!それとも…

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