第三十四小節:35分
翌朝。
麗奈はいつもより1時間早く起きてしまった。アナログの時計の短針は6を指していた。
寝間着から着替え、洗濯機を回し、テレビをつけ、朝食とお弁当を作る。
欠伸をしながら、いつも焦がしている卵焼きと戦っている。
そんな時、テレビからお天気お姉さんの声が耳に入った。
「今日のお天気は、晴れ後雨でしょう。」
「雨かぁ…」
傘を持っていかなきゃなと麗奈が思っていると、なにやら焦げてる臭いがした。
「あ゛!」
太い叫び声が家中に響き渡った。
「またやっちゃったよ…」
真っ黒になった玉子を残念そうに見ながら、取り皿に移した。
麗奈は溜め息を漏らしながらも朝食とお弁当を作り終えた。
「いただきます。」
たった1人の朝、もう慣れていた。ご飯を口に運びながらテレビのニュースを見ていた。
天下り、教育問題、殺人事件、どれもどうでもよかった。大人たちはそんなことを気にしているのかとしか思っていないようだ。
その中で、「自殺」と言うのがやけに印象に残ったのはなぜだか、本人でもわからない。
洗濯機が止まった音がし、丁度朝食も食べ終わったので席を立ち、食器を水に浸し、洗濯物を干しに行く。
と言っても、所詮1人分、時間はそうかからなかった。
食器も洗い、学校に行く準備も終えた。
「もう、行こうかな、」
テレビを消し、スクールバックを持ち、重たい足を無理矢理学校に向かう。
多少の不安は電車の中で増えて行く。
何時もより30分早いからか電車はガラガラであった。
学校の最寄り駅に着き、いつのも木の下で止まった。
8時。朝のHRまであと35分。走れば5分で着ける。
「遅いな、」
まだ早いと知りながら、早く来てほしいという想いが強すぎて待ちきれない様だ。
20分。学校に向かう生徒達を見送る。何時も海翔はこんな気持ちなんだろうか。
30分。もう、待てない。やっぱり来ないのか。
走る。
学校に向かって。
手を引いてくれる人がいないと以外と走るのが遅いと今更ながら実感する。
学校に着いてしまった。
息を整える。
そこに薫が近付いてきた。
「お疲れ、」
麗奈は顔を上げた。自分以外に息を荒げてる音が聞こえた。
「待ってんじゃなかったのかよ。たく。」
「海翔…」
麗奈の目には涙が見えた気がしたが、
「海翔君、無断欠席及び遅刻。みっちり反省して貰うわよ。」
薫の一言で気持ちが何時もの感覚に戻った。
「反省文、2000字、放課後までに持ってきなさい!」
薫も麗奈も笑っていた。
海翔は来なきゃよかったとほざいているが、笑顔であった。
壁が1つ壊された。
仲直り?したみたいでよかったです。
1学期も後半、夏が入ります!




