第三十小節:それぞれの気持ち
2日連続で無断欠席をした海翔。明らかにおかしいと思いカナを中心としたダイゴ、シナ、ユウヤは海翔の家にお見舞いという形で行った。
カナたちは海翔の家の扉の前にいた。
小村から住所を聞いてここまで来た。
カナは勇気を振り絞って扉をノックした。
しかし、反応はない。
もう一度ノックする。
「なんだうるせぅな。」
扉が少し開き、その隙間から海翔の顔が覗いた。
「なんだよ。皆で。」
カナ達を確認したら、扉を全開にする。
「いや、返事がないから、おかしいなって思ってさ。」
「余計なお世話だ。」
海翔はめんどくさそうに言う。
「なによ!」
カナが怒る寸前で、シナがカナの口を抑えた。
「海翔、学校ぐらいちゃんと来いよ。」
ダイゴが唸るように言う。海翔は目線を空に向けて、
「気が向いたらな、」
と言った。
「帰るぞ。じゃぁな、」
「じゃぁな、」
ダイゴは他の3人に目をやり、閉まっていく扉から離れて行った。
4人は帰りの電車の中で、
「諦めろ。あんなやつのためにオレたちが頑張る必要はない。」
ダイゴはカナを見ながらそう言った。
「でも、あたしさ、また聞きたいんだよ。」
カナから笑顔が消えた。
「高校生活始まってすぐの、昼休みの4人でやってた曲。」
カナに振られて教室で無理矢理やった曲。ダイゴもユウヤもシナも、みんなが笑顔だったあの日を思い出した。
「あんなに、仲良かったのに、あたしが、あたしが、」
我慢していた涙が溢れてきた。
「カナのせいじゃありません。勘違いから始まったんです。ちょっとづつ、誤解を解けばいいのですよ。」
シナがカナの背中をさすりながら、優しく語る。
しかし、カナはもう、海翔は戻ってこない気がした。
もう、救いようのない深い深い穴に落ちたように、諦めるしかない気がした。
「カナが言うなら、頑張るしかないでしょ!」
ユウヤがおどおどした感じに言う。
「カナじゃなくても頑張るんだよ。」
「ありがとう」
4人の気持ちが1つになった気がした。
一方、麗奈は何故か薫と一緒に帰っていた。
「どうしたの?私と一緒に帰りたいなんて。」
ゆっくりと町を眺めながら聞く。
「なんとなく、ですよ。」
完全に落ち込んでいる声色にどう、声をかけていいか悩んだ。
「私、みんなの迷惑になってますよね。」
薫の悩みを麗奈はより深いものにした。
「私がいると、みんなが苦しそうに私と話すんです。嫌なら話しかけなきゃいいのに」
「ホントにそうなの?」
麗奈は頷く。
「なら聞いてみたら。その本人に。」
麗奈は頭を横に振り、
「ムリ。またキズつけちゃう。」
「でも、話さなきゃわからないこと一杯あるわよ。」
麗奈は顔をうつ向けたままだった。
「案外、麗奈ちゃんが拒否してるだけかもしれないよ。決めつけちゃダメ。」
それ以降会話は生まれなかった。
勘違いから始まった仲間割れ…