第三小節:創作曲
平日の朝の当たり前の風景、登校。
海翔はダイゴやユウヤとは電車が違うので2人とは登校していない。しかし麗奈とは一緒なのだ。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
足早に歩く海翔に走らなければ追い付けない麗奈。身長差が問題なのだろう。
「お前のせいで遅刻ギリギリなんだから急げよ!」
二本電車を逃している。遅刻じゃないのが不思議なくらいだった。
海翔はチラと携帯を見る。海翔の顔が蒼白に変わっていく。
「やば、遅刻する。ほら急げよ」
海翔は無意識に麗奈の手をつかみ全速力で走る。
「ギリギリね。まったくあなたたちは」
「すみません」
海翔は笑いながら答える。
相手は2年風紀委員の川崎薫である。風紀委員と言えばお決まりのキャラがある。典型的な風紀委員の先輩なのだ。
「まぁ間に合ったから良いけど」
と言って持ち場に戻っていく。風紀委員に捕まったら原稿用紙に反省文書かされる。
ここはそう言うことにうるさい。
「ねぇ、海翔。薫先輩も確か軽音部なんだよね」
「なにを今更。ギターめっちゃ上手いし歌も上手いし、この学校の歌姫なんだぜ」
ふーんと鼻で答える麗奈の意識はどこかに飛んでいた。
「遅刻するっつうの」
海翔はいまだに繋いでいる手を引っ張り麗奈を教室に運ぶ。
いつも遅刻ギリギリの2人にはあらぬ噂が流れていたりする。恋人ならわかるが、なぜか、生き別れの兄妹だとか、姫と執事の関係だとかおかしい物もあったりする。
そして毎日のように始まるつまらない1日が始まるのでした。
なんやかんやで昼休み。
「お前さぁ、」
海翔は箸を麗奈に向けて喋る。
「いい加減別で食べたら。そのうちクラス全員が輪を作って食べるようになるぞ」
勿論空想だが、あながち外れてはない気がする。
「だよな、シナさん、カナさん」
「さぁどうしょう」
シナは麗奈よりおひめさまの匂いがある女性だが、なにかとどじっこでたまに弁当箱をひっくり返す眼鏡っこ。
「たのしけりゃいいんじゃね」
体育会系で少し気粗なカナ。テストはいつもギリギリらしい。
「そうよ。皆で食べれば楽しいじゃない」
「まぁそうかもな、」
海翔は勝てない気がした。
こうやって退くことを覚えた海翔は大人かな?海
翔は購買で買ったおにぎりを食べる。今日はシャケだ。
「毎日毎日飽きないわね」
「米は日本人の当たり前の主食だろ。飽きるわけないじゃんか」
「そう言えば英語の宿題終わった?」
「やってすら無いわよ」
「それはヤバイだろ」
必ずお昼は6人で食べているが必ず喋っているのは2人だけ。
男性人は気まずくて話せない。女性人は麗奈の気持ちをわかっているから話しに割り込まない。
だからこんな感じなのだ。
「ねぇ、レナちゅん。なにか歌ってよ」
そんな掟じみたことを破るかのようにカナは聞いた。
麗奈は驚いたように体をビクつかせる。
「でも伴奏ないし」
「大丈夫。なんとかなるでしょ」
相変わらずだがカナのむちゃぶり。
「歌うのか? ギターだけならいるられるぞ」
「ベースもはいるよ」
「ドラム無い。けど叩くものはあるぞ」
簡易に出来なければ軽音じゃない。
「よし、わかった。歌うよ」
教壇上に上がり歌い始める。麗奈はバラードなら音程が取れる。さぁ今日は完璧に。
「触れる♪髪の♪匂いが♪なんだか心苦しくて♪」
順調だ。麗奈の歌唱力はなかなかの物だ。その歌に海翔がハモる。
「会いたいよ♪この気持ちは♪あなたのために生まれたのよ♪どうして♪あなたを思い浮かべると♪胸が苦しいの♪」
大サビ。2人の歌声だけが教室を響かせる。
「どうして♪あなたを思い浮かべると♪涙が溢れるの♪」
終わった。クラス全員が聞き入っていた。カナが先人切って拍手を始めた。教室に拍手の雨が降ったのは言うまでもない。
海翔が麗奈のレベルに合わせて創った曲だ。麗奈の美しいオブラートのかかる声は人の心に響く。
海翔が始めて創った曲。
【私の心は雨】
歌っちゃいました!歌詞が少し…