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第二十三小節:秘めたる想い


 保健室、海翔が眠りついた後の1時限目の授業中。


「で、なんのようだ?」


 保健室住在の小村先生は机に向かったまま声を放った。


「気にしないで下さい。気になっただけですから。」


 保健室に入って早々に言われた言葉。


「だが、授業サボってこんなところに、あんなバカな奴の為に来るとは、風紀委員長として、風紀を乱してんじゃないか?」


 小村は痛いところを突く。しかし、薫は笑顔で、


「校則は破るものですから。」


 と言った。小村は小さく笑い、薫を見て、


「そんなんじゃ、委員長やってる意味ねぇじゃねぇか。」


 薫はゆっくりと海翔に近づいていく。


「大丈夫です。小村先生はちゃんとわかっていらっしゃる方ですから。」


「こりゃ勝てねぇな、」


 薫は海翔が寝ている近くにあった丸椅子に座る。


「お前はなんでそいつの為にそこまでするんだ?」


 机から目を離し、呆れた顔で薫を見る。


「そんなに頑張ってますか?」


「頑張ってるっつうか…、そいつの為に無理に嫌なキャラ作って、無理矢理嫌われようとして、」


 薫は俯く。小村から薫の目が見えないくらい。


「すまねぇ。無理には聞かねぇ。だが、1年時のお前は誰にでも優しかった。風紀委員としても優れていた。なぜ、今こんなやつの為に成績落としてまでキャラを続けるつもりだ?」


 薫は少し震えていた。手はスカートを強く掴んでいた。


「ホントに好きだったんですよ。小学生の頃から。でも大人しすぎたんです。綺麗すぎたんです。フラれるのが、傷付くのが怖かったんです。」


 涙がこぼれた。


「中学校は違いました。だから海翔君は私の事を覚えていませんでした。私も忘れようと頑張って来ましたが、結局忘れることが出来ない3年間を過ごしたんです。

 高校。ホントは諦められたんです。部活に救われたんです。やっと恋が長続きする、はずでした。今年、海翔の事を見てしまったんです。忘れていた想いが全てよみがえってきました。辛かったです。胸が苦しかった。寝れない夜が続きました。

 ある日、海翔君の隣に必ず彼女が居ることに気づいたんです。やっと諦められる。思っただけでした。忘れられなかった。

 メンバーに相談したら、1回だけ一緒に演奏して、それを最後にすればいい。そう言う事になって彼に接触したんです。

 始め、恥ずかしさあまり、それを押さえるために顔を見ないようにしていました。それが精一杯だったんです。

 1回演奏しました。忘れようとしました。でも最後だったんです。少しぐらい許されると思ってキスしました。

 後は、鈍感な海翔が麗奈から離れないように、あえて2人に強く当たることにしました。だけど、やっぱりムダな事だったのかな?」


 そして、沈黙が起きる。廊下では誰かが走り去っていく音がした。


「ムダじゃねぇよ。自分を信じろ。間違ってても当たりだと思えば当たりなんだよ。間違ってるかなんか気にしてたら先に進めねぇぞ。また、好きですになるんだ。だったら、もっと自分に自信持てよ。お前なら、出来るはずだ。」


 相変わらずダルそうな表情の小村。そんな表情を見て、


「先生の言うこと間違ってそうですね。」


 笑って答えた。


「いいんだよ。オレは当たりだと思えってんだからよ。」


 小村は舌打ちをし、また机に向かった。


「戻るんだったら言ってくれ。紙書くからよ。」


「はい…」


 そのあと薫はずっと海翔の事を見ていた。

海翔はぐっすり…

ホントに鈍感…

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