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第二十二小節:具合悪い


 朝、海翔は相変わらず何時もの場所で遅刻ギリギリの麗奈を待ちながらイライラしていた。


 何時もの電車に乗っていなかったのだ。もしかして寝坊かもしれない。


 海翔は携帯電話を胸ポケットから取りだし、学校に向かって歩きながら、麗奈に電話をする。


 呼び出し三回目で出てきた。


「もしもし…」


 眠そうな声。やっぱり寝ていたのだろう。海翔はそう確信した。


「今どこにいる?まだ家なのか?」


「なにいってんの?もう学校にいるわよ。」


 海翔は唖然とした。


「は!?いつのまに!?」


「私だってたまには早起きよ。」


 威張ったように携帯から聞こえる声を聞いて、海翔は怒鳴る。


「早起きしてんなら連絡ぐらい寄越せよ!待ってたんだぞ!」


「待っててなんて頼んでないわ。」


「てめぇ!」


 プツ。…プー、プー、プー…


 海翔は走り出す。遅刻ギリギリ。間に合わないかもしれない。携帯電話をしまうのも忘れて走る。





 キーンコーンカーンコーン


「海翔君。遅刻よ。」


 海翔は膝に両手をつき、呼吸を整えていた。


「裏切られたわね。」


 薫は笑いもせず、哀れに海翔を見ていた。


「まったく。まぁいいわ。選択させてあげる。反省文か、私と付き合うか、私に助けを求めるか。さぁ、どれ?」


 海翔は薫をギロッとにらみ、


「反省文」


 と一言だけ言った。


「わかったわ。じゃぁ、昼休みまでに原稿用紙十枚ね。」


 薫は原稿用紙の束を海翔に突き付けた。それを受けとり、教室へ走り出す。


「素直じゃないわね。相変わらず。嫌な気がするわ…」


 薫は快晴の空を見上げる。空には一筋の飛行機雲が出来上がっていた。


 海翔は教室に入り自席に座る。


 そしてすぐに突っ伏せる。


「どうした?」


 そこにすぐにカナが近付く。


「別に、」


 と言って立ち上がり、ちらりとシナと話している麗奈を見る。


「具合悪いから保健室行くわ。」


 片手を上げてゆっくりと教室から出ていった。


 カナはそれを静かに見ているだけだった。






 海翔は保健室の扉をバタンと開ける。


「具合悪いから寝かせろ。」


 と言ってベットに近付く。


「悪いが、授業をサボるためのベットはねぇぞ。」


 唯一の机に腕組みしながらにらめっこしていた。


「サボりじゃねぇよ。」


 違和感に机から入ってきたボウズに目を移した。


「ホントに具合悪そうだな。どうした?」


「別になんでもねぇよ。」


 海翔はそう言ってベットに座った。


「そうか。失恋か。」


 しみじみと言うと、


「んな訳ねぇだろ!」


 顔を赤くして怒鳴る海翔。小村はニヤリと片方の口角を上げ、


「そうか、そうか。ゆっくり寝てろ。」


「言われなくても寝るよ。」


 海翔は横になり目を閉じる。


「で、なんのようだ?」


 小村はまた机とにらめっこをしながら、そう呟いた。


「気にしないで下さい。気になっただけですから。」

海翔大丈夫なんでしょうか!?

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