第二十小節:ノートをめぐって
勉強はしっかりしよう!
「ノート見せてくれ!」
海翔はダイゴにパンと音を立てて手を合わせた。
「残念だけどないな。今日英語ないし。」
「だよな。」
溜め息をつく。
「ありがとう。」
視線が気になったので、麗奈をちらりと見る。
麗奈は海翔を目で追っていたが、こちらを見てきたので、何もないかのように海翔とは反対の方を向いた。
海翔はユウヤに同じことを聞く。
「英語のノート!あるわけないじゃん!」
「だよな。」
そしてまた溜め息をつく。
そして、カナを見る。そのまま目線をシナに変えた。
「シナさん!」
「あたしは無視か!あたしは無いって思ってんだろ!」
シナの所に行こうとしたら、カナが胸ぐらを掴み怒鳴り散らした。
「落ち着け!」
海翔はそれを振りほどき、服装を整える。
「だって、実際今日英語ないんだから持ってないだろ。」
「まぁそうだけど、普通ダメ元で片っ端から聞くだろ。」
「お前も見せて貰う側だろ!何生意気言ってんだ!」
「確かにそうだけど!あたしだってちゃんとやってるし!」
「嘘つけ!英語の時間だけは毎時間寝てるくせに!」
「寝てんじゃ無いの!脳に休憩を与えてるの!」
「あっそうかい!体力バカが脳の休憩をねぇ、」
「体力バカって!あんただって音楽バカじゃない!」
「お前ほどバカじゃないはバカ!」
「バカって連呼する奴がバカなのよ!バカ!」
「バカは2人とも!」
分厚い辞書が2人の頭に振り落とされた。シナの手によって。
「2人うるさい。」
反論をしようとしていた2人はその一言でシナの剣幕に潰された。
「ケンカするなら他所でやって。皆の気分を悪くするわ。あと海翔君、これノート。カナも勉強教えて上げるからイライラしない。あと、バカって言う前にやることやったら。」
シナは海翔にノートを押し付け、カナの眉間を指で押して、去り際に一言、言った。
「はい、」
2人とも静かに答える事しか出来なかった。
周りの人達は拍手をし始めた。そのなか、シナは自席に座り、殴った辞書を開き読み始めた。
「ごめんな。」
海翔はカナに言った。そのまま海翔も自席に戻り座る。
麗奈は全てを見届けて、
「流れで私まできて欲しかったな。」
と感嘆の声漏らした。
そんな忙しいテスト1週間前だった。