第二小節:好きなもの
なかなかワガママなおひめさまですよ。まったく。親気分な自分でした。
「ねぇ、海翔、」
今4人は練習がてら曲を一曲やろうと言うことになった。
海翔はギターを、ユウヤはベースをチューニングしている最中だった。
すでに呼び捨てにされている海翔は嫌そうにそちらに顔を向ける。
「あたしさぁ、別の曲がいい」
はぁ、なにを今さら? なんでもいいからみんなの技量を計るためにもう1曲やりたいと言ったのはやつだ。
「こんな子供っぽいのあたしはやだよ」
とスコアを捨てる。
「今はそれしかない。大人しく言うことを聞け」
「いやよ。なんであたしがこんな曲を歌わなきゃいけないの?」
とことんムカつくやろうだ。そこにまぁまぁと割り込んできたダイゴ。
「曲は先生に借りたやつだからね、麗奈ちゃん」
「いやなものはいや」
「じゃぁ今日のところはお開きと言うことで」
「それはいや」
海翔は呟く。もう我慢ならねぇ、
「じゃ自分で探せよ」
「いやよ。めんどくさい」
いっこうに前に進まない状況下。
「でもしょうがないから、はいこれ」
突然進んだ。突きだした本の中身はアニソン呼ばれる物がぎっしりと埋まっていた。
「それの73ページ目をやろう」
と言うとマイクのところに戻っていった。
73……。とても難しいものだった。
しかもすでに三人分コピー済み。
最初っからこれをやるつもりだったらしかった。
「始めるよ」
ダイゴが言い、スティックを叩き合わせ音を鳴らし、それと同時に掛け声を打つ。
「1…2…1・2・3」
その掛け声を聴いてアーフタクトで入る海翔に続きユウヤも的確にリズムを刻む。
初見だがなかなかの仕上がりだ。
そしてヴーカルの出番だ。美しく響く。少しだけ楽しいと感じた4人。
しかし、ここからがひどい物だった。ヴーカルの高音域部分。いわゆるサビだが麗奈は全ての音を外した。
逆に凄い。
悪い事は連鎖を生む。それに驚いた海翔が音を間違え、ユウヤはどこをやっているのかわからなくなっていた。ダイゴもテンポ感がなくなりもうすでに曲として成り立ってはいなかった。
一番が終わったところで海翔が強制的に終わらせた。
「歌えないわよこんな曲!」
「歌えないなら選ぶな!」
「海翔たちがやる曲ないって言うからしょうがなく、」
「お前がやだやだばっか言ってたから決まらないんだろうが!」
「だって……、だって……、うぇ〜ん」
泣いてしまった。その場に座り込んで顔を手でふさいでしまった。
「すまん言い過ぎ。」
海翔は反省する。しゃがんでなんとか麗奈の機嫌を治すように試みる。しかし泣いたままだった。
「パフェおごるから」
「ホントに!」
目の色を光らせて海翔を見た。
「あ、あぁ」
じゃぁ今すぐ行きましょう。と言って荷物をまとめ始めた。
しかし約束は約束だ。とにかく近くのレストランに向かう。
「これ!」
と指差して選んだ物はこの店で一番高いイチゴパフェだった。
「少しは遠慮しろよ」
「これでもしてる方よ。全部食べたいんだから」
へいへい、と感嘆を落とす。
おひめさまは甘い物に弱い。
海翔はひそかにメモをした。
まだまだおひめさまは暴走する!