第十八小節:おかしな海翔
常に2人はおかしいですけど…
月曜日の朝。海翔はいつものように駅の前の木のところで腕を組んで待っていた。
「おはよう!」
ものすごく元気な声の方を向いて睨み付ける。
「な、なによ。」
麗奈は一歩引いて固まる。
「なによじゃない!いつもいつも遅刻ギリギリに来やがって!」
ものすごい喧騒の表情怒鳴りつける。麗奈はまた一歩引く。
「たく、早く来いよな!」
最後にそう言い放つとすぐさま手を取り、学校へ猛ダッシュする。
麗奈は呆気にとられ、しかし体は海翔に着いていく。海翔の後頭部を見ながらなにか悪いことをしたのかと考える。
「セーフ!」
校門を入った瞬間チャイムが鳴り響く。
いつものようにスラッとした足が2人の前に立ちふさがる。
「相変わらずギリギリね。もっと早めにこれないの?」
長い真っ黒の髪を掻き分け、嫌みっぽく言う薫。
「悪かったですね、先輩。先を急ぎますんで、」
海翔は薫を押しどけて教室に向かおうとした。
「ちょっと待ちなさい、海翔君。」
意味深に呼び止めた。
「これ、読んでくれないかな?」
薫はポケットから四つ折りにされた白い紙を海翔に差し出す。
それを一瞥し、薫の顔を見て、
「いりません。オレ、そういう趣味はないんで。」
と言ってすぐさま麗奈を引いて校舎に入っていった。
「受け取らないのは知ってるよ。」
薫は校舎を見て、こらえるようにクスクスと笑った。
それを気に、気付かれないと思ってゆっくりとバレないように校舎に入ろうとする生徒。
「そこのあんた、反省文10枚、今日中にね。」
その生徒はビックリしたように飛び上がり、裏返った声で「はい」と一言叫んだ。
2時限目の数学が終わり一息吐く麗奈は、朝のHRからずっと寝ている海翔を見つめる。
やはりなにもしてない。もしかして一昨日の炒飯が当たったのか。
そんなわけわからない事まで頭では回る。おかげでさっきの数学がまったくわからなかった。後でいちゃもんつけてやろう。
しかし、自分がなにか悪いことをしたからあんなことになったんじゃないか。
と1人でもがき、周りから見たらおかしな子であった。
「ちょっと、レナちゅん?平気?」
心配をしたカナが麗奈の近くによってきて頭を鷲掴みする。
「大丈夫だけど、」
いつもの子供っぽさはなく、しんみりと呟き海翔を見つめ続ける。
「気にすんなって。どうせ昨日とか深夜まで起きてたとか、そんなところだよ。」
カナは呆れた感じに言う。
麗奈の目線がカナに移り、
「だったら尚更、私が悪いじゃん。」
カナは意味がよくわからなかった。聞き返そうとした時に、
キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
チャイムがなる。
「なっちった。あんまり気にするなよ。」
席に戻りながら麗奈に言う。
「気にしたくないんだけどさ、」
自分に言い、また海翔に目を移す。
「気になっちゃうんだよね。」
先生が入ってきて、3時限目が始まった。
一応真面目なんですね、2人。