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第十五小節:麗奈の家

 なんやかんやで土曜日。海翔は携帯を眺めながらある場所へ向かう。


「ここか…」


 海翔が着いたのは普通の二階建て一軒家。結構広そうだが…。インターフォンの隣には「美島」と書いてある表札が掛かっていた。

 海翔はインターフォンを押す。


 ピンポン


「はい?どなたでしょう?」


「高尾海翔です。麗奈さんいらっしゃいますか?」


「なんだ海翔か…」


「なんだ麗奈か…」


 お互いが残念な声を漏らす。


「早く上がりなさいよ!」


 鍵が開く音がした。海翔は門を開きドアに手をかけて開ける。


 とくに普通の家だった。海翔は靴を脱ぎ上がる。


「お邪魔しまーす。」


 腑抜けた声でのそのそと入っていく海翔。


「こっち!」


 襖から手が出てきて海翔を招く。


「入るぞ。」


 襖を開ける。


「いらっしゃいませ、海翔。」


 真っ赤なカチューシャ、ピンクのTシャツ。さらにかなり短いスカートに膝上まである真っ黒の靴下。

 かなりエロチックな服を着ている麗奈に海翔はドキンとする。


「よ、よぅ。」


 畳の部屋に入る海翔。そんな海翔の顔は赤らんでいる。


「そこら辺座ってて。お茶持ってくるから。」


 畳の部屋の真ん中に四角いちゃぶ台が置いてありその真ん中には一輪の真っ赤な花がいけてあった。


 麗奈はこの部屋から出ていく。海翔は適当にちゃぶ台の回りにあぐらをかいて座る。

 なんとなく見回し至って普通の家だと改めて思う。

 縁側は無く、掛軸も無いただの客室的な部屋なのだろう。


「お待たせ。」


 足で襖を開けて入る麗奈。手にはお茶の入ったコップを2つ持っていた。

 それをちゃぶ台に置く。


「よし!始めるわよ!」


「あぁ、まずは歌え。」


 麗奈は立ち上がる。


「その前にトイレ!」


 そしてこの部屋から出ていく。海翔は深い溜め息をつく。


「とりあえず、これでもセットしとくか。」


 おっきなバックを開ける。中からキーボードが出てきた。他にヘッドホンとコードが大量に。コンセントは入れないでできる範囲でセットする。


 やっと戻ってきた麗奈。この部屋に入って驚いた。


「そんなもん持ってきてたの?!」


「あぁ、この方が早いから。とりあえず歌え。」


「わかったわよ。」


 目をつむる麗奈。息を調えてるのだろう。海翔は持っている録音機のスイッチを入れた。


「あぁ、なんできづかないの。鈍感な貴方に寄せた思いに苦悩するのは結局私。

 あぁ、いつも貴方の隣に、私を置いて欲しいだけ。

 幾過ぎた時に、霞んだ恋の色

 いまだけはここで、私を抱いて欲しいの。


 行かないで、行かないで、私を置いていかないで。

 近くにいて、近くにいて、離したくないのよ。

 ずっと私を抱き締めて。


 あぁ、秋の風が寒く、なってきましたね、そちらはどうですか。やっと諦めれたのよ私。

 あぁ、いつもの道を1人で歩いて、貴方の事を思います。

 もう覚えてない、貴方の恋の色。

 またあの時のように抱き締めて欲しいの。


 会いたいよ、会いたいよ、今すぐにでもいきたいよ。

 近くにいて、近くにいて、寂しいのよ。

 貴方がいない私の隣。」



 海翔は録音機を止めた。


「これで十分でしょ。」


 照れてそっぽを向く麗奈。あまりに綺麗な歌声に聞き入る海翔は心ここにあらずな状態であった。


「な、なによ、見詰めちゃって。は、恥ずかしいじゃない。」


 海翔の目線が気になる麗奈。


「ごめん、やっぱお前歌上手いよ。」


「おだてたってなにもでないの知ってるでしょ。」


 いつもの威勢の良さはどこへやら、ぶつくさと言葉を棄てた。


「よし!」


 と海翔は鉛筆と五線譜をカバンから取り出し音譜を書き始めた。その様子を不思議そうに眺める麗奈。


「なんで一回聴いただけで音も長さも解るのよ?」


 録音したにも関わらず一回も再生しない。それで、黒玉や白玉、さらにはドレミファソまでわかって書いている。


「言ってなかったか?」


「なにをよ。」


 麗奈はぶすっと言う。海翔は五線譜から目を離し麗奈に向ける。


「オレ、絶対音感持ってんだよ。」


 絶対音感とは聴いただけで【ドレミファソラシ】の内、どれかを判断出来る能力である。簡単にはそう言うこと。


「聞いてないわよ!そんな力持ってたのあんた!」


「あぁ、」


 海翔はまた五線譜に目を向けて書き出した。


「邪魔するなよ。忘れちまうから。」


「うん。」


 沈黙の時間がやって来た。麗奈はあまりに暇だったので英語の宿題をやり始めた。


……………


 1時間後。お昼の時間になった。


「終わった!」


「ホントに!?」


「まぁまだ適当だけどな。これからあってるかあれで調べたいからさ、電気借りるよ。」


 やっと一番気になっていた物が出てきた。とテンションが上がる麗奈。


「いいわよ。」


 ぐぅ〜


 そこで情けない音がする。


「その前にはらへったから飯にしようぜ。」


「じゃぁ、今から作るから待ってて。」


「まじかよ!キツいわ、」


「すぐ出来るわよ!待ってなさいよ。」


 麗奈はキッチンへと向かった。


「今日は、チャーハンにしよう。」


 おっきめのフライパンを取り出して火をつける。


「さーて、頑張るぞ。」

女の子の家に男の子が…

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