第百四十八小節:デパート
駅前の、デパートに来た。
休みなので、少し人が多いデパートを適当に歩いていく。
「なんか配置変わってるね」
「そうだな」
「あ、これかわいい!」
「そうか?」
「かわいいじゃん! このマグロ」
「理解できない」
「海翔はまだまだ子どもだな」
「いや、理解できないのはオレだけじゃないと思うぞ」
とまぁ、よくわからないが、適当に回りながら、やけにテンションが高い葵は楽しんでいた。
「海翔、アイス」
「あ? あそこでいいか?」
「うん!」
海翔は葵の手を引きながら、アイス専門店に並ぶ。
「オレ、レモンとチョコのダブル」
「私は、ストロベリーとマグロ」
ねぇよと突っ込みたい海翔の目に、マグロ味と書いてあるアイスが写ってしまった。
生々しい赤色をしているサンプルに呆気にとられていた。
コーンに乗った、丸い2つのアイスを受けとり、イスに座って、肩を寄せ合いながら、付属品のスプーンでゆっくりと食べる。
「なぁ、マグロ、1口くれないか?」
「ん? いいよ」
葵は生々しい赤色を差し出してきた。
海翔は恐る恐るそれをスプーンで取り、恐る恐る口に運び、恐る恐る舌に乗せる。
「……」
「美味しいでしょ?」
「ドクターペッパー並みに」
そういうことだそうだ。
アイスを食べ終わると、
「ねぇ、プリクラがあるよ」
「そうだな」
「ねぇねぇ、プリクラがあるよ」
「うん。あるぞ」
「撮りたいと思わない?」
「思わない」
「よし、じゃぁ入ろー!」
「は!?」
ムリヤリ中に入れられる海翔。
葵は素早く4枚のコインを入れ、なんか画面を押す。
「撮るよ!」
カシャッ、カシャッ。
数枚撮る。
ボーナス、という意味のわからない機能が発生した。
「海翔こっち向いて」
「は?」
海翔は葵の方を向いた。
刹那、葵は目を閉じ、海翔の唇に自分の唇を合わせた。
カシャッ。
「へへ。チューしちゃった」
海翔は唖然としていた。
「よし、落書きラクガキ」
撮影所を出て、その箱の角の凹みに入る。
「ラクガキ?」
「やったことないの? ちょっと見てて」
葵は軽くラクガキをしていく。
「こんな感じ。てか海翔かわいい」
「うるせぇ」
海翔もラクガキを始めた。
が、何を書いたらいいかわからない。
適当にツールを見ていく。
その中から適当なスタンプを選んで並べていく。
なんやかんやで時間がきてしまった。
プリクラが出てくるのを待つ2人。
「次、CD屋行こ」
「あぁ」
出てきたプリクラは、1つを除いてなかなかのものだった。
1つだけ、キスをしてる写真。
海翔はそれを見てたら恥ずかしくなった。
プリクラをハサミで半分にし、お互いが貰う。
次、CD屋で適当に眺めていた。
ここはなぜか葵のCDがメインを飾っていて、ポスター付きとか書いてある。
「なんか、さすがに恥ずかしいね」
急に小声になった葵。
「まぁ、そんなもんだろ。他行くか?」
「うん。欲しいのもなかったし」
2人はデパートを出ることにした。
マグロアイスっていったい……