第百四十七小節:デート
日曜日。
葵は珍しく1日休みで、
「だからデートしよ」
と言うことになった海翔。
海翔は日曜日なのに朝早く起きて、赤い英語の文字が書いてある白いTシャツの上に、赤いチェック柄のポロシャツを着て、袖を2、3回捲る。黒いジーパンを履き、黒い蝶のネックレスを付けて、指には白銀の指輪。
いつもあまり直さない寝癖を、あるのに使わないアイロンでまっすぐにする。
「オレ、なんでおしゃれしてんだ?」
鏡を見ながら呟く。
おしゃれは終わり、下へご飯を食べに行く。
リビングに着くと、
「あんた、どうしたの」
母が驚いて聞いてきた。
「別にいいだろ。腹減ったからメシ」
母は海翔のご飯を簡単に作り、並べた。
「サンキュー」
「それよりどうしたの? 日曜日なのに」
海翔はご飯とおかずを交互に食べる。
「だからなんでもいいだろ」
「そうだけどさぁ。あの海翔が」
ご飯を食べ終わると、立ち上がり、ごち、と言ってリビングから出ていき、また自分の部屋に戻る。
そして、外出用のショルダーバッグを頭を通し肩にかけて、家から出る。
家から出ると、そこにはもう葵が立っていた。
ちょっとだけ染めているその髪に葵リボンを付け、変装なのか秘書っぽいピンクフレームの眼鏡を付けていた。
「遅い」
よくわからないが怒っていた。
「葵が早いんだよ。まだ30分前だぜ」
「私はもっと早く海翔に会いたかったの」
このまま話しても良知が明かないと踏んだ海翔は、葵に近づいていき、
「行くぞ」
ゆっくり、歩き始める。
「やっぱり、まず駅前のあそこに行こ」
「あぁ、てかあそこでいいのか?」
「うん。全然いけなかったから」
2人はゆっくりと歩いている。
多少人目があるが、気づかれていないようだった。
「ねぇ、髪形代えて見たんだ」
「へぇ」
海翔は正直わからなかった。
「ホント、私服久しぶり」
「そうなのか?」
「うん」
会話が終わる。
「ねぇ。もうちょいさぁ、かわいいね、とか、似合ってるよ、とか、好きだ、とかないの?」
「ん? ない」
葵は怒って、おもいっきりヒールで海翔の足の指を踏んだ。
「いってぇな!」
「海翔のばか!」
海翔をほっといてズカズカと歩いていった。
「ちょ、ちょっと、待てよ!」
海翔は走って追う。
「悪かったよ」
葵は立ち止まって振り返り、海翔の眉間に右手の人差し指をつきだした。
「じゃぁ、手、繋いで」
海翔はため息を吐く。
葵は指を眉間をつつく。
「早く」
「わぁたよ」
海翔は、目の前にある手をとり、指を絡み合わせる、恋人繋ぎをする。
そのあと、葵は鼻歌(自分の持ち曲だが)を歌いながら、愉快そうに歩いていった。
海翔はやっぱり疎いですね。
よくモテますよ。




