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第百四十一小節:ピンク




朝、目を覚ます海翔。


見慣れない風景。


重たい体を起こし、トイレを探しにその部屋を出る。


廊下に出ると何やら温かい雰囲気を醸し出す扉に、引き寄せられるように近づいていった。


「あ、おはよう」


もう、机の上に並べられているご飯たち。


「食べよ」


「トイレどこだ」


葵はすぐに指差し、そっちに向かう。


丁度洗面所もあり顔を洗ってからさっきの部屋に向かった。


ご飯たちが並べられている前に座る。


「いただきます」


葵は両手を合わせてそう言う。海翔は両手を合わせるだけだが。


「なぁなんでここにいるんだ?」


海翔はご飯を食べながらそう聞いた。


「さぁ? 私に告白しに来たんじゃない」


「したっけ?」


「うん」


そうか、告白して葵と付き合うことになったんだ。海翔は軽く昨晩の記憶を蘇らせた。


「美味しい?」


「あぁ、いつもより」


葵は喜んだ顔を見せた。


ご飯を食べ終わり、葵は洗濯機を回しに向かった。


母が帰って来るらしい。だから回すだけでいいらしい。


そのあとすぐに2人は学校に向かう。手を繋ぎながら。


最寄り駅で降り、いつものようにゆっくりと歩いていく。


木の下に着いた。


海翔はその木を軽く眺め、葵の手を引いて歩き始める。


「いいの?」


「あぁ」


走らない学校への道。始めてではないかと思うほどだった。


学校には余裕に着き、余裕に教室向かい、余裕に着席する。


楽だった。楽すぎるくらいに楽だった。


これが普通なのだと思う海翔。普通なのだ。普通なのだ。


「――海翔ってば!」


「おぉ、」


海翔は振り返り、眉間を狭めて怒ってる葵を見る。


「麗奈ちゃんこないけど大丈夫なの?」


「大丈夫なんじゃないか」と適当に答えたが、やはり心配なようで廊下を明後日を見るような感じで見る。


「本当によかったの?」


「別にいいんだよ。彼女じゃないんだから。彼女じゃ」


口ごもる海翔。


麗奈が来ないまま、1時限目が始まってしまった。


「ねぇ、大丈夫なの」


「オレに聞くな」


その時、後ろのドアが開く音がし、海翔は思わず振り返った。


驚愕。


スタスタと自分の席に向かう麗奈。


自席に座る。


前にいる先生は白いチョークを落とした。


「お前、」


「気安くしゃべりかけないで愚民」


麗奈の顔は、美しく化けていて、長めの髪は、綺麗に巻いてあり、それでピンクに染められていた。


「私はおひめさまなの。なにしても許されるの」


その言葉は、ひどく冷たく、誰も寄せ付けようとしない言い方だった。


「わかった? 先生、早く授業進めて下さい!」


先生は慌てたように、チョークを拾い、震える手で黒板に続きを書き始めた。


机の上に足を乗せる麗奈。


チュッパチャップスをバックから取り出し、袋をはがしてなめ始める。


麗奈は右のバカのアホな面を横目で見て、ニヤリと悪魔っぽく笑って見せた。


「あぁ、楽しい」


チュッパチャップスの棒を右から左に動かす。

麗奈がグレた!!!

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