第百三十七小節:アメ
アメよりチョコの方が好きです!
麗奈は教室に戻ろうとした。
階段をゆっくり上がりながら、階段の段数を数えていた。
「おい、少女、諦めんなよ」
麗奈は立ち止まり顔を上げて、鼻声のような変な声が聞こえた方を見回した。
しかし、誰もいない。
いや、無数にいるが声の主だろう人はいなかった。
「だれ」
返事は返ってこない。
「だれよ、からかってんの」
それでも返事は返ってこない。
麗奈は水落辺りを押さえた。
「あっそぉ、バカにしたいならすればいいじゃん。どうせ負け犬なのはわかってるから」
麗奈は歩みを進めた。
そして、行きたくもない、教室に向かうのでした。
中には、相変わらずイチャイチャしている海翔と葵。
その表現には誤報があるかな。
イチャイチャしてるのは葵だけで、階段は無関心丸出しだった。
麗奈はそんな2人を無視し、自席に向かう。
まだ、白い目が向けられているようだった。
「中学に戻ったみたい」
麗奈は呟いた。
自席に着き、バックの中からピンクの筆箱を取り出す。
「麗奈、お菓子持ってない?」
「は?」
麗奈は驚いて右を向いた。
海翔が突っ伏したままそう言ったのだ。
「だから菓子」
「アメならあるけど」
「あ、それくれ」
海翔は左腕を麗奈の方に伸ばした。
麗奈は少しキョトンとして、すぐにカバンの中からアメを1つ取り出し、その開かれている手に入れる。
「センキュー」
手は戻っていき、見えないところでもぞもぞしていた。
「ごみ捨てといて」
また手が戻ってきたと思ったら、包み紙が飛んできた。
「自分で捨てなさいよ」
「いいだろ。そんぐらい」
麗奈は舌打ちをした。
教室後方にあるごみ箱を見ると、葵の顔が目に映った。
「なに?」
「私にもくれない」
笑顔で伸ばされる左腕。
麗奈は再びバックの中からアメを1つ取り出し、その手に落とす。
「ありがとう。ついでにごみ捨てとくよ」
「いいの?」
「うん」
麗奈はごみを葵に渡す。
「私の彼氏のごみなんだから」
麗奈の心臓が一度だけ強く鼓動を打った。
葵はアメを口にいれ、立ち上がってごみ箱まで行き、捨てて戻ってきた。
そこでチャイムが鳴る。
「どうしたの麗奈さん。授業始まっちゃうよ」
麗奈はなにも見てなかった、なにも聞いていなかった、なにも考えていなかった。
そう信じたい気持ちで一杯だった。
葵が爆弾発言を!