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第百三十五小節:頑張れば

麗奈大丈夫ですかね。

心配です。




今日全ての授業が終わった。


放課後になり、各々が帰り始める。


「麗奈、帰るぞ」


海翔が棒読みのように呟く。


「おい?」


海翔が左を向いた時、そこの席は空席であった。


海翔は舌打ちをした。


「ねぇ、海翔。さっさと帰ろ」


「あ、あぁ」


海翔は葵と2人だけで帰り始めた。


正門の前には、人がたむろしていた。


「どうしたんだ?」


「わかんないけど、嫌な予感はするね」


「勘か?」


「うん。女の勘」


正門を見て、2人は振り返り、裏門に向かう。


がしかし、こちらにも人がたむろしている。


「あらぁ、袋のネズミ?」


「籠の中の鳥」


「意味一緒でしょ」


「まぁな」


「で、どうしよう」


「先生に力貸して貰うか?」


「今日職員会議だから邪魔するなって言ってたよ」


海翔はため息を吐いて辺りを見回す。


「正面突破だな。あのトンネル抜ければ車がある。それに乗り込む」


「え? 車?」


海翔は葵に携帯を見せる。


それは瀬川からのメールで、同じ内容が書いてあった。


「じゃぁ、行くぞ」


海翔は葵の手を取り、正門に向かって行った。












麗奈は部室にいた。今日は練習日ではないのに。


ギターを弾きながら、ずっと同じ曲を歌っていた。


「失礼します」


突然の声に麗奈は驚いて、歌と手を止め、入口を見た。


「由梨ちゃん!?」


「麗奈先輩だけですか?


 まぁんだ」


詰まらなそうに呟く由梨。


麗奈は小さく、悪かったわね、と呟いた。


「海翔先輩知ってます?」


「帰ったんじゃない」


「そうなんですか。


 じゃぁ、麗奈先輩。海翔先輩とあの胡桃ちゃんの熱愛報道知ってます?」


麗奈は水落を押さえた。


「あ、当たり前じゃない」


「ですよねぇ。海翔先輩も隅に置けないですよね。


 あ、練習していって良いですか?」


「いいわよ」


由梨はづかづかと部室内に入り、置いてあるギターを手に取る。


「先輩はなにやってたんですか?」


「ソロの練習よ」


「先輩ソロやるんですか! カッコイイですね」


別にそんなんじゃない。小さく呟いた。


「聞かせて下さい!」


少し考えた。


「いいわよ。下手だけど笑わないでよ」


麗奈はギターを弾き始めた。


静かな曲調に、耳を傾ける由梨。


切なく、時に強く、儚く。


曲が終わっている時には、由梨の左頬に一筋の涙が流れていた。


「だ、大丈夫?」


「先輩、スゴく上手ですね」


由梨はYシャツの袖で涙を拭う。


「私も頑張れば、先輩みたいになれますかね?」


唐突な質問に、眉毛が上がる。


目を左に寄せ、ドラムを見ながら、


「なれるよ。頑張れば」


意味深にそう言う。


その後、由梨は黙々とギターの練習をしていった。

由梨、KY……?

それともわざと?



今思ったんですけど、KYって死語?

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