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第百三十一小節:違うよ




放課後、麗奈は結局授業に戻って来なかった。


海翔と葵は、またコンサートの練習のために急いで帰って行った。


カナはそんな海翔に、保健室に寄ってかない、と聞けなかった。


1人、自分のカバンと麗奈のカバンを持って保健室へ。


中に入ると、相変わらずの薬品臭に鼻を曲げる。


そこには、ひげ面の先生はいなかった。


麗奈が寝ていたベットに寄ると、麗奈がスヤスヤと寝ていた。


カナは近くにあったイスに座り、カバンを2つとも床に降ろす。


なにも出来なかった。


カナは膝の上にある手を強く握った。


またなにか1人で悩んでいるに決まっている。


なんでいつも溜め込んでいるのだろうか。


「話した方が楽なのにって思ってるでしょ。」


急な言葉にカナは驚いた。


寝ていたと思っていた麗奈は実は起きていたようだ。


「カバン、ありがとう。」


「このくらい、いいよ。」


少しだけ沈黙が起き、外の野球部の声がよく聞こえた。


「あたしは、話してくれた方が良いかな。」


「そう。」


麗奈は左手を前に出した。


「もし、自分自信が、」


麗奈は次の言葉を放つのに躊躇した。


しかし、しっかり咀嚼し、


「不幸の原因だと思ったらどうする?」


カナはその突きつけられる闇に戸惑いを隠せなかった。


「だ、大丈夫だよ。そんなことないから、」


「私はそんなこと聞きたいんじゃない。」


急に強い風が窓を鳴らした。


「私が聞きたいのは、居座るか、みんなを思って逃げるか。」


「あたしは居座って欲しいけど、」


「だから、自分が!」


これ以上濁すのはムリだと思った。


「あたしだったら、逃げ出すと思う。だって、もし好きな人に、危害が加わったらやだし。」


「じゃぁ、逃げ出しました。


そのあと、ニート生活始めました。


あるゲームにね、ニートが自分の創造の世界で自由気ままに遊んでた。でも、何を思ったのか、マンションの上の方から飛び降りて死んじゃうのがあるの。


そうなると思わない?」


カナはコクりと頷く。


「死ぬ勇気もない自分、自宅にいると、いつあのゲーム通りになるかわからない。


どうする?」


もう詰まった。


どこかに行けば、誰かに迷惑がかかる。自宅にいれば、鬱になる。


麗奈はそう言いたいようだ。


「あたしだったら、ムリして逃げ出した場所に戻る…かな。」


「じゃぁ、戻りました、やっぱり、迷惑がかかります。そんな自分が嫌になります。」


「それでも、あたしはレナちゅんにいて欲しい。」


「だから、」


「違うよ!でも、それで良いじゃん!」


「よくないよ。私はまだわからないよ。」


「わからなくても良いじゃん!わからなくなったらあたしが助けるから!」


「助ける?」


「うん。」


会話が止まった。カナのエンジンがエンストしたようだ。


「どうやって?」


「どうやってやるんだろうね。」


カナはケラケラ笑い始めた。


「なんだよそれ。」


そんなカナを見ていたら、麗奈も笑ってしまった。


「困った事や悩みごとは言い合うのが友だちでしょ。」


「友だちだったっけ。」


「レナちゅんひっどーい!」


窓の外まで聞こえるその笑い声は、すぐそこでタバコを吸いながら盗み聞きしている小村を安心させた。

いきなりどうしたんでしょう?


なにか溜まってるのでしょうか?

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