第百二十九小節:変化
ある日の昼休み、カナは海翔たちとご飯を食べるために席を移動した。
「この席借りるね。」
麗奈の後ろ、葵の左隣に座る。
それで席をくっつけようとするが、麗奈が近づいてこない。
「レナちゅん?」
声をかけるカナ。
しかし反応はない。
「レナちゅーん?」
カナは寄って行って肩を揺すった。
「先食べてて。食欲ないから。」
「大丈夫?」
「平気平気。」
麗奈は振り替えって、カナに笑顔を見せた。
「そ、そう。じゃ、じゃぁ食べてるね。」
麗奈は机に突っ伏した。
カナはそれを心配そうに見ながら、くっつけた机に戻った。
「あいつどうした?」
「あたしが知りたいよ。」
カナはため息を吐いた。
カナが目の前の葵に目をやると、なにか勝ち誇った顔をして麗奈を見て、自分のお弁当箱をゆっくりと開けた。
そして、カナを見て嫌味ったらしく笑った。
カナはそれが鼻についた。
「海翔!昨日おばあちゃんの所から野菜ちゃんが届いたから、野菜炒め一杯作ったの。食べて。」
「おう。」
2人のやり取りを見ているカナは、どこか居心地が悪かった。
ため息を吐き、頬杖をつきながら、代わり映えのないお弁当箱の中身を摘まむ。
カナの後ろ側でイスが引かれる音がした。
カナは思わず振り返る。
「レナちゅん、どうしたの?」
「保健室、」
麗奈が腹部を押さえながら、苦しそうに立っていた。
「連れてくよ。」
「大丈夫、」
今にも倒れそうに歩いている麗奈。
カナはつい、麗奈の手を取ってしまった。
「大丈夫だって、」
麗奈はカナを突き飛ばす。
カナはそのまま地面に尻から落ちる。
麗奈もその影響で近くの壁に張り付く。
「大丈夫だから、」
そのまま壁伝いに廊下に出た。
「どうしたんだ。」
「あ、あたしが知りたいよ、」
カナは立ち上がり、お尻を叩いた。
「あたし、着くまで見守ってくる。」
「あ、あぁ。」
カナは走って廊下を出ていった。
海翔はそれを見守って買い弁のおにぎりを一口食べる。
「麗奈ちゃんどうしたのかな?心配だね。
ねぇ、野菜炒めどう?」
「ごめん、オレも見てくるわ。」
はやくもおにぎりを口の中に放り込み、すぐに立ち上がってスタスタと行ってしまった。
「もぅ。少しは私も見てよ。」
葵はお弁当箱を閉め、バッグの中にしまい、海翔を追いかけていった。
麗奈どうしたんでしょう…