第百二十五小節:新入生歓迎会
はい始まりました二年目!
もう始まってる?
何を言っているんですか。
二年目はこの日からですよ!
4月2日、入学式。
この日に海翔たちは練習場所を借りて、明日の新入生歓迎会で演奏する曲を練習した。
その翌日。新入生歓迎会。
全ての部活が部員確保のために一生懸命になってアピールする。
バスケットボール部ならば、ダンクシュートを見せたり、軽音楽部なら演奏したり。
【ペインツ】は体育館の舞台上に、いつもの立ち位置につく。
「落ち着けよ。」
「いつも通りやればいいんでしょ。」
麗奈はまっすぐ前、新入生約300人の方を向く。
「軽音楽部です!」
エコーのかかった音が響く。
「1曲演奏するから、ちゃんと聞いてるんだぞ!」
麗奈はウインクを放つ。
その事などお構い無く、海翔はリズムを刻み始める。
今までは、麗奈の力にあわせてまだ取りやすいリズムの曲ばかりを選んでいたが、今回は早口な感じのリズムの曲を選んだ。
ちょっと間に合わなかったので今日ばかりはギターを持っていない麗奈。
海翔の目に入る麗奈の顔はまだ少しだけ緊張をしているようだった。
海翔が最初の4小節を1人リズムだけ弾いていた。
次の小節になるとダイゴがビートを刻み、ユウヤは難しいパッセージを一生懸命になって弾いている。
そして、麗奈の出番になる。
「風追いかけて嵐のなか
私の校庭グチャグチャにしながら
叫ばせた口から抜ける轟音の雷
失った輝き消え失せる高音の響き」
海翔はサビまでの間奏のリズムを奏でながら、麗奈と同じぐらい前に出た。
サビに入るとギターが唸りを上げ、体育館を震わせた。
それに驚いた麗奈。
しかし、なんだか嬉しくなって、笑顔を見せた。
「目の前にある
私の白い羽根
羽ばたかせてみた
飛び上がるんだ
雲の上のまだ知らない世界の輝きを見るために」
そのまま終わりを向かえる。
拍手には慣れているのだが、なんだかパラパラな感じであった。
【ペインツ】はせっせと片付け、部室に向かった。
後の事は先輩たちがやってくれるそうなので、部室で待機しているようにと、新部長のお言葉だった。
「なんか微妙だったわね。」
麗奈が片付けている3人をそっちのけで、イスに座る。
「まぁ、趣味が違う奴とか、嫌われたくない奴とかいるからな。」
「ふぅーん。」
廊下の方がうるさくて、麗奈は少しだけ開いている扉を見た。
「海翔先輩!」
全員が急に開いた扉を見た。
「えーっと…?」
「来てくれたのか。
由梨ちゃんだっけ?」
「はい!嬉しいです。覚えてて貰って。」
満面の笑みだった。
「後ろの子たちは?」
「私の友だちです!
えーっと、この子がドラムやってて、この子が未経験、で、この子がギター。」
海翔は驚いた。
意外としっかりしている由梨に感心した。
「よし、じゃぁ、仮入部始めるか。」
海翔がそう呟く。
「未経験の2人、やりたいとこに来い!」
【ペインツ】に後輩が出来た。
【ペインツ】は嬉しそうで、恥ずかしそうだった。
この時、4人は先輩の自覚が芽生えた。
後輩…
いると楽しいですよね。
いなかった?
今からでもつくれますよ。




