第百十六小節:おしるこ
「ただいま!!」
麗奈は玄関で大きく叫んだ。
遠くで海翔の母のおかえりと言う声が聞こえた。
麗奈と海翔はリビングに行き、テレビをつける。
着物を着た芸人たちが漫才を繰り広げていた。
海翔と麗奈は大爆笑していた。
「ちょっと海翔!
手伝って!」
「おいよ。」
海翔は立ち上がり、キッチンの方に向かう。
リビングに1人残った麗奈は気まずくなって、海翔を追ってキッチンに向かった。
「私手伝います!」
「あら、ありがとう。
じゃぁ、女の子だから、おしるこ見ててくれるかな?」
「はい!
おもちは?」
「まだいいわ。」
「おしるこ食うの美弥だけだもんな。」
「そうなの!?」
「そうなのよ。
私も海翔も甘いのダメで、お父さん糖尿病だから、少し控えてるのよ。」
麗奈は海翔の母からへらを貰い、鍋の中身を回し始めた。
「じゃ、私大部貰っちゃっていいですか?」
「美弥に勝てればね。」
海翔の母は意味深に笑う。
「大量に食べたきゃ頑張るんだな。」
なんやかんやで準備が完了し、海翔の父とまだ眠たそうな美弥がリビングに来た。
「明けましたらおめでとうございます。」
「おいおやじ、下らんギャグ言う前にまともなこと言いやがれ。」
「まともなことを先に言ったらギャグにならんだろ。」
「うるせぇな。
早く言え。」
「うるさいのはどっちだ。
おほん。
明けましておめでとうございます。」
全員が正月の挨拶を言う。
「では、いただきます!」
テーブルの上にはすでに崩されている重箱と、ジュースやお酒、おやつに手作りゼリーなどなど、色々なものが並んでおり、全員が奪い合いながら食べていた。
「おかあさん、おしるこ。」
「はいはい。」
「あ、じゃぁ、私も。」
「はい。わかりました。」
海翔母はキッチンに行き、おしるこの入った鍋を持ってきた。
重箱を少し片付け、空いたスペースに広告を敷き、その上に鍋を置く。
麗奈と美弥の前にお椀を置く。
「さぁどうぞ。」
美弥が先手をとり、おたまを握り、おもちを3個ほどと満帆に近いおしるこを自分の領地に入れた。
美弥がおたまを離し、それを麗奈がとる。
麗奈はおもちを1個入れ、おしるこは半分くらい入れた。
麗奈は一口飲む。
「おいしい。」
「あら嬉しいわ。市販のだけど。」
「私が作るより美味しいです。」
「お前はだいたい料理苦手だろ。」
「う、うるさいわね!」
笑いが起こった。
麗奈は顔を真っ赤にしたが、すぐに笑顔になった。
何年ぶりにこんな大勢で元旦を送っているのだろうか。
麗奈は思う。
幸せと言うのはこう言う事だと。
一杯のおしるこを平らげたら、胸が一杯になった。
残りを美弥が全て平らげ、残りのくりきんときを占領する。
ピンポン。
「あら、誰かしら。
はぁい!」
海翔の母は玄関に向かった。
「海翔、友達が来てるわよ!
4人。」
「おう!わかった!
麗奈、みんな来たみたいだぜ。
どうせ、初詣だろ。
準備してこい。」
「うん。」
「うちも行く!」
「じゃぁさっさと着替えてこい。」
「はぁい!」
2人は2階に上がり、外用の厚着をする。
そして、5人が待ってる外に出る。