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第百十三小節:クリスマス




クリスマスライブは終わり、バンドメンバーは片付けをしていた。


それもなんとなく終わり、全員が一緒の場所に集まった。


「はい、みんなお疲れさま。


忘れ物とか無いように解散してね。


連絡したいこととかある?」


一回り見回したがなにも出ないようだった。


「じゃぁ、これにて、」


「はい!


あります!」


麗奈の叫び声が響き渡った。


「え、どうしたの?」


大き目なケーキをカナとシナが運んできた。


「えーっと、【グランドマイン】のみなさん、2年間お疲れさまでした!!」


パンパン


麗奈の声と共に数個のクラッカーが鳴り響いた。


「味な真似してくれるねぇ、キシシ、」


「うち、聞いてないけど、薫聞いてたか?」


「聞いてるわけないじゃない。」


「あぅあ、でっかい。」


「ありがとう、みんな。」


海翔はスプーンを数十個持ってきて、


「みんなで食べましょう。


クリスマスなんだし。」


ということで、ケーキがっつき大会が始まった。


どうやって作ったかわからないが、数十人がたらふく食べても余るぐらいだ。


「ちょっと、太るかも。」


「薫は太った方が良い。


痩せすぎで危ないだろ。」


「センこそ、筋肉だらけで。


彼氏できないぞ。」


「なに言ってんだ、うちが好きなのは薫だよ。」


「はいそこ、勝手に2人の世界に入らない。」


「キシシ、KY海翔。」


「ムイ先輩、KYは死語ですよ。」


「キシシ、キシシ」


全員が笑顔だった。


もう、何もかも忘れて、ただただバカ騒ぎを繰り広げていた。


「そろそろお開きにしろ。


時間考えろ。」


小村が水を注した。


「はぁい!」


全員が一気に片付けを始めた。


「あ、そう言えば薫。


約束忘れたのか?」


薫は小村の顔を不思議そうに眺め、


「ピアノですか。」


と聞く。


「あぁ。


耳も痛くなった事だし、ゆったり目の曲が聞きてぇな。」


薫は目をつむり何の曲をやるかを考えた。


「わかりました。


サラ、悪いけどシンセ出して。」


「うん。」


シンセが出てきて、そこに座る薫。


付属品のペダルを付け、指を何回かボキボキと鳴らす。


片付け終わったようで、全員が観客席に集まった。


「では、亡き王女のためのパヴーヌ。」


薫は弾き始める。


優しい音色をゆっくりと奏でている。


バンドをやっている人間にとっては子守唄のように聞こえる。


時々感情が高ぶるのか、強くなるが、すぐに優しい音色になる。


フィナーレは今の感情からなのか、やけに壮大に、力強く伸ばしきった。


「以上です。」


その場のほとんどが眠っていた。


起きているのは、小村と海翔と胡桃と瀬川くらいだった。


「どうでした、小村先生。」


「あ゛?


まずオレなのか?


そうだな。


まだ若い感じが残った感じだな。


そんなに柔らかくもないし、かといって強い所は固すぎるって感じだな。」


「そうですね。


しかし、良いところもありました。


クラシカルな抑揚に引き込まれてしまいましたね。


ぜひとも、うちに、」


「瀬川、うちはそう言う事務所じゃないでしょ。」


「胡桃、それを言うなって。」


「海翔くんは?」


海翔はまっすぐ薫を見つめた。


「3点。」


その一言に、小村や瀬川は驚いた。


「なんでだい海翔くん!」


「さすがにそれはねぇぞボケ。」


罵倒が飛び交う。


「うっせぇな。


説明してやるからだまってろ。」


ムダに素直なようで、パッと静かになった。


「減点法でまず、シンセのピアノでマイナス70点。


ペダルの不具合マイナス20点。


その他もろもろマイナス7点。


以上。」


大人の2人は返す言葉がなかった。


沈黙が起き、すぐ後に薫が笑った。


「さすが海翔くん。


ムダに固いね。」


その笑い声に寝ていた奴らは目を覚ました。


「終わったぞ。


さぁ、帰るか。」


海翔が立ち上がり、ギターとカバンを担ぎ、ドアに体を向けた。


「薫先輩、後ろに何か置いてありますよ。


麗奈、後ろ。」


薫も麗奈も後ろを振り返った。


「え!なにこれ!」


「ウソ!ギター!」


薫は小さな細長い箱を拾った。


HappyChristmas


そう筆記体で書いてあった。


「薫、開けろ。」


小村が言う。


薫は包装紙を綺麗に剥がし、蓋を開けた。


「ネックレス。」


それを取りだし、着ける。


「似合ってんじゃねぇか。」


小村は空笑いをする。


「ありがとうございます。」


「礼なら他のやつに言え。」


「いいえ。


みんなに言わせていただきます。」


「そうかい。」


薫はピアノの部分を握る。


今日という記憶全てを埋め込むように。


一方麗奈は、


「やったー!


フェンダー!


って重!


こんなに重いっけ。」


「フェンダーはだいたいそのくらいだよ。


その中でも一番軽いやつ。」


「聞いてないよぉ!」


麗奈は始めてのサンタサンからのプレゼントに嘆いていた。


胡桃はそれをフォローしながら、笑っていた。




賑やかなクリスマスは幕をとじ、そろそろ今年も終わりを向かえ始めていた。

みなさまお疲れさまでした。


もう年の瀬、張り切っていきましょう!

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