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第百十小節:クリスマスライブ2




最後のGdurを伸ばしきる。


拍手と指笛と叫ぶ声が交わって【ペインツ】を褒め称えている。


麗奈は息を切らせていたのでマイクを口から離していた。


1回大きく深呼吸して、


「みんなありがとう!!」


マイク越しに叫ぶ。


そして、【ペインツ】は会場から消えていった。


裏にはいつものように【グランドマイン】が自分たちの番はまだかと言わんばかりに待っていた。


「お疲れ。」


いつものように薫がそう言う。


「まだ、大物残ってますけどね。」


海翔は左手首を回しながらそう答えた。


「うふふ。


ま、ゆっくり休んでなさい。」


「会場のテンション下げないで下さいよ。」


「それ、プレッシャーのつもり?」


「そのつもりですが。」


「甘く見られたものね。


むしろ、上げてやるわよ。」


薫は海翔の肩を叩き、会場へ出ていった。


ギター、ベース、シンセサイザーをアンプにつなぎ終わる。


そして、すぐにピアノの音色が会場に響き渡る。


それは、誰でもわかる学校のチャイムだった。


いつも終わる場所を終わる前に、薫が口を開く。


「終わりを告げるチャイム


楽しい時間が終わり


飾られた大通を


2人で歩く




今日は何の日だっけ


あなたはバカにしたように


聞いたその後に


答えようとした私の唇を奪う




メリークリスマス


町に雪が降り


この日を祝うように


今日だけは神様を


信じようと思った」


ピアノと歌だけの、しんみりした感覚。


薫の張りのある低音域に聞き入ってしまう。


ピアノも薫が歌いやすいように言いたいところを忠実に奏でている。


1番が終わった所で、ギターとベースとドラムが一斉に入り、一気に盛り上げに入る。


「いつも通る道


今日は違う道


きらびやかに町を


光らせる電気




遠い昔の今日なら


こんなに綺麗じゃないでしょう


綺麗な色に2人の


頬の色も染まっていく




メリークリスマス


2人の気持ちまで


ドンドン近くなっていき


さりげなく君の手を


握ってみたくなったの」


間奏に入る。


賑やかすぎたライブ会場が一気に静かになり、薫の歌を心に刻んでいた。


薫がギターをフルに奏で、最後に向ける。


「メリークリスマス


永遠に一緒だよ


抱き締めた君の体は


なんだか少し冷たくて


メリークリスマス


神様お願い


一生のお願い


私のお願い


この人との永遠を下さい」


薫の訴えるような歌声に、その場の全員が息を飲んだ。


いつもとは少しだけ違う雰囲気を醸し出していた。


「あれ?


拍手ないの?」


薫がイタズラにそう聞くと忘れていたかのように拍手が沸き起こった。


「ありがとう。


まぁ、自己紹介はいらないと思うから次いくよ。」


その後、5曲連続で行う。


どれも桁外れの演奏ばかりだった。


それからみれば【ペインツ】の演奏も下手に聞こえた。


「さて、次で最後。


ちょっとみんな聞いてね。」


それは突然過ぎた。


「次が【グランドマイン】の本当に最後の曲になるの。


このクリスマスライブを期に解散します。」


惜しまれる声が響き渡った。


すすり泣く声さえ聞こえた。


「泣かないで、私だって、」


普段見せない涙、観客もつられ涙を流す。


「もう、最後の、曲、いくよ。」


静かになった。


「愛するよりも


愛されたい


愛されるよりも


愛したい


悲しむよりも


泣いていたい


泣くよりも


笑っていたい」


不思議な歌だ。


なにもかもを包み込むような和音。


響き渡る澄んだ歌声。


心に響く低音。


体が響くビート。


「ありがとうといえない


でもいいたい


ごめんなさいといえない


でもいわなきゃ




大切な人に


歌ってあげたい


永遠に繰り返される


ありがとうの言葉




ありがとうありがとう


何度でも言える


ありがとうありがとう


私の気持ち


ありがとうありがとう


また会える日まで


ありがとうありがとう


この歌を歌ってて」


なんども繰り返されるありがとう。


言うのは簡単だが、普段は言えない言葉。


難しすぎる簡単な曲だ。


【グランドマイン】は完璧に終わらす。


悔いがないように、最後の1音まで。


「ありがとう!


てかまだ1曲やるから泣かないで。


「みんな、ありがとう!


さぁ!次は特別ゲストだよ!!」


【グランドマイン】は会場から降りた。


素直で綺麗な拍手だった。

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