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晩秋 / オリオンと木の葉

『晩秋』


虹彩に映る緑色の家

意識を置かないと気付かないマンホール

囀ずりが閑静な窓を鳴らす小路

車通りが多くて灌木が今日も(かお)

次第に道が狭くなって

たらだらだった光で目をすがめる

知り合いの店も並んでいる

この道を、何度、歩いただろうか…


雨でアスファルトの砂の想いが

散らばる制服の心を融かし

重たい荷物を背負う日もあれば

朝焼けに向かって、腹を空かしながら

いや、とにかくもう走っていった

いや、とにかくもう走っていった


通いつめたバイト先が潰れて

星が自棄(やけ)に鉛のように降っているし

涙を拭いきれずに

いい歳こいて

母親に背中をさすられた日もあった


千鳥足になって

あの人を想ったのか

川に入って、裸足のまま町を歩き

あの人に貰った天の(ヴェール)を着たまま

シャワーを浴びた


本当にあったことなのに

胸を失くすほど轟かしたことなのに

本・当・で・あ・っ・たのに

全てが幻のようだ

全てが幻のようだ


わたしは、いま

晩秋の幻のなかを

気付けば歩いていた

ただ歩いていた

ショルダーが衣服に擦れる音や

靴の薬指が

小路を蹴り、(こいし)が散らかる

音やリズムを忘れて


『オリオンと木の葉』


夜明けまえの空を見渡せば

オリオンが明滅している

まるで

古代の秘儀や秩序でさえ

現代という唇から

告白しているかのよう

この光の便りに

少しばかりの畏怖とをかしさを感じ

銀河の駅に向かって歩いていく

ひいらりふらり

ひいらりふらり

潤朱(うるみしゅ)色の木の葉が

ひいらりふらり

ひいらりふらり

と、手元に舞い降りてきた

わたしも

ひいらりふらり

ひいらりふらり

と、胸のなかにある

詩と詩の断片を詠っていった

銀河の電車は知っている

乗せる人々とその終着駅を

それから

その詩と木の葉は

憧れの土に(めぐ)り合い

手を取り合い

共に還っていった

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