青年Aの告白
1
ぼくには
死にたくなるような
記憶ばかりあります
それが
よぎるたびに
自分自身をリストカットしなければ
気が済まないのです
ぼくのなかの「恥じらい」は
時に、ぼくを死の淵に追い込んでまで
魂が穢れないように
その純潔を
守ってくれているのかも知れません
「若い頃はどんどん挑戦しろ」というのは
大変、無責任な言葉です
ぼくはそのせいで
こんなにも苦しみ
自殺したくなっているのですから
そうやって
何もかも、人のせいにしていて
甘えてばかりのぼくなんか
全身から血を流し
傷だらけになったあと
この世界から消えてしまえばよいのです
大丈夫、もうあなたは心配しないで
不安や恐れや快楽に憑け込む
世界中の悪魔を引き連れて
ぼくが悪魔と
一緒に死ぬから
この世界は
天使や愛ばかりになるから
2
3ヶ月に渡り
ある小説を全身全霊で書いてみました
自分のもてる全てを
またそれ以上のものを
ぶつけて書きました
そして
その小説が完成したあと
ほどなくしてから
その原稿を全て燃やしました
こうして
ぼくは、死ぬことに成功したのです!
この死によって
どうやらぼくのなかにあった
地獄の苦しみが
少しは昇天していったようなのです
気が少しは、楽になりました
燃やしてから数日経ったあとに
知ったことなのですが
チベットの仏教では「無常」を
感得するために
丁寧に力を注いだ作品を
残さないで
破壊するようです
そのような行が
あるようなのです
3
いつからかぼくは
「死にたい」と思うこと
またその強い衝動は
本当にやりたいことをやって
「生きたい」という
切なる思いや願いや欲求が
裏側には
あるのかも知れない
と、思うようになりました
「死にたい」と思う
エネルギーの反対側に目を向けれる
ようになったのです
それからぼくは
周囲をそこまで気にしなくなりました
嫌われても良いから
嫌なことは嫌だと
言えるようになったのです
そして
心から良いと思えて
世界の平和にも繋がる
自分が実践したいことは
たとえ世界中の誰もが
反対したとしても
実践するようになれたのです
4
ぼくは
物語を書くことにしました
その物語の内容を
もしも短く言いあらわすのであれば
ある青年が
命懸けの大失恋をしますが
朝目覚めたときに
鳥達の囀ずりがあるだけで
自分自身の生命を感じるだけで
人生を大満足できるような
感受性を持つまでに
成長していく物語を
書こうと思っております
5
ある黄昏時に川を眺めていました
その川を眺めていたときに
思い浮かんだ詩がありましたので
それをここに書いておきます
「ぼくは神の木の梢から
ひらひらと舞い落ちながら
川のおもてに辿り着き
ゆらゆらと流されながら
幾つかの季節をまたぎ
豊饒な海に溶けていきました
やがて
無数のプランクトンや有機体が
ぼくに住みつき
魚がぼくを食べて
ぼくは糞となり
またその糞を魚や微生物が
ぼくを食べるという
生命の永遠のサイクルに
貢献するようになりました
こうして
命のよろこびを取り戻し
期せずして、ぼくは再び
神の木に
還ることになりました」
6
無理はしなくて良いのです
自分のできることをすれば良いのです
それから、少しずつ、少しずつ
自分のできる範囲を拡げていけば良いのです
ハイハイしていた赤ちゃんが
いつの日にか
何かに、手を付きながらも
立っていけるように
7
ぼくは光を知りました
知っただけではなく
見て、聴いて、触れもしました
それだけは、どうやら嘘を付けないようです
そして、ぼくは
やがて
子供のような存在に
還っていくのです




