青年と鳥
花冠が舞っているような陽の光を
川の水面がてるてると映し出していた
ある日のこと
青年はどうしようもなく
とりとめのない心情に駆られて
家を飛び出し、街に出ました。
青年は思いました。
「なんだか、見つかるといいな。」
らうらうと街を青年は歩きました。
しかし
青年は街の至るところを歩いても
どのお店に入っても
違和感や空虚感ばかりを感じるのでした。
青年は街に埋もれてしまいそうになり
それでも、そういった素振りは
ぽうぽうと
誰一人にも、見せずに歩いていました。
「今日も、こんなものかっ。」
と、吐き出すように、胸のなかで
呟いたその時です。
電線に止まっていた
鳥が、はじめは、青年のここかしこに
それから次第に
肩、腕、手のひらと転がるように
頼ってきました。
そのとき青年は、再び、
とりとめのない心情に駆られ
その鳥を、大事に大事に
匿いながら自宅に持ち帰ることにしました。
こうして
鳥との生活が始まりました。
みるみるうちに鳥は生命力を回復していき
いつからか鳥は、公園などで自由に遊ばさせても
必ず、青年のところに戻ってくるようになるほど
青年に懐くようになりました。
ところが
そんなある日のことです。
青年は鳥といつものように
公園に遊びに来たのですが
今日の鳥は様子がおかしく
東の方を見て囀ずるばかり…
「ピーピー、ピピピ、ピーピー」
そうして、とうとう
東の方へ飛び立ってしまいました。
幾日も幾日も
鳥は帰ってきません。
それからというもの
青年はどうしようもなく、寂しくなり
何かとうなだれ、うつむくようになってしまいました。
「はあ、人の成れの果て…、だなんて」
そんな沈むように眠ってしまった、ある晩のことです。
青年は気付けば夢の中にいました。
あの、いつか出かけた街に青年は居たのです。
しばらく街を歩いていると
何やら飛んでくる鳥がいました。
よおくよおく
近づいてくるその鳥を見てみると
その鳥こそ
あの街で助けた鳥でした。
鳥は
人の言葉のように
青年に話しかけました。
夢のテレパシーでしょうか…
「突然居なくなってごめんね…、それでも、僕は本当の名前を知る為に、東の方に行かなくちゃならなかったんだ」
青年は、ホッとして言いました。
「何はともあれ、元気そうで、良かったよ!また、会えて本当に嬉しい」
街や空が様々な紋様を現し
輝いたあとに
今度は、鳥が楽しげに
青年の周りをパタパタパタと
飛び躍りながら言いました。
「ピーピー、ピーピー。僕の名前は、東京!僕の本当の名前は東京なんだ」
青年は驚きました。
日本の首都名だったからです。
すると、青年の周りをパタパタパタと飛んでいた鳥は
姿を変えて、天上の奏楽のようなものが
奏でられ
ついには、鳳凰のようになりました。
鳥の正体は
東京の産土神だったのです。
そして、この街を
雅やかに飛翔するのでした。
青年は大きな大きな感動をしたまま
目を覚ましました。
頬には涙がこぼれていました。
それからというもの
東京は息を吹き返して
人々も何故だか元気になり
なかなか咲かなかった
彩り溢れる花々が咲きはじめ
湧かなかった
泉も湧くようになりました。




