城 / 19才
『城』
こんな空と、私は出会ったことがなかった。
気が付けば30歳を過ぎていたが
10代20代から比べ
なにか物が知れたかと言われれば
ある程度は「はい。」と応えはするが
本心というものは、愈々(いよいよ)色づきはじめて
自身を見失うことが多く
想像すらしなかったことに
お金も賭けてしまうほど。
友を想い出せば
もう、会うことは出来ないだろうと
愁いたりするし
親を想えば
まだ、なに一つ親孝行出来てない、と、
フゥとした、幽かなかたまりのかたまりの
肩を落としたりする。
一方では、笑えないことも多くなってきたが
他方では、変なことで笑うことが多くなってきた。
変な笑い方をヘラヘラしたあとに
仮想空間で溺れては
気持ち悪く、生臭い、噦りで
着地し、足場さえも調えられないまま、
足の薬指には、何故か、力が加わり、
その感触と、感覚だけが、伝わってくる。
これも、あれも、どれも
誰も悪くない、何も悪くない
悪い人なんて、悪い存在なんて
どこにもありゃあ、しないんだ!
自分自身が選ばせて頂いた道なのです。と、
横浜の駅のホームで呟いたりしている。
きっと本当の優しさは
優・し・さ・に触れたのなら
その優しさよりも大きな力を能えてしまうことだろうと
ファッションビルを歩いては
ふたたび呟いている、そんな生意気な心模様…
ラジオも、碌に
聴かないのに
話し方も分からないのに
一人ラジオ放送をしてしまっている。
お、あ~~、そっか
あの頃から
何も変わっては、いなかったのか。
『19才』
19才の頃
裸のまま鏡のまえで
立っていた
あの人やあの子
あの街やあの国
地球や宇宙の創世と終末を
想いながら
舌足らずで祈っていた
加害者の傷や被害者の傷が
癒えるように
もう二度と世界大戦が
起きないように
硝子玉の心情に翼を生やし
一人として欠けることなく
遠い祖先から子孫まで
しあわせであれ!
下手に歌っていた
たったひとつの自分自身になるために
たったひとつのあらゆる世界を
たったひとつの唇で
嘆いていた
みんな裸の心で産まれてきたのに
どうして裸の心を踏みにじるのか
どうして裸の心に化粧をしてしまうのか
きっとあの世では裸の心になるというのに…
踊っていた
色彩の変身が自由に萌えるように
命が素直になるように
極小と極大、その間にある
無数の存在に祝福がありますように
生きていた
ひとつなる憧れの涙を
遥かな肌にこぼして
ひとつなる瘡蓋に手をあてて
ひとつなる魂の臓器に
まるごと若き聖なる息を吹きかけて




