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レテの一滴/まっさらに /雀のさえずり
『レテの一滴』
あなたほど出来た人間ではありません
その理想を押し付けないで下さい
私にはそれを行う縁も
実践する力もありませんので
どうぞ
他を当たられて下さい
お願い致します
何かの間違えでしょう
あなたが私を選ぶだなんて
そうだ…、いっそのこと
レテの河の水を浴びて
全てのことについて
忘れられればいいのに…
それすら赦されぬのであれば…
時よ、レテの一滴となって下さい!
『まっさらに』
そう
抑揚を付けず
それをそのまま
不器用なまでに
まっさらに詩を伸ばします
それから少しばかり
季節の花を添えたりして
そうすれば
明るい世界で夢を転がれるような
気がしているのです
何を隠そう
この世界は
先人が命懸けで
繋がれた世界なのですから
『雀のさえずり』
鈴のように
1つのよどみもなく
清らな波紋が
宙の噴水のなかで
その1滴が
わたしのなかで
閑雅のその語調が!
そこかしこに
弘まり
亘り、融けていく
それから
小さな青藍の炎が灯されて
まどかな調和をし
花のお伽噺を呼んで
幽かに揺れている
このさえずりが
毎朝あること
日常、日常、日常、日常
それは
あなたの
その裏も表もない地声のように
永久を叫んでいるようです