日輪/血漿/茶
『日輪』
まどかな陽の光が
木々の葉に集まって
静かに揺れている
仰ぎ見上げる
二人には
やさしい木漏れ日の万華鏡が
歌っている
ああ、素晴らしい
しあわせがくるでしょう
二人の心は
この日のように輝き
命を産む愛の高尚に捧げられている
「ぼくときみは、死んでも離れない!たとえ、輪廻転生をしようとも!」
二人はやがて
大いなる全てと婚約し
清廉から清廉
とこしえからとこしえの
ひとつなる指輪を賜るであろう
「不思議ね、あなたと出逢ってから、地上が天国になっていくの。ほら…、見て」
その祝福とよろこびを
書き綴ろうものならば
世界が終わるその日まで
時間を費やしても
足りることはないだろう
『血漿』
グローリアス! 不連続な沈黙の音楽とその合唱が萌えいづる!マルーン(えんじいろ)に染まる泉の鏡がミューズの乳房で割れた! 菫青石きんせいせきの涙が蜃気楼の頬に伝う!砂漠に取り残された少年少女の胸に散らばる数々の記憶の破片が、白月の血に沁しみいり三度甦る!調和的な数字の羅列が回転し、あたりにある有象無象うぞうむぞうは様々に変容し、それらが独自に震動しながら、活闥かったつな連鎖反応を起こし、巻き上がり、次第に稠密ちゅうみつして、愈々(いよいよ)と繚乱たる光彩を放つ!その光の尾てい骨が、紫紺に泣いた沃土よくどの頭頂に合掌し、視界に望むあたり一面は、白磁はくじの波を打って潤い、古代から流れくる語調の血漿けっしょうに世界は酔いしれる!あらゆる存在は聖なる息を吹き返し、存在は存在の原初の至福に到達する!
『茶』
溢れる天然の血が
今日も私に囁いている
どんな姿勢や想いで茶を飲もうが
もう二度とその茶を飲めない
だから
茶をその一杯を
命懸けで飲み尽くしなさい
茶の茶たる由縁に辿り着くように
そうして
茶の命があなたの魂の血流のなかで
あなたのその独創の福音を奏ではじめるように