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痴漢されている美少女を助けたら一緒に登下校するようになりました  作者: 木嶋隆太


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第二十七話 お出かけ1


 日曜日。

 華恋との約束の日でもある。


(……デート、じゃない。けど、なんていうか。二人で出かけるって、緊張するな)


 浩明はおしゃれに気を配れる人間ではなかったが、服に関して迷うということは今までに一度もなかった。

 そういったことに詳しい人間に無理矢理に買わされたことがあるからだ。


 それが幸助と真奈美だ。

 いつか必要になるから、と幸助に購入を促され、真奈美にも似合うからと勧められた。


 小説を書く際の資料になるし、まあいいかという気軽な気持ちで浩明は彼らに勧められた服を何着か持っていたため、服に関して困ったことはない。


 今日は6月半ばの現在は、気温の高低が激しく、なかなか安定していなかった。

 雨続きの日々であったが、今日ばかりは晴れていた。それでも、肌寒さはあったため、七分袖の上着に、中は白のシャツ、ズボンを履いて浩明は部屋を出た。

 待ち合わせ場所は、ショッピングモール近くにあるバス停ということになった。


 歩いていける距離であり、浩明は地図を確認しながらショッピングモール近くのバス停を探していく。

 ショッピングモールに行ったことはあったが、真奈美に無理やり連れ出されただけだった。

 また、その際は車での移動であったために、浩明はいまいち道を覚えていなかった。


 浩明の行動範囲は非常に狭く、一人暮らしを始めてから一度も近所と学校以外には足を運んでいなかった。

 そのため、周囲にどんなものがあるのかも知らなかった。

 

 歩きながら新しい発見をしていた浩明は、ようやくショッピングモールに到着した。

 バス停はショッピングモールからすぐ近くにあり、キョロキョロと周囲を見ていた華恋が浩明に気づいたのはそれからすぐだった。


「おはようー」

「おはよう」


 華恋が身に着けていたカジュアルな服装は、彼女によく似合っていた。

 浩明の前で足を止めた彼女は、口元を緩める。


「それじゃあ、そろそろ行こうか」

「ああ」


 華恋とともに歩き始め、ショッピングモールへと向かう。


「晴れてよかったね」

「……そうだな」


 実は昨日、天気が崩れないことを祈っていた浩明は、彼女の言葉に思わずつまりそうになる。

 ショッピングモールに着いたのはそれからまもなくだった。

 休日ということもあり大勢の人であふれていた。

 駐車場には多くの車があり、今も空いているスペースを探すように動いていた。


「普段、戸高くんはここには来るの?」

「いや、来たことはあんまりないな。だいたい、買い物は近所で済ませるし」

「そうなんだ。たまに来るってくらい?」

「ああ」

「へぇ、珍しいね。私たちの地元の子ってここ以外で遊ぶ場所ないから、みんな大体いつもここに来るんだけど」

「そうなんだな」

(……こっちで遊ぶ友達いないしな)


 自分の交友関係の狭さを悲しく思いながら、浩明は華恋の隣を歩いていく。


「戸高くん、本屋とかもあるからあとで行ってみる?」

「……そうだな行きたい」

「そっか。本当、本が好きだね」

「……そ、そんなにではない」

「顔、今日一番うれしそうだよ?」


 浩明は思わず口元を隠し、華恋が微笑んだ。


(……早水と二人きりであることを意識しないように、強張っていたのもあるからな。反省だ)


 浩明は華恋とともに歩き出す。

 普段、駅以外ではほとんどみないような人の数だ。その電車のときよりも人であふれていた。


「今日は何を買いに来たんだ?」

「服が欲しいかなって思って。男の子の貴重な意見も聞きたいと思ったし」

「俺はあんまりそういうの詳しくないんだ」

「そうなの? 結構センスのいい服着てるけど」

「これは……全部他の人が選んだ奴だ」

「え、そうなんだ? 織部くんとか?」

「ああ、それと真奈美さんだな」


 浩明がそういうと、華恋は少しだけ頬を膨らませた。それは本当に僅かな変化だ。よく見ていなければ見逃すようなものだったが、浩明はたまたま気づくことができた。


「そうなんだね。真奈美さんと仲良いね」

「そういうわけじゃないけど、たまに連れ出されることがあるくらいか」

「……それって結構仲いいよね」

(そうかもな。向こうからしたら、弟みたいな感覚なんだろうけど)

「一人っ子で弟に憧れていたらしい」

「あー、そういうのかぁ。けど、確かに私も妹か弟欲しいなって思ったことあるな」

「お兄さんがいるんだよな? 上はもういいのか?」

「うん、もういい。この前だって私が買っておいたアイス勝手に食べたし……ほんと信じられない!」


 華恋はぶすっと声を荒げていく。

 それから華恋がお目当ての服を選んでいく。


「ねぇねぇこれとこれどっちがいいと思う?」

(……正直言って、よくわからないな)


 浩明は顎に手をやり、じっと服を見比べる。

 そもそも、元が良いので、何を着ても似合うというのが浩明の意見だった。


 とはいえ、そのまま伝えるのも何も考えていないと思われそうだったので、浩明は指さした。


「俺はこっちのほうが好きかな」

「へぇ、戸高くん、こういうの趣味なんだ?」


 そういわれ、浩明は慌てて首を振った。


「趣味っていうか、なんとなくそう思っただけだ」


 それからも華恋は色々と服を体に合わせ、浩明に見せていく。

 一軒目はそれだけで終了した。浩明は華恋の様子を見ながら、次の店へと向かう。


「気に入ったのなかったのか?」

「色々と見てみたいと思って。戸高くんも何か見たいものがあったら言ってね」

「ああ」

(っていっても、そんなに興味あるものないしな)

「お昼はどうしよっか?」

「ショッピングモール内に色々店あるよな。どこか適当に行くか?」

「そうだね、がっつり食べる感じ? 食べ放題とかもあったと思うけど」

「まあ、あれば食べるけど、そこは色々見てもいいし」


 そんなこんなで歩いていると、自転車売り場を横目に見る。


「そういえば、最近全然自転車とか乗ってないなぁ」

「……確かにな。こっち来てから、全部徒歩だ」

「私中学は自転車通学オッケーだったけど、戸高くんはどうだった?」

「俺もそうだったな」

(今日はまた、一段と良くしゃべるな)


 浩明はそんな彼女の様子を後ろから見ていく。

 次の店に入る。そこは男性物も扱っていた。


「戸高くん、これどう?」

「……そうだな――」


 浩明は華恋の問いに答えていき、華恋はそれを聞いて嬉しそうに笑う。


(ほんと、可愛い人だな)


 彼女の無邪気な笑顔に浩明はほっと息を吐いていた。

 華恋は真剣な様子で悩んでいてどちらの服を買おうかというった様子だった。


「また帰りに見に来ればいいんじゃないか?」

「うーん、そうだね。荷物になっちゃうし。まだお昼には早いし、本屋にでも行ってみる?」

「……いいのか? 早水の欲しいものを買いに来たんじゃないのか?」

「私は今のでだいたい見終わったよ。戸高くんにばかり付き合わせるのも悪いし」

(別に、楽しそうにしてる姿見てるだけで楽しいけどな)

「わかった。それじゃあ本屋行ってもいいか?」

「うん、いこっか」


 思っていた以上に人であふれていた。

 

「なんで今日はこんなに多いんだ?」

「……どうしてだろう」


 と浩明は近くの人が会話しているのを聞いた。


「……なんか有名人が来るみたいだな」

「……みたいだね。だから、混んでたのかぁ。今日じゃないほうが良かったかもね」


 想像よりも多くの人がいて、浩明たちは頬を引きつらせていた。

 浩明たちが頬を引きつらせていたときだった。

 すっと、浩明の左手を華恋の手がつかんだ。


「戸高くん、ちょっと早いけどお昼の場所探しに行ったほうがいいかも」

「……だな。本屋はあとにしようか」

「うん、ごめんね。行こうっ」


 華恋がすっと浩明の手を掴んだまま歩き出す。


(……手にぎったままなのか?)


 有名人が誰なのか、とか昼はどこで食べるのかとかよりも浩明はそのことだけが気になり続けていた。



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