隠すことはできにゃい
師匠から教わった魔法はおいらの持つかみにゃり属性を使った魔法じゃにゃくて猫として使える魔法が多かった。
そのにゃかでもおいらが得意だと自慢できるのは誰かの夢のにゃかに入る魔法だ。
猫っていうのは寝子から来ているらしい。にゃんでも、よく寝ている姿から寝る子で猫と名付けられたとかそんにゃはにゃしがあるらしい。実際の所はおいら達よりもよく寝てる奴らはいるんだけどにゃ。
でもにゃまえというのはにゃによりも力が強い魔法だから、猫は気ままに気まぐれに誰かの夢に入る事ができるようににゃるそうだ。勿論、下手すれば夢から覚めにゃいって事もあるらしくてそれにゃりの特訓が必要にゃのだが。
おいらもその特訓をにゃんども繰り返した。その時に誰の夢に入っていたかというと、毛むくじゃらがほとんどだった。おいらと言葉がかわせれる人間だからという事で毛むくじゃらに許可を貰って毛むくじゃらの夢にほぼ毎日入っていた。
怖い夢を見たり、とても幸せそうにゃ夢を見たりと楽し気にゃ毛むくじゃらの夢においらもとても楽しんでいた。だからか、今でも無意識に毛むくじゃらの夢に入ってしまう事が多かった。
そう、だからおいらが見ているこの光景だって毛むくじゃらの夢のはずだ。
おいらの知らにゃい街の景色。その街は真っ黒い霧に包まれている。建物の大きさはわかるけれどそれ以上の詳しい事はわからにゃい、そんにゃ状態だった。
その霧の中に今より姿がちっこい毛むくじゃらがいる。その近くにはれんち人間や忠犬もいる。そして前に会った魔女もいた。
そうか、毛むくじゃらが勇者って奴だった頃の記憶の夢か。
おいらの姿を夢の中のこいつらは認識できないので毛むくじゃらの足元に移動した。おいらの移動を待っていたかのように、おいらがその場にお座りすると忠犬の声が響いた。
「なんでこんなやつが勇者なんだ!」
おいらと他の三匹が忠犬の方を見るが、忠犬は慌てた様子で首を振る。口をパクパクと動かしているが、こいつの声は響かにゃい。忠犬の口からではない発生源から、忠犬の言葉が響く。
「剣の才能があるわけでもなく、どんなに教えても戦う事をためらっている。こんなやつに勇者をやる資格があるというのか!」
「神は全能ではないという事でしょう。でなければ、こんな勇者としてやっていけなさそうな少年に依頼しないでしょう」
忠犬の声に賛同するようにはれんち人間の声も聞こえてくる。はれんち人間を見上げれば、目を丸くして自分の口を前足で抑えている。それでも、声は止まらない。
「相応しい人がまだ生まれていないのかもしれません。そうであれば仕方ないことかもしれません」
「こんな少年に酷なことを依頼する女神もいたものだわ。いや、こうして少年の傍にいる私達に対する試練かもしれないけどね」
魔女の声も響いてくる。全員の毛むくじゃらは勇者には相応しくにゃいと訴える声が響く。本人たちは自由に声を出す事はできず、響く声を否定する声は響かにゃい。
「知ってる」
そんにゃにゃかで毛むくじゃらが今より高い声を出す。それだけで周りに響いていた声は止まった。
「相応しくないと自分で理解したから、勇者をやめたんだ。過去に囚われると思うな」
そう言って毛むくじゃらは足元にいたおいらを見る。
にゃんだ、おいらのこと見えてたか。
「何度も夢に入ってこられたんだ。認識できるくらいにはなるだろう」
だが、毛むくじゃらがこれが夢だと気づいてからか、周りがだんだん白く崩れていく。毛むくじゃらがそろそろ目が覚める頃だ。
「クロスケ」
クロスケ言うな。
「黒い霧には気をつけろよ。これは夢だが実際にあった過去だ。こいつのせいで、勇者パーティは崩れた」
崩れた?
「お互いが隠していた不満が勝手に曝け出されるんだ。それだけで人間は信頼を全て無くしてしまう」
お前が勇者に相応しくにゃいってだけか。変にゃ奴らの集まりだったからじゃにゃいのか?
「それも確かにあるだろうな。最初からこのパーティは駄目だったのだろう」
それが、お前には寂しかったんだにゃ。
おいらの言葉に毛むくじゃらは目を丸くし、少し考えてから呟く。
「そうか、信頼を裏切ったとか、そういう事しか考えていなかったが。……寂しかったのか、俺は」
そして、毛むくじゃらの姿も全てが真っ白に包まれておいら達は夢の世界から抜け出した。
目を覚ませば宿屋の一室で嬢ちゃんと赤毛玉が身だしにゃみを整えているようだった。赤毛玉は自分の毛皮の上から嬢ちゃんが選んだらしい服を着ていた。
自分の身体を隠す布をつまんでいる赤毛玉は目を覚ましたおいらに気づいたのか近づいてきた。
「えな猫は。裸で文句言われねぁんだんて」
おいらにはまだこいつの言葉がはっきりわからにゃい。だが嬢ちゃんはにゃれたのか、会話はできるようで、準備が終わった嬢ちゃんがこちらを見る。
「裸、なんて。猫は人と違うのですから」
「おいはそんたに違いはねぁで思ってら。毛で隠してらでいうのになして駄目なのだべ。毛皮は良ぐで自前が駄目な理由知りだいだ」
そう言ってから赤毛玉はにゃにか思いついたのか顔を輝かせた。
「自分の毛で服作ってそれどご着ればえのが」
「やめてください」
嬢ちゃんが静かに制止する。おいらとしては問題にゃさそうに思うんだがにゃ。布をまとわにゃきゃいけにゃいにゃんて、人間達は大変だ。いや、人型と言っておけばいいだろうか。
赤毛玉は息を吐き出し、いやそうにゃ顔をして立ち上がった。
「それで、あのうるせえ女どまだ会わねばねぁのが?」
「僧侶様ですよ。仕方ないじゃないですか、そう約束してましたし」
嬢ちゃんの言葉においらも思い出す。
おいら達が宿に戻る前に、はれんち人間が言ったのだ。
『誰からの依頼かはこの際気にしません。あなたがたも魔王を倒すつもりがあるのなら、今夜、この街の広場に来てください』
今日の喧嘩の続きでもやりたいのだろうか。そうだとすればうるさい奴だ。
毛むくじゃらは凄く嫌そうにしてたし、嬢ちゃんもどこか嫌そうにゃ表情を見せていた。
嬢ちゃんが嫌にゃらおいらも会いたくにゃい。だがそういうわけにもいかにゃいのだろう。
お日様が沈んでいつもにゃら寝ている時間に嬢ちゃん達は出かける準備をしているのだから。
ふとおいらは外を見る。おいらの目は夜だろうが朝だろうが関係にゃく見渡せる。だというのに、窓の外が真っ暗だった。
その光景をおいらはついさっき見たのだ。毛むくじゃらの夢の中の光景に似ている。
街が黒い霧に包まれているのだ。
おいらは一つにゃいて嬢ちゃんにそれを伝える。おいらの声に気づいた嬢ちゃんと赤毛玉がおにゃじように外を見る。
「なんだこの霧?」
「わかりません。とりあえずリュカ達の部屋に行きましょう」
そう言って嬢ちゃんはおいらを抱えて扉に向かっていく。迷わずに扉を開けた嬢ちゃんだが、にゃにかがぶつかったからか扉は少ししか開かにゃい。ぶつかる音と少し呻く声に嬢ちゃんが首を傾げていると、扉の向こうから毛むくじゃらの顔が覗いた。
「……ライラ」
「あ、リュカ」
少し鼻が赤くにゃっている毛むくじゃらはしばらく口をもごもごと動かしてから肩を落とす。
「今はいい。外の様子は見たか?」
「はい。あの霧をリュカは知っていますか?」
「……あの霧で、ルーカスのパーティがお前の知らないものに変わった」
にゃんだその嬢ちゃんにしかわからにゃいように言うのは。おいら達にもわかるように言ってくれ。
毛むくじゃらの後ろからにゃが耳が顔を出した。
「僧侶に呼ばれたのでしょ?そっちに行くついでに黒い霧についても調べない?」
「だから、黒い霧は危険だと」
「危険だと言うならなんで危険なのかをあたしは聞いてるのよ。ライラちゃんだって気にならない?」
そう言ってくるにゃが耳に嬢ちゃんは頷きじっと毛むくじゃらを見つめる。後ろにいる赤毛玉も、おいらもそれににゃらう。
みにゃの視線を受けた毛むくじゃらはしばらく黙ってから観念したのか口を開く。
「あの霧は魔王の配下の攻撃だった。どうやら普段隠している言葉を無理やり引き出してくれるらしく、かなり手ごわい精神攻撃だと思ってくれ」
「どう対処したんだが?」
「あの時は逃げるのが精一杯だった。だが、その後でルーカスが仲間を信じられなくなり、僧侶は隠してた本心が晒されたからかあれを隠さなくなって」
あぁ、にゃんとにゃく分かった気がする。まぁ、つまりは毛むくじゃらはおいら達もはれんち人間達とおんにゃじことににゃると思っていると。
「問題はないですね」
「ないわね」
「ねぁな」
おいらの声が聞こえていたわけではにゃいと思うが、嬢ちゃん達がそう言って宿を出ようと足を進める。後ろから毛むくじゃらの声が聞こえてくる。だが嬢ちゃん達は振り返る様子はにゃかった。
宿から出れば黒い霧がすぐにおいら達を囲む。だが、特に変化はにゃいようだ。
にゃが耳が試しに声を出せば、その声はおいら達にも聞こえる。後からやってきた毛むくじゃらもかにゃり戸惑っている様子だ。
「これは、ルーカス様の時とは違うと考えればいいでしょうか」
「いや、同じものだと思うんだが。こんなに変化がない物か……」
「リュカ、貴方が前にこれを受けた時はすぐに変化があったの?」
にゃが耳の問いに、毛むくじゃらが「俺の経験ではないが」と前置きをする。
「すぐ、というほどではなかったが、そろそろ変化はあるはずだ。だが、普通に会話が出来てるんだよな……」
にゃんだ、毛むくじゃらも役立たにゃいにゃ。
おいらの言葉に毛むくじゃらが睨んできたが、おいらはその視線を受けにゃがす。
とりあえずはれんち人間が指定した場所に行こうとおいら達が歩き出すと、目的地らしい場所から声が聞こえてきた。
「僧侶様の残り湯最高です!飲料水に使っておりました!!」
にゃんか意味がわからにゃい申告が聞こえてくる。嬢ちゃんが思わず息を吸い込んだようにゃ声を上げた。
にゃが耳もうげっと声を出して顔を皺だらけにしてるし、赤毛玉も唇をぴんと張られた線みたいにしてる。毛むくじゃらはにゃれていたのか、特に反応を見せにゃい。
毛むくじゃら、あれ。
「大丈夫だ。ルーカスが飲料水貰おうとした時にそう言われて拒否されたことがある」
おい、視線がどこかに行ってるぞ。戻ってこい。
「もういやです!もう男性と二人きりで歩く私がはれんちなのでは!!」
はれんち人間の声だ。その声に嬢ちゃんと赤毛玉が思わず噴き出した。
とりあえず、もうあいつらは広場にいるらしい。
おいら達は度々聞こえてくる声を聞き、度々笑いながらも二人がいる場所に向かった。




