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クロ猫クロスのクロニクル  作者: ほしぎほし
10/24

猫と猫の逢瀬

 とある建物に入り、最初に口を開いたのはにゃが耳だった。


「部屋空いてるかしら?出来れば広めの部屋がいいのだけれど」


 建物の中でのんびりしていたのは見た事がにゃい鳥の頭をした人間だった。

 ……いや、鳥が服を着ているのか?翼みたいにゃのあるし。

 鳥人間はおいら達を眺めてからくちばしを開いた。


「警戒しなくても大丈夫だよ。この街はまだ人間には優しいよ」


 ただ、今日は一部屋しか空いてないからな、と告げて鍵を渡してくる。

 鳥人間の言葉にほっとしたように毛むくじゃらがその鍵を受け取った。


「昔はこの辺でも人間は嫌われていなかったか?」

「昔は、ですね。前魔王様のお力で2年前から意識が変わりましたよ。何せここは一番人間の村から近いですし」


 鳥人間はちらりと嬢ちゃんを見てから声を潜める。


「ただ、街の路地裏だとかに入りますと、まだ人間を嫌う奴らが集まっていたり、彷徨って入ってきた人間を奴隷にして売ったりもしますんで、気を付けてくださいね」

「ありがとう。……関係ない話だが、貴殿は有翼族だろうか」

「あぁ。他にはいないから珍しいでしょう。私は有翼族のペンギン種と呼ばれててね。空じゃなくて海を泳ぐのに特化した鳥でね。気になるんなら後で質問に答えちゃうよ」

「いや、ありがとう。少し興味があっただけだ」


 毛むくじゃらはそう言って嬢ちゃんを見る。嬢ちゃんに抱きかかえられているおいらも毛むくじゃらの視線に入る形ににゃった。


「ってわけで、勝手に外に出るのは禁止だ。何かあれば俺かアレックスと一緒に行け」

「わかりました」

「クロスケも」


 クロスケいうにゃ。


「人間じゃないから大丈夫だとは思うが、気を付けとけよ」


 全く、過保護だにゃ。おいらが危険にゃ目に遭うわけにゃいだろう。

 危険かどうかにゃんておいらには関係にゃい。今おいらは、とにかく外に出たかった。


 だって、考えてみろ。人間じゃにゃい人間みたいにゃのがいっぱいいるんだぜ?

 嗅いだことがにゃい臭いも沢山で、さっさと外に出たくて堪らにゃい。

 今すぐにでもおいらは飛び出したいけれど、嬢ちゃんに捕まえられてるから動けにゃいんだよ。


 そんにゃおいらを気にせずに、嬢ちゃんはおいらを運んでいく。辿り着いた部屋は少し広めで、でっかいの二人がいるけれど狭さを感じにゃかった。


「あら、結構いい部屋じゃない。ベッドは二つだけだけど」

「俺がソファーに寝るから問題ない。今のうちに身体休めとけよ。またのんびり過ごせる機会があるかもわからないからな」


 そう言ってでかい椅子に横たわった毛むくじゃらに嬢ちゃんは近づいていく。その手がおいらを離したので、おいらは窓に近づいた。

 窓をかしかしと引っ掻けばにゃが耳が気づいてくれたようだ。


「あら、ライラちゃん。クロスちゃんが外に出たいみたいだけれどいいかしら?」

「え、……そう、ですね。クロスに危険がないのであれば大丈夫でしょうか」


 嬢ちゃんが毛むくじゃらに意見を求める。視線を受けた毛むくじゃらは頷いて見せた。


「じゃ、気を付けてねクロスちゃん」


 そう言ってにゃが耳が窓を開けてくれた。


 礼を言っておくぜ。嬢ちゃんの事は任せたぞ。


 そうしておいらは外の世界に足を踏み入れた。

 今までの街とはそう変わってはいにゃい。ただ、匂いが色々混ざっているってだけだ。

 おいらは特に不快にはおもわにゃい。むしろこちらの好奇心が尻尾のように揺れちまうぜ。


 地面の方は人間に似た奴らが歩いているから屋根を伝って歩いていく。狭い路地とかも歩いては見たいが、とりあえず安全確認が第一だ。

 嬢ちゃんが安心してこの街を過ごせるように、やばいやつらは覚えておかにゃいと。


 そう思って歩いていた時、ふとおいらの鼻が反応した。

 ひくひくと動かしてその匂いの元の方向を見る。


 別に美味しそうにゃ匂いがしたとかではにゃい。

 どちらかと言えば嫌にゃ臭いの方向に、にゃんだかにゃつかしい匂いが混ざっている。

 にゃつかしい匂いを求めて屋根から屋根へ飛び移る。気づけば狭い路地の方にその匂いはあった。

 でかい人間二人がぎりぎりすれ違えそうにゃぐらいの広さの路地に、一部分が人間とは違う奴らが4匹。そいつらが全身を布で隠した人間らしき奴を囲んでいる。

 にゃにか喋っているけれど、おいらにはにゃにを喋っているかわからにゃい。

 いや、聞き取れはするんだけど、言葉が聞いた事がにゃいものだ。

 まぁ、恐らくあの布被った奴がピンチにゃのだということだけはわかる。


 うーん、匂いの元は多分あいつだろうし、ここは助けてやってもいいか。

 こういう時にこそ、教えてもらった魔法を発揮するところだろう。


 さて、では何の魔法を使おうかと言うはにゃしににゃるが、どんにゃ魔法を使おうか。

 攻撃すればいいのかもしれにゃいが、毛むくじゃらにかみにゃりはよく周りにも被害があるって言ってたにゃ。出来ればあの布被ってる奴には当てたくにゃいし、どうしたものか。


 そう考えてふと思い出した。

 そう言えば昔、かみにゃりにおいら震えてたにゃあの音とか、強烈な光とか。あれはにゃかにゃかの迫力にゃ。


 ……今も怖いとか、そんにゃことはにゃいぞ。


 とりあえず、あの光と音を使ってあいつらの意識を背ければいいんじゃにゃいだろうか。

 おぉ、我にゃがらいい考えだ。

 それにゃら攻撃が当たるかもとかそういう心配はいらにゃいし。


 さて、あいつらの手が出る前にやってしまおう。

 魔法を使うのには言葉が必要だそうだが、今まで嬢ちゃんや毛むくじゃらが考えたのを言っていたからにゃ。おいらが自分で考えにゃいと。


 うーん、命令する感じでって言ってた気がする。

 じゃあ、こうか?


 敵の視界を塞ぎ、音を轟かせろ。


 ……違うのか。魔法がでにゃい。ううん、もっと具体的に言えってことか。


 かみにゃりよ、敵の近くに落ち、その視界を白く染め、辺りに轟音を落とせ。


 おいらがそう言った瞬間、その言葉通りに近くにかみにゃりが落ちた。おいらの視界が真っ白ににゃって、耳がおかしくにゃりそうにゃ程音が響く。


 あ、これもう少しはにゃれた場所でやればよかった。これではあの布を被った奴を助けられにゃい。


 必死に頭を振って目を開けようとしたが、その前に身体が浮き上がった。


 にゃんだ、敵襲か!?


 おいらを掴んでいる腕から逃れようとあがいていたけれど、すぐに首根っこを捕まえられた。


 あ、これは無理。もう動けにゃい。

 おいらの身体がぷらーんと下に下がる。後ろ足が地面に引きずられて少し痛い。


 しばらくして目が開けられるようになったおいらは、視界だけでも状況を確認する。

 屋根の上にいるのには変わらにゃい。ただ、おいらが魔法を使った場所からは結構はにゃれているようだ。


「にゃにゃ」


 そんにゃ声が聞こえ、おいらの首根っこがはにゃされた。

 突然すぎておいらとしたことがせにゃかから落ちちまった。


 誰だおいらを捕まえてたのは。


 振り返れば、そこにはにゃつかしい匂いがする布があった。

 さっき助けた布を被った人間だ。

 人間らしく後ろ足で立ってたのに、今は4本の足をやねにくっつけてやがる。


 ん?つまりさっきまでおいらを口で銜えてたのか?人間にゃのに?


「マオは人間とは違うってまおさまが言ってたにゃ」


 お、おう。言葉が通じるのか?


「わかるにゃ。だってマオ、お前と一緒だ」


 そう言ってそいつはその場に腰を下ろし、頭にかぶっていた布を剥ぐ。

 そいつの顔は人間の物だったけれど、目はおいらのとおにゃじ目だ。

 頬からはおいらとおにゃじヒゲが生えていて、そして人間の耳の位置に耳がにゃい。それより高い場所においらとおにゃじ耳が生えていた。


「マオ、猫人っていうらしいにゃ。お前みたいにゃ猫に近いし、人間にも近い存在だってまおさまが言ってたにゃ」


 そう言ってそいつはおいらに鼻を近づける。

 おいら達はすんすんとお互いの匂いを嗅ぎ、挨拶を交わした。


 うん、やっぱりにゃつかしい匂いがする。にゃんでこいつからにゃつかしい匂いがするんだろう。

 むしろどこで嗅いだ匂いだ?


「お前から少しまおさまの匂いがするにゃ。まおさまにあったのか?」


 まおさまってにゃんだ?


「まおさまはまおさまにゃ。マオを育ててくれた人」


 よくわからん。人間か?


「人間、ではにゃいって言ってた。見た目は人間だったけど」


 そうにゃると人間じゃにゃい種族か。そんにゃのここに来て沢山見てるからわからにゃいぞ。


「そうか。マオ、まおさま探してるの。おまえは?」


 おいらは嬢ちゃんとこの街に来ただけ。お前はこの街に住んでるのか?


「住んでにゃい。まおさま探しててここに来た。さっきは変にゃ奴らに絡まれたけど、お前の声が聞こえて、お前がにゃにしようとしてるかわかって、逃げられた。ありがとう」


 そう言ってこいつは嬉しそうにおいらに頭をこすりつける。

 おにゃじ猫相手ににゃらいいが、おまえでかいからおいらが押しつぶされそうににゃる。


 おいこら。そんにゃにくっつくにゃ。


「マオ、お前程の知能持った猫にあったことにゃかった。少し嬉しい」


 喜んでもらえるのは嬉しいけど、大きさを考えてくれ。


「わがまま、まおさまに叱られる」


 お前、さっきからまおさまうるさいにゃ。そんにゃに大切にゃ奴にゃのか?


「うん。まおさまはマオを助けてくれる。ご飯くれる。色々教えてくれる。でも」


 そこまで言って、こいつは耳を垂れてうなだれた。


「アッシュがまおさまに怪我させた。まおさまマオを逃がしてくれた。それからどこに行ったかわからにゃい」


 うん?またしらにゃいにゃまえが出てきた。

 お前を助けてくれたのがまおさまで、そのまおさまを怪我させたのがアッシュだにゃ?


「うん。アッシュは怖い。まおさま程じゃにゃいけど強い。レヒトもリンクもアッシュにはかにゃわにゃい」


 こいつどんどんおいらの知らにゃいにゃまえ出してくるにゃ。混乱してくるからやめてくれ。


 ふと、遠くでおいらを呼ぶ声が聞こえてきた。

 この声は嬢ちゃんだ。

 悪いけど、おいらそろそろ戻らねぇと。


「そうか。残念だけど、また会えるだろうにゃ」


 そう言ってそいつは立ち上がり、また布を被った。


「まおさまに会ったら、マオが探してる事を伝えといてくれ」


 まおさまがどういう奴かはわからにゃいけど、まぁ、会えたら伝えとくにゃ。


「絶対だぞ」


 そう言ってそいつは軽快に走っていき、姿が見えにゃくにゃった。


 ねこひとって言ってたか。猫にゃのに人間の身体は便利そうだにゃ。

 案外動きやすそう、ってのもあるけれど、人間と会話が出来るのかもしれにゃいと思えばおいらも少し人間ににゃりたいと思える。

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