タイトルが長いとチープな内容の本だと言われがちですが、昔から学術系の本は中身を説明するためにタイトル長いけど、中身の質は高いものが多いですよ、というお話。
今回のお話はタイトルについて、私が感じる思うところを文字にしてみようと思っています。
さて、近年のラノベタイトルが長くなり、なろうでも長いタイトルつけるのが流行ってます、これには様々な推論が立てられ議論されていますが、この手法を昔から使っているジャンルがあるんですよ、それもかなりお固いジャンルです。
そう、タイトルにも有る学術系、特に科学系(私が科学系ばかり読んでおり、目に付いているからかもしれません)の物は、「メインタイトル+副題」と言う作品が多くあるのです。
例として、私が尊敬する方の有名な作品を上げてみましょう、ちなみにこれはネットが殆ど普及してなかった1995年が初版の作品です。
「ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで」
この作品はタイトルが長い上、ホーキング博士が宇宙の始まりであるビッグバンから、大型恒星の最後であるブラックホールについて語るという中身について、タイトルではっきりとネタバレをしています。
こういった中身の見えるタイトルの手法って、ここ十年位のラノベにありがちなタイトルの付け方ですが、この作品タイトルや、その中身を「チープ」や「中身が薄い」などと考える方って、私はあまり見かけません。
極稀に反対意見を述べる方は居ましたけど、それは学術的な意味で博士の持論へ反対的意見を持っているか、かなり保守的な宗教的思想をお持ちの方くらいだったように思います。
昔から科学系の本において、こういった長いタイトルが意外と多く、読者側が長いタイトルに慣れているのもありますけど、出版社は読者に対し、中身を見なくてもその内容を理解してもらいやすく、手に取ってもらいやすい利点がありますので、結構昔からこの手法を使っています。
あれ?この説明どっかで聞いたことあるぞ?なんて思った人は私と握手、ええ、そうです、ラノベの長いタイトルについて、ネットで語られる説明とほぼ一緒です。
長いタイトルを付ける事自体は、それこそ手垢のついた手法でして、学術系だけではなく、料理や趣味などの大衆書籍でも、実によく使われている手法なんですよ。
なので、ラノベが長いタイトルの走りなのではなく、売りにくいラノベと言うジャンルを何とか売るために編集さんが色々考え、他で使われていた長いタイトルの手法に目を付け、そのまま真似たのが現代の状況ではないかと私は思っています。
これは過去にラノベが狙っていた層、つまり中高生という、あまり読書経験のない消費者が分かりやすいように、タイトルで中身を見える化し、気軽に本に触れてもらう為に出版社が採用した工夫なのでしょう。
こうした企業の考え方について、私は一定の成功があったと思いますし、タイトルだけで中身が決まるとは思っていないからこそ、私はなろう的な長いタイトルでありながら、内容はアンチ的な小説を書いたりしています。
そんな私から見ていますと、ラノベを語る方がよく上げる話題の一つについて、懐疑的な部分があります。
それはタイトルの長さが中身をチープに見せるという論拠、これについては残念ながら、首を傾げて疑問ばかりが頭に浮かびます。
彼らの言う、長いタイトルがチープに見えるという話は、長いタイトルだから中身がチープに見えるのではなく、長いタイトルのラノベは中身が無いから、タイトルがチープに見えるのだと感じているからです。
実際、先ほどのホーキング博士の著作のように、長いタイトルだろうと作品の中身があれば、私はタイトルをまったくチープとは感じませんし、どんな内容なのだろうと興味をそそられます。
料理本なんかにありがちな長いタイトルだって、自分が作りたい、作ってみたいと思う料理について触れていれば、ついつい手にとって中身を読んでしまいますから、これはチープなのではなく、親しみやすさであると感じますね。
ですが作品の中身がない場合は、逆にタイトルで読まずに中身を想像出来てしまう、その結果タイトルがチープに見えてしまうのでしょう。
そういった点を踏まえて問題を考えると、この長いタイトルのラノベが提示する現状と問題点が、はっきり見えてくるようにも感じます。
今まで語った様に、長いタイトル自体の効果は素晴らしいものであり、古くから多くの書籍タイトルに使われた手垢のついた手法ですが、ラノベ化自体が歴史の浅いジャンルですので、この手法が使われたタイトルが登場した当時中高生の読者には、ユニークで目新しい手法に見えたのかもしれません。
そうした手法が新しい読者層を発掘し、上手く行ったと言うことで、出版社はより多くの読者を集めるために、半ば特効薬ように長いタイトルが使い、需要に応えるために多くの作品を投入し、より多くの長いタイトル作品が大量に市場に出回ります。
最初は物珍しかった手法でも、短期に大量に似たようなタイトルが増えたことで、読者側は既視感を感じ始め、近年ラノベのジャンルはなろうなどのweb小説の台頭や、これまでの粗製乱造による供給過剰を受け、オタクの作品嗜好は一作品を深く読み解くスタイルから、よりライトでファストな大量消費へと変化したのではないでしょうか?
こうした時代の流れで問題を考えると、長いタイトルがラノベブームを生み出し、出版社は読者側の旺盛なニーズに粗製乱造で応え、結果としてラノベジャンルでは「長いタイトル=チープ」という図式が成り立つようになった、そう私は捉えています。
時々、長いタイトルはなろうが発端とか、ラノベが切り開いたという論法で語る方が居ますが、少なくともそのような事実は無いし、そのような言動が少しばかり痛々しいと感じてしますので、できればもう少し他の本のタイトルにも目を向けて、色々な本に触れて欲しいと思いまして今作を書いてみました。
そうした視線で持って図書館や本屋さんに行って、様々なタイトルを見ることで、貴方の知らない新しい本や、見たことがない世界に出会う素敵な巡り合わせがあるかもしれません。
そうして出会えた本が、貴方の読書ライフに彩りを添えることを私は願っています、ここまで読んでくださってありがとうございました。