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ふ、普段、休日は転生とかしてますっ!  作者: ゴーヤちゃん
1章  強さだけでは飯は食えない
7/8

美味しい話には裏があり、可愛いモノには毒がある

 あの日以降日本で何も変化のない日々をノンビリと過ごしているが、今のオレはいつもと違って希望に満ち満ちていた。ようやく、オレにも人としての生活が!! そう思っただけで自然と笑顔が溢れる。運動会に向けたトレーニングに安心して励もう、そう思うといつもの着信音に呼び止められた。



 ──天下一運動会は人間界から99人ずつ天界と魔界がスカウトし、それに天界と魔界を代表する指揮官1人を加えた100vs100で行われる競技大会だ。すなわちあらゆる競技を通して、どちらの世界がより優れた統治を人間界へ行えるかを見極める場なのである。

 また、開催期間中人間界の時間は特例で停止するので両選手はそれぞれが所属する世界で生活をする。衣食住の全てを管理する為、競技前に行われる健康診断でも勝敗を左右させるポイントがつくのだ。


「おぉ、すっげぇ……」


 天界からの呼び出しを受けたオレは運動会の間生活する『天界学園』と呼称された場所の下見に訪れていた。清潔感をそのまま形にしたような真っ白な建物は20メートルはあるであろう巨大で立派な門に守られ、庭園の澄み切った空気からは生命の息吹さえ感じられた。まさしく天国と言うのに相応しい造りであろう。


「古野さんにはここで他の参加者の方々と共に生活をして頂きます。

 あぁ、モチロン私も教育係兼学園長兼指揮官としてご一緒させて頂きます。よろしくお願いします、古野さん。」


「い、いえ、こちらこそ」


 この人が我がチームの大将“ロノワール”さんだ。ガッシリとした体に縫い目のない羽衣を羽織り、6枚の大きな立派な翼を持ち、頭に浮かぶ黄金色の天輪を見れば一目で天使だとわかる出で立ちだ。普段は神様の付き人をしているすごい人らしく、それだけ今回の闘いに込める天界の強い思いが感じられる。

 しばらく施設内の案内があったが、その間オレは「おぉ」「すげぇ」としか言っておらず、気が付けばあっという間に説明は終わった。


「質問がないようなので、これにてこの学園の案内を終わります。あとは1ヶ月後に入学試験を兼ねた面接が行われますが……まぁ古野さんならば関係のない話ですがね」


「……へ? メンセツ?」


「はい、意気込みや能力、そしてこれまでの実績を加味して応募者の中から99人が選ばれるというモノです

 倍率は万を超えますがただ古野さんの場合推薦みたいなモノなので気楽にやって頂ければいいかと」


「ソウナンデスカ、ガンバリマス」


 過去、メンセツという敵から勝ちをもぎ取った事のないオレは静かに怯えるのだった。


「では1ヶ月後にまたお会いしましょう!」


 ロノワールさんはオレが人間界へのゲートをくぐるまで笑顔で手を振ってくれていたので、オレも最後の最後にぶち込まれた爆弾を頭に抱えたまま手を振り替えした。


*****************


 私が古野様への“気持ち”を書き終わり、それらを自宅へお届けしようと玄関へと向かうと大量の手紙がポストへと投函され、雪崩が起きていたためしかたなくそれらに目を通す事にした。大半は父親からの「たまには実家に顔を出して下さい、お願いします、何でもしますから」といった趣旨のモノであったがその中に1通見慣れない黒い封筒があるのに気が付いた。外装を荒っぽく破り、内容を確認する。


●●●様へ──


 近いうちに天下一運動会が開催予定です。どうか我々に貴方様のお力をお貸し下さい。



                    ──魔界一同


 しばらくそれを見つめた後、ゴミ箱に入れやすいサイズまで破いて捨てた。

 こんな事の前に日課であるラブレターを1秒でも早く彼の元へ届けねばっ、それがオフィシャルファンクラブ会長としての彼女の務めだ。


「行ってきます!」


 彼女は部屋のあちこちにいる大量の()()()にそう別れを告げると、名残惜しそうに愛しの彼が待つマンションへと向かうのだった。


*****************


 ゲートから帰ったオレはすっかり重くなってしまった頭が重力に敗北し、そのまま眠りへとついた。しかし、すぐに郵便受けに手紙を入れる音がして目が覚めた。そういえば、この世界にまだ不安要素があったな。そう思い出したオレはゆっくりと重い体に鞭を打ち、玄関へと足を運んだ。


 ドアを開くと待ってましたと言わんばかりに玄関前に凛と立つ制服姿の美少女と目が合う。

 少女は清潔感溢れる黒髪にキチンと整えられた衣服、そこからスラリと伸びた手足、それら全てで可憐さや美しさを体現していた。

 オレの前に立つスーパーアイドル、黒羽乃環はペコリと可愛らしく頭を下げると、とびっきりの笑顔で話し始めた。


「突然の訪問すいません!

 あ、あの先日痴漢されている所を助けて頂いた黒羽と申します。本当に、本当にありがとうございました!!

 古野さん? で合ってますよね??」


「えっ、あっ、はい、どうも」


 予想外の来客に驚きを隠せない。


「実は私アイドルをしていて、マネージャーさんからは絶対に1人で行くなと言われていたんですけども……

 どうしても古野さんにお礼を言いたくて休みを見つけて来ちゃいました!

 ……ご迷惑でしたか??」


「い、いえ、とんでもございませぬ!!

 む、むしろこちらこそありがとうございます!」


「え??

 よく分かりませんけど、ありがとうございます! でいいんですかね?

 ふふっ、それにしても古野さんってとっても優しくて面白い方なんですね」


 彼女はそうキラキラとした笑顔で話す。

 やっべ、超可愛いんですけど。

 オレが食費をいかにして削ってライブへ行こうかという算段を立てていると目の前に差し出された綺麗な彼女の手に可愛いらしい小包があるのに気が付いた。


「それでですね、そのお礼といっては何ですがクッキーをですね、焼いてきたのでもし宜しければ食べて頂きたいなぁ……と

……こういう事初めてなので上手に出来なかったんですけど、受け取って下さいますか?」


「は、はひっ!! よろこんでっっ!!

 たっ大切にたべましゅねっ!!!」


 手渡された際に彼女の手が触れ、オレの胸の動悸は跳ね上がった。ただでさえ、女性経験がないのにそれが美少女とあらば尚更である。

 そしてオレはそのみ興奮を抑えきれずに、ふふっと照れて笑う彼女へ不必要な発言をかました。



「そ、そういえば! 黒羽さんは天下一運動会には出場なさるのでしょうか?

 そ、その、あれだけお、お強いなら……お誘いが来てるのかなぁーと思い……ま……し……て?」



 彼女は笑顔だった。

 だが、只ならぬ殺気に気が付けない程にオレは色ぼけしていなかった。瞬間、オレは思い出す。目の前にいるのは天使などではなく──堕天使なのだと。


「あーあ……せっかくこのキャラで行こうと思ったのに……

 最上級の()()()()()マジックアイテムが効かない人間なんて前代未聞ですよ

 まぁ、こうなる事も想定はしてましたけど」


 先程までの笑顔が嘘のように、はあーっとため息を吐く堕天使は面倒くさそうに手を差し出すと


「改めまして、古野さん

 よろしくお願いします、黒羽乃環です

 イベントの間は同じ()()()()()として一緒に楽しくやりましょう」


 心底楽しそうにニンマリと笑った。

お読み下さりありがとうございます\(^o^)/

ブックマーク凄く嬉しかったので、テンションが上がって初めて短編も書いてみました!

明日投稿予定なので宜しければそちらもチェックして下さいm(_ _)m

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