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愛貫く

作者: セロリア
掲載日:2017/05/07

1「ねえ?」


2「ん?」


1「不妊治療辞めちゃおうかなあ・・」


2「・・」


1「うふふねー、何とか言いなさいよーへへへへ・・はは・・」


2「辞めて良いよ」


1「え・・」


2「何?」


1「いや・・やけにあっさりだなって」


2「高いし、辛いし、惨めだし、ってよくぼやいてるじゃん」


1「うん、・・でも・・」


2「大丈夫、神様がきっと授けてくれるよ、毎日しよう?」


1「大丈夫?疲れてるじゃん?仕事大変でしょう?」


2「うん、まあ・・でも・・早く子供見たいから・・」


1「・・うん・・」 肩を寄せる。


2「頑張ろう」


1「うん」 病院の待合室でキス。






翌朝。



1「行ってきます」


2「行ってらっしゃあい」


共働きだが夫がいつも早い。




会社。



1「おはようござあす」歩きながら挨拶。


何人か『おはやあす』


3「先輩」可愛い女性。


1「ん?おはよう、何?」


3「ここんとこ、元気ないですね?大丈夫ですか?」


1「ああ、ちょっとね、でも、仕事とは無関係だし、大丈夫大丈夫」


3「仕事とは無関係って・・それって、ご家庭の?」


1「う、うん、まあ・・」


3「私で良かったら、相談乗ります、これラインです」メモを机に。


1「ちょ⁉まずいって⁉」返そうとしたが、既に離れ、力こぶを見せ、頷く後輩。


1「参ったな・・」口ではそう言いながら、ポケットにしまった。




退社時間。



電車の中、ラインを送った。


なあなあ、の世間話。



その後、悩みの話になった。


誰にも言わない約束で、奥さんの不妊を話した。


深刻な風に、大変ですね、と返信が来た。


目が熱く、顎に力が入った。



その後、何度も相談し合う仲に。



駅を5つ過ぎ、バーで2人で語る。


後輩が酔ってしまった。



ホテルを探す。



今日は平日だ、簡単に空き部屋が見つかった。


後輩はだらしなく、服も暑いと脱ぎ始めた。



1「駄目だって‼ちょ⁉〈ギシ〉」ベッドに押し倒された。


3「先輩ー、わたひならー、元気元気な赤ちゃん産めますよーへへへへひっぐ、ふはあ、どうしまふ?赤ちゃん欲しいんでひょう?ひっぐ」


1「そ、それは・・でも・・」


3「大丈夫れす、奥さんとは別れて、わらしと結婚すればあ、ひっぐ、良いんれすからあ、ひっぐ、さあ、先輩も脱いでくらはい?ひっぐ、あー、ほらあ!〈スリスリ〉これはなんれすか?〈スリスリ〉そんなにしたいなら、素直に言えばいいのに~」


1「(そうだよな・・あいつとは別れてー)」


その瞬間。


〈ビシュン〉


1年前。


2「私達の赤ちゃんどんな子かな⁉どんな大人になるかなあ⁉」


1「気が早ーよ、まだ妊娠してないだろ?」


2「いいの!いーっだ!、うふふ、早く妊娠したいなあ、早く、あなたとの可愛い子供に会いたいなあ」


1「ああ、それは俺も思う」


2「本当~に~?」


1「な、なんだよ、マジだって!」


2「んふふ、早く親になりたいね!」









2「不妊治療、辞めようかなあ・・」



1の顔を見ずに、下を向き、肩を震わせながらー。



〈ビシュン〉



3「こんなにおっきくしちゃってえ、先輩の、す、け、べ♥」


1「・・俺・・帰る」


起き上がる。


3「え・・」


1「お前に魅力がなかった訳じゃない」鞄を取る。


3「じゃ、じゃあ、何で⁉」


1「俺は、あいつとの子供が欲しいんだって、今気づいた、いや、気づいていた事に気づいた、だから・・ありがとう〈ガチャン、バタム〉


3「あーあ、惜しいなあ、外したかあ、ありがとうだって、ふふ、あーあ、次かあ、次々ーっと」


窓の夜景を見る。


3「いいなあ、あんな男、あーあ、いいなあ、あーあ、いいなあ」


ふて寝した。




その後も、頑張ったが、結局、子供は出来なかった。




深夜、家の中、ノンアルコールビール、つまみ。



1「大丈夫、気にしないよ」


2「別れる?」


1「はあ?」


2「本当は私なんか捨てて、新しい若い女と違う人生生きたいって思った事あるでしょ‼」


1「ない」 嘘だった。


2「嘘‼絶対嘘‼嘘つき‼嘘つきい‼嘘つき‼嘘つき‼嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つきいいいい‼‼ぁああぁああぁぁ・・」


1「・・んぐ、ずび、はあ、ひっぐ、んん、な、ないって、絶対ない、ないよ、ない・・よ」


2「ううウウ・・うあああああぁあ、あああぁぁ、うわああぁぁん」


一緒に泣いた。



抱き合いながら。



顔を真っ赤にしながら。







1週間後、二人で児童養護施設に到着した。



一人の女の子が目に止まった。



普通の女の子。



不細工でも、美人でもない。



だが、どこかー。



自分達と似ていた。



何処が?



そう訊かれても、答えはなかった。



勘。



一目見た瞬間に、この子だ、そう思った。



まだ赤ん坊のこの娘を。



1「あの・・この子供は・・」


スタッフ「その赤ちゃんは、昨日ここへ来たんですよ」


2「・・」抱き上げた。


1「あ!おい!?」


スタッフ「良いんです、その子・・いとおしいですか?」


娘「あ、あ、んぶぶ、あーうー」


2「・・この子・・可愛い・・」


1、スタッフは目を合わせ、また2を見る。


2「おーよしよし、良い子でしゅねー、ふふふふ」


スタッフ「どうしますか?」


2「あなた・・私・・この子が良い・・」


1「・・」 反対だった。


小さな子供程、金、手間、騒音、殺菌、夜泣き、色んな問題が出てくる。


がー。



1「今のアパートじゃ駄目だ、田舎の一軒家を借りないと、仕事も辞めなきゃ、給料安くなるぞ?」


2「それで良い」


1「分かった」


スタッフ「それでは、住所、仕事先が決まり次第連絡を下さい、ただし、審査が厳しい事、早い者が居たら、その方にその子は行く事になります、予めご了承下さい」


2「待っててね、必ず迎えに来るからね?」


名残惜しむ2。


娘「うーあー、ぶぶ」


赤ん坊を引き取る者など、今の時代、そう居る者ではなく、1、2が迎えの連絡をした時、その子はまだ施設に居た。




時は流れ、娘の反抗期。



中学、高校と悪い男達とつるむように。



娘「離せよ!」



1「駄目だ!帰るぞ!」



娘「父親ぶんな!ろくに家にも帰って来ない癖によ!」


1「仕事なんだ、仕方ないだろ!?」


娘「出たよ、何でも仕事仕事ってそればっか!あたしの事何にも分かってない癖に!」


1「・・じゃあ、話してみろ!」


娘「え・・」


1「聞くから!ほら!」


娘「そ、そんな急に・・出て来る訳ねーだろーが!糞じじい!」


1「じゃあ、出て来たら聞いてやる、ほら帰るぞ!」


娘「聞いてやる?何その上から!むっかつく!」


1「分かった、分かった、あー、お嬢様、聞かせて頂けたら、本望でございます」


娘の後ろ襟を掴み、引きずりながら、会話。


娘「よおし!まずはおんぶしろ!」


1「はいはい」すっと座り、背中を向ける。


娘「は?はあ?じょ、冗談だし!真に受ける普通?馬鹿じゃねーの?エロじじい!」


1「娘に興奮なんかするか!いいから早よ、乗れ!黙って座ってんの恥ずかしいんだぞ!」


娘「だ、だから~、冗談だってば!いいよもー、早く帰ろ」


1「何だよ、本気で冗談かよ?」立ち上がる。


娘「あはは、触れなかったねー」


1「んな事ばっか考えてんな!エロガキが!勉強しろ、勉強!」


娘「勉強したって・・良い事なんか何にもないじゃん、普通に、恋愛して、結婚して、子供作って、普通に死んでいくんでしょ?あー、退屈な人生だなあ、あーあ、嫌になるわー死にたいわー〈パアアン!!〉 ビンタ。


娘「・・・・え・・」


1「二度と・・二度とそんな事言うなあ!」 泣いていた。


娘「は・・え?・・」


1「・・帰るぞ」


娘「あ・・はい・・」 本気の類いの怒りだと感じていた。



だが、怒りだけ?



いやー、もっと。


もっと相応しい感情の名前がー・・。



名前が、出て来なかった。







時は流れ、二十歳の誕生日。



祝いの翌日、深夜、話があると娘を呼び出した。



児童養護施設の書類をダイニングテーブルの上に置いた。



娘はあっけにとられ、口が開いていた。



1と2は静かに目の前に。



娘は、暫く書類に目を通すと。



娘「これ、必要なの?」 書類をヒラヒラ。


1、2は目を合わせる。


娘「要らないなら捨てるよ?」席を立ち、歩く。



書斎。



そこに置かれたシュレッダー。



1「ちょ、ちょっと、待て!いいのか?本当の親の事が書かれているだろう!?」


娘「知らない!知らない!知らない!〈ピ、ジジジガーー〉」



全て、裂いてしまった。



呆然とその様子を見る1と2。



娘「私の両親はあなた方だけです」


くるっと向き、部屋を出た。


娘「おやすみなさい」 側を横切る。


2「黙ってて、ごめんなさい!」


ピタリと動きが止まる。



1「俺からも謝る、すまなかった」頭を下げる。



娘「止めてよ!」


向き直る。



娘は泣いていた。



娘「どうしてそんな事言うの!?私は娘じゃないの?他人の子供だから!?本当は・・本当は私と喧嘩した時、お前なんか引き取るんじゃなかったって思ってたんああぁああ!!〈パアアン!!〉 ビンタ。



2「そんな訳・・そ・・んな訳!ないでしょう‼馬鹿!馬鹿!〈パアン!〉馬鹿!〈パアン!〉馬鹿!〈パアン〉馬鹿・・〈ペチ〉馬鹿・・〈ペチ〉うう・あなたが私達の元に来てくれて、どれだけ・・どれだけ・・楽しかったと思ってんのう・・〈ペチ〉馬鹿あ・・馬鹿馬鹿あ・・馬鹿・・うあああぁぁ」


娘「・・めんさ・・めん・さ・・い・・」 抱き合いながら泣く2人を。


1「ひっぐ、ひっぐ」 見ながら1も泣いていた。







時は過ぎ。



孫が出来た。



そこから、先は。



報告しなくても、いいだろう。



どちらかが先に死に。



どちらかが追悼する。



しかし、不安はない。



死後も会える。



そう信じられるから。



End

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