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サヨナラ、ヴィーナス。  作者: meluco.
7/12

空中ブランコ











まるで透明の水の中に迷い込んだ一匹の赤い金魚のようだと、彼はある日私に言った。





「私が金魚なら、祐也は夜空ね。」



「どうして?」



「寂しい夜も、眠れない夜も、いつも私の傍に居て見守ってくれる。」





私たちは学年が違うため、学校の近くの公園でよく寄り道をして夜まで一緒にいた。





気が付いたらこんなにも近い存在に彼はいた。





休み時間にすれ違う時、部活中、

よく目が合っては逸らし、また目を合わせお互いに微笑む

甘いキャンディを舌先でたっぷりと遊ぶような感覚に少し似ていて

そんないかにもな青春を私と彼は味わっていた。







どちらかが「好きだ。」と言葉にしなくても

お互いに同じ気持ちなんだとどこかで通じ合っていて

それが居心地が良いと私は感じていた。





思いを口に出せば泡のように自然と消えていってしまう気がして

怖くて私は言うことができなかった。










――――彼は、どう思っていたのだろう。







公園の時計の針はぴったりと10時を指し

気付けばあたりは真っ暗になっていた。



「ごめん、寝てたんだね私..」






ゆっくりと彼の肩から頭を起こしベンチから立とうとした。






「ぐっすり寝てたからなんだか可愛くて笑っちゃった。」





そう言うと、ふんわりと笑いながら夜空を仰いだ。













どうして祐也はいつも何も言わないんだろう。








言ってほしい言葉はたくさんある


だけど、それと同じくらい言えない言葉もたくさんあった







「帰ろうか。」









私は軽く頷いた。






足元がふわふわとしていた

私は彼の左袖をいつもより強く掴んだ。










時計の針は動いていなかった。

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