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LIGHT:PARADOX  作者: トーミャ☆セイナ
8/8

#7、過去、そして決意

天川君あまがわくんはスゥーと音を立てずに、コーヒー(砂糖3個入り)に口をつける。

「それで、妹とヒーローに何の関係があるんだ?」

「まぁ、簡単に言えば私の守るものって感じかな」

そう、守るものだった。未だ守れていない守るもの。それにしても、こんな話を人にするのは初めてかもしれない。どうしてか、この天川君とは初めてあった気がしない。

「お前の守るもの……か」

「じゃあ、話すわ。私がヒーローになろうと思ったキッカケ、私の運命が変わったキッカケを………そう、あれは3年前のこと」



■■■

「ホラっ明日葉あすは〜!!学校行くわよ」

私は丸い塊状態になっている布団を引き剥がす。すると、中からはとても可憐な横顔をした桃色のボブヘアーの少女が1人。丸まった状態で入っていた。

「ぁぅぅ……」

まさに蚊のようなうめき声を上げると続けざまに

「寒い、寒すぎる……お姉ちゃん。私、死んじゃうから……」

「大丈夫よ。人は氷点下50度までギリギリ生きられるから、早く起きて」

私は妹を無理矢理抱き抱えて、氷のように冷たいフローリングに立たせる。

「うぅ……冗談抜きで寒いよ……」

「ホラホラッ早くパジャマ脱いで」

またも無理矢理、パジャマを脱がせる。

「こんな中下着にするなんて、お姉ちゃんドS」

「そんな言葉どこで覚えたのよ……」

毎日毎日こんなことをしている訳だが、正直、バタバタした朝を迎え無いと1日が始まった気がしない。

小学校の制服から首を通した明日葉が

「お姉ちゃん、今日の朝ご飯は何?」

と聞いてくる。

これも毎日のルーティーンだ。



朝食の目玉焼きと白米、そして味噌汁を美味しく頂く。

「お姉ちゃん、今日も美味しいよ」

「そう、良かった」

私は味噌汁を口に流し込み凍えた身体を溶かす。又、妹の方はというと目玉焼きの眼球に値する黄色い部分を箸で割り、そこに醤油を流し込んでいた。このやり方なら、醤油が零れないらしい……

「ごちそうさま!!」

明日葉が先に食べ終わり、皿とお椀を重ね、両手でしっかりと持ってシンクに持っていく。

「食べ終わったらすぐに歯を磨きなよ」

「はーい」

台所から姿無き声が聞こえる。



12月の朝日を東に浴びて、私たちは中学校、そしてその途中にある明日葉の小学校へ手を繋ぎ、横並びに歩いていく。コツコツとローファーの音が心地よいリズムを生み出し、心を楽しませて、弾ませる。それを邪魔するかのように、ヒューッと冷気を纏った風が吹く。その度、私の顔がグッ強ばる。それに合わせて、明日葉の手袋越しの右手にもギュッと力が入る。

「寒い?」

「平気だよ。お姉ちゃんの手、凄い暖かいから」

「それは良かったわ」

そんな姉妹ならではの会話を投げあっていると、向こうから「「おーい明日葉ちゃん!!」」という元気な声が2つ。赤色のランドセルがピョンピョンと大きく跳ねていた。

「あ、チッちゃんとアッちゃんだ。おーい!!お姉ちゃん、行ってくるね」

「う、うん」

勢いよくもう一つの赤色が、仲間を見つけたかのように走っていく。

冷たい風が針のように刺さる。

「うっ今日、こんなに寒かったけ」

行き場を無くした左手に残る温もりを感じながらそう思うのだった。



■■■

「なんだかほのぼのとする姉妹のいい話にしか聞こえないのだが……」


「えぇそうね。私は素直になれない性格で友達を作るのが苦手。明日葉は友達付き合いがいい。私は勉強が出来て、明日葉は少し頭が劣ってる。そういう2人で苦手なところを補える。そんな姉妹の物語よ」


「お前って昔からそうだったんだな」

「なんか言ったかしら?」

「い、いぇ別に何でもないです。しかし、これでは終わらないんだろ」

急に真剣な顔を見せる。

「えぇ、この数日後、私は運命の出会いを知ったのよ。」

「運命の出会い……それがヒーローになるキッカケになるのか?」

私は無言で首を縦に振り、後にこう続けた。

「日常はいつまでも続くとは限らない、日常はいつの日かその姿を変え、牙を向く、それを人は運命と呼んで崇め奉る」

「………」

天川君が黙り込む。

「それじゃあ、私の運命の日の話をするわ。あの放課後の出来事を……」



■■■

「え?帰った?」

「はい。いつもは私たちと遊ぶんですけど、今日は宿題が沢山出て、さっき急いで……ね?チッちゃん?」

明日葉がアッちゃんと呼んでいる少女がジャングルジムの上でぶら下がっている少女に語りかける。

「おう、目にも止まらぬ速さで駆け抜けていったぜ」

「なんだ、そうなのか……今日は公園で遊ぶからって言うから迎えに来たのに……ありがとうね。じゃあ、これからも明日葉のことよろしくね?」

「はい」

「おう」

あの娘たちの話に寄れば明日葉が公園を去ったのは約20分前、となれば今頃もう家に着いている頃だ。今日はコロッケでも、買って家に帰ろう。

枯れた木々を横目に、冬の道を歩く。

夕方になり、朝とはまた違った凍風いてかぜ曇天どんてんの下で吹き荒ぶ。

「雨、降りそうね」



「え?コロッケ売り切れてるんですか?」

「そうなのよ。ごめんなさいね。いつも買ってもらってるのに、さっき目つきの悪い男の子が妹の為だーって買いあさってね……」

「そうなんですか……」

他の人が買いに来るって言うのが分からないのだろうか……

ムカムカとした気持ちが頭の中に湧き上がる。

「はぁ……無駄足だったみたいね…」

揚げ物屋から1歩後ろに後退する。

すると、立ち話を繰り広げていたおばさんが、こんな事を口にした。

「さっき遠目に見たんだけど、向こうで火事があったらしいわね」

「えー大丈夫なのかしら?」

火事か……そういえばさっきからサイレンが夕方の街に響き渡っていた。約20分前からの事だ。

物騒な事もあるもんだなぁ。

早めに帰ろう。



近づく

近づく

近づく

家に近づくにつれ大きくなる消防車のサイレン。それに共鳴するかのように心臓がバクンバクンと大きく波打つ。その鼓動を急かすかのように、空からの悪戯な寒気が私の体を極寒な不安へと叩き込む。

まさか…そんな訳ないよね?

考えすぎだよね?

誰が返事するわけでもない。いわば自己暗示を永遠に繰り返し、唱えていた。


しかし、世界は余りにも残酷だった。


点滅するライト。

騒ぐ人混み。

カシャカシャと音をたてるスマートフォン、そこから拡散されるであろう写真はきっとそのレンズの向こう側の……

燃え盛る私の家。なのだろう。

その場に崩れ落ちる。訳が分からなかった。

中学トップの頭がうまく機能しない。

全国トップの足がうまく動かない。

ただ、目の前の霞んだ紅い風景が私を照らしていた。

「おい、まだ家の中に女の子がいるらしいぞ」

「マジかよ。こりゃ、いいネタになるな」

野次馬の台詞を聞いて、我に帰る。

「そ、そうだ……明日葉!!」

震える足を前へ前へと踏み出す。

「おい!!嬢ちゃん危ねぇぞ!!」

四十半ばの男が1人私の腕をグッと掴む。

「離して……!!」

私はそれを力ずくで振り払って、自慢のスピードを少しずつ上げ、駆け抜けていく。

「いや、死なないで……!!」

「おい!その娘を止めろ!!」

1人の消防隊員が放水の音に負けないように声を上げる。

「おい!君、止まれ!!」

それをサインとするかのように、一斉に他の隊員が私を止めに走ってくる。当然自分が社会的に悪いことをしている事ぐらい分かっている。でも、それでも、あの子は私の大事な1人の妹だから。社会的とか、理屈とか、そういう事じゃなくて、私が今走らなきゃ、私が今やらなきゃ……


瞬間、私の足が輝かしく光る。

私を捕まえようとしていた隊員の腕が、私から面白いように遠ざかっていく。

早く、早く!!

「ーーもっと早く!!」

バチンと何かが弾けるような感覚。世界が驚くほど遅く見える。放水の水飛沫も、野次馬の喧しく動く口も、燃え盛る炎も……その全てが遅く、まさに遅く見える。私はその情景の中で、火炎の中へと勢い良く飛び込んだ。それは、いつの日か見た洋画の様に綺麗ではなかった。これが私の精一杯である。

火の粉を纏い、黒煙を肺いっぱいに吸い込む。

「ケホケホッ……明日葉ー明日葉!!」

応答は無い。こういう状況をきっと絶望と呼ばざるおえないのだろうか?いや、そんな事はあってはならない。ならないのだが、紅い世界にたった1人、自分の無力さに涙が出そうになる。

すると途端、この場において多少の光が…

「……お姉ちゃん!!」

微かではあるが、私の耳に聞きなれた声が届く。それは毎朝のように私をイライラさせ、なおかつ、私が生きていく糧になる。そんな明るい声色こわいろだった。

「明日葉ー!!」

焼ける道を急いで歩いていく。

熱い、外界とは真逆の熱さが体を表面からじっくりと焼く。周りを見渡す。

「一体どこにいるの……明日葉……」

前を見れば炎、後ろを見ても、右も左も、全て同じ風景に見えてくる。でも、とにかく探し回らなければ、いつかは見つかるそう信じて、明日葉がいそうな場所。いつも、家に帰れば何をしていた?どこにいた?煙で回らない頭で思考を巡らせる。

熱風が体を覆う。

「あ、い、今行くよ!!明日葉!!」

いつも明日葉が帰ってからやることといえば……!!

私は今にも崩れてしまいそうな階段を、慎重にかつ素早く、大胆に駆け登る。

「明日葉!!」

私は、明日葉の部屋に通づるドアを蹴破り、その中に飛び込む。そこには、瞳に雫を作っている明日葉の姿があった。

「お……お姉ちゃん!!」

抱き合う2人。そう、いつも明日葉がすること、家に帰れば直ぐに昼寝だったじゃないか。

「明日葉、早くここから出るわよ」

「うん」

登校時の様に手をつなぐ。


しかし、神は私達の思っている以上にサディストだった。一瞬にして私達の体は宙を舞う。何が起きたのか理解するまでに約0.3秒、理解した思考の弾き出した回答は『死』だった。朝冷たかった足元のフローリングは灼熱のまま崩れ落ちる。

「きゃああぁぁぁ!」

叫びを上げる明日葉。

意味があるかわからないが、私は明日葉を上にして、抱き抱えた。

『能力開放!!』

その声を聞いた次の瞬間……私の腹部を掴まれる感覚。

「だ、誰?」

スゥーと消えるように私は気を失った。


「う、うん……ここは?」

「目が覚めたか?」

私の目の前には赤いフードを被った1人の男性がいた。その顔はどこか悲しげで、寂しげで、年上なのにこの世界を知らない無垢な子供の様なそうな瞳を持った。外見から見て優しい人だと分かる。そんな男性だった。

それよりも私が気になったのは、私の顔に付いている両目は天を見上げているのだ。

そう、私の頭は男性の膝の上に乗っていたのだ。

「あ、あわわ……す、すみません!!」

勢いよく頭を上げる私。そのまま私の前額部と男性の前額部がゴツンと正面衝突を起こす。

「痛っ!!……す、すみません……」

「あぁ……脳が震える……」

私は今度は気を付けてゆっくりと頭を上げながら、立ち上がる。

「い、いやぁ……大丈夫だ。それより、火傷とかしてないか?」

「はい。大丈夫です。あ、明日葉は?」

「明日葉?あぁ……あの女の子か……あの娘なら救急隊員に運ばれていったぞ」

「は、運ばれた?どこの病院ですか?」

男性に詰め寄る。

「まぁ落ち着け、命は救えた。一旦はその幸福を噛み締めろよ」

「救えたって、もしかして貴方が……」

「あぁ、まぁそういう事になるな」

気づくと、ポロポロと目から光が零れていた。きっとこの涙は自分が助かってよかったというよりも、自分を助けてくれる人がいることに対する、感動なのだろう。

「日常って何なんだろうな?」

突然、男性が口を開く。その目はフードに隠れてよく見えなかった。

「……日常ですか?」

「俺は、日常って物は酷く脆い物だと感じる。日常はいつ壊れるか分からない。日常はいつまでも続くとは限らない、日常はいつの日かその姿を変え、牙を向く、それを人は運命と呼んで崇め奉る」

「その言葉は?」

「え?あぁこれか?これはとある日常を悲嘆し続けた俺の知ってる最も『愚かな男』の言葉だよ」

「愚かな男……」

「きっとその人もその人なりの日常があったのではないでしょうか?」

「……!?」

男性は驚きの顔を見せる。

そしてその後、クスッと笑い、ニコッと笑みを浮かべる。

「面白い事を言う。確かにそうかもしれないな。だが、もう確認する事は出来ないな。なんせ、そいつは死んだのだから……」

「なんか、すみません。不謹慎でしたよね……」

「いや、いいのさ。それより、早く妹さんの所へ、俺もそろそろ、ここを離れなくちゃいけないからな。病院へはすぐ近くだ。路地を出て右に曲がれば見えてくるはず……」

すると男性はそそくさと駆け出していく。まるで誰かに追われているように……

「あ、あの……お名前を聞いてもよろしいですか?」

「名前か……」

少し、迷いの顔を顕にした後にこう言った。

「……カゲジマだ」

「カゲジマ……」



■■■

不知火彩明しらぬいいろあの過去の話は俺の思っている以上に想像を絶していた。彼女の妹、明日葉のその後の行方は、死んではいない。とだけしか教えてくれなかった。それにしても、彼女のあのヒーローになった理由が憧れだとは思はなかった。しかしながら、

「アイツとは昔からの知り合いの様な気がするんだよなぁ……」

「なんか言った?お兄ちゃん?」

「いや、別に……それより、今日は悪かったな、また兄ちゃんが夕食作れなくて…」

「いいよいいよ、それより今日はどしたの?」

「まぁちょっとな……それより今日はもう遅いから、はよ寝ろ」

「うぃー」

全く、可愛いヤツだ。だが、今日の不知火彩明の話を聞いて俺だって何も思わなかったわけじゃない。もしも、妹……天川愛あまがわあいが危機にさらされた時、俺は助けられるのだろうか?守ってやれるのだろうか?

「このままじゃダメだよな……」

いつまでも加害者ぶってても何も始まらないな。

「そろそろ、始めるか……」


田中「お前ら!!!!こっからが本編じゃー!!」

不知火「うぃー」

田中「今回の振り返り!!幼女不知火さんprpr……」

不知火「よく聞き取れませんでした。もう1度おっしゃって下さい。(拳を挙げて)」

田中「今言ったら殺される気がするのは、気のせい?」

不知火「確かに幼女回だったのは認めるわ……」

田中「まぁ、しゃあないよな。作者の趣味だからな」

作者トーミャ「おい、辞めろそれ以上は」

作者セイナ「それ以上言うとトーミャが泣くぞ……そして、出番が減るぞ」

不知火・田中「すみませんでした!!」

作者(一同)「それじゃあ、もうネタも無いし、チャッチャッと次回予告よろしく」

不知火・田中「次回!!決断、そして始動」

作者トーミャ「それと不知火、今度出番ないから」

不知火「えっ?ちょっま……」

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