天翔眼鏡閃(あまかけるめがねのひらめき)~眼鏡は世界を救う~
俺の名前は、眼鏡野 連図、27歳普通のリーマンで眼鏡をかけたフツメンだ。
「眼鏡野さん、これお願いします。」
「あ、はい。」
今日も今日とて仕事だ、毎日毎日同じ事の繰り返し、何も変化が無い、この退屈な毎日に俺は嫌気が差していた。
「ハァ…。」
会社の帰り、よくため息が出る、今日はいつにもましてよく出る。
「何か……疲れたなぁ。」
いくら働いても金は溜まらず、疲れだけが溜まっている、正直生きる気力が無い。
「キャーー!!!引ったくりよーーー!!!」
引ったくりか、関わり会いたくないな。
「どけぇ!!!」
言われなくてもどきますよっと。
「行ったか…。」
引ったくりは無事に通り過ぎた、良かった。
家に向かって真っ直ぐ帰る、もうすぐで家につく。
「ねぇ、君。」
誰かに声をかけられた。
「何でしょうか。」
見ると、30歳位だろうか、髭がダンディなイケメンだった、眼鏡がよく似合っている。
「突然だが君、人を救う活動をする気は無いかね?」
「無いです。」
いきなり意味の解らない事を聞いてきた、なんだこいつ。
嘘を付く理由も無いので、一応正直に答えた。
「………キッパリ言ったね。」
「嘘を付く理由も無いので、とりあえず何なんですか貴方は。」
「失礼、私はこう言う者だ。」
男は名刺の様な物を出してきた、名刺の様な物にはこう書いてあった。
眼鏡勇者製造会社 メガネファクトリー社長
流宇北 翔
眼鏡勇者製造会社?そんな物聞いた事がない、下手くそな詐欺だな。
「貴方詐欺師向いてないですよ。」
「いやいや、私は詐欺師じゃないよ。」
「じゃあ何なんですか。」
「名刺にも書いてあるだろう、私は眼鏡勇者だ。」
「…………いきなりそんな事言われてもね……。」
「ハァ…じゃあ説明をするぞ。」
俺の今のこの男に対する好感度は0を突き抜けてー26になった。
「君は眼鏡の素晴らしさは解るかね?」
「……まぁ正直この眼鏡が無いと何も見えませんが。」
俺の視力は右0.3左0.2だ、眼鏡が無いと本当に何も見えない。
「そうだ、眼鏡が無いと何も出来ない。」「はぁ。」
「だが逆に言えば眼鏡があれば何でも出来る!」
「は?」
何言ってんだコイツ、頭おかしいのか。
「眼鏡があれば何でも出来るって…、そんなこと…「出来るんだよ、この眼鏡をかければね。」
そう言って、男は俺がかけている眼鏡と同じ形の眼鏡を出してきた。
「何ですか?これ?」
「天翔眼鏡閃、この眼鏡をかければいつものパワーの50倍の力を出せる。」
何言ってんだコイツ。
「……………そうですか。」
「信じて無いだろ?」
「はい、微塵も。」
「しょうがない、見せてあげよう。」
「え?」
男は眼鏡を付け替え、近くの公園に移動する。
「何をするつもりですか?」
「フフフ…よく見てなさい。」
男は置いてある土管の下に手を置き、持ち上げた、土管を、持ち上げた!軽々と!
「はぁ!?」
「驚いたかい?」
男は、ボールを回すように、土管を回している、笑顔で。
「は、はい…大分……。」
驚くな、と言うほうが無理だ。
「これを君に譲ろう。」
「え?何で?」
「そもそも私の目的はこの眼鏡を渡して世界を平和にする事なんだ。」
「どういう事ですか?」
「まぁ座りたまえ。」
男はベンチに座り、横に座るように促す。
「そもそも私が会社を設立した理由はね…。」
「(そういや名刺に社長とか書いてあったな。)」
「私はこの社会に絶望してたんだ。」
「………………。」
俺は男の話を黙って聞く。
「代わり映えの無い仕事、一向に減らない犯罪、溜まるのは疲ればかり。」
同じだ、俺はそう思った。
「そんな時、仕事の途中で私が落としてしまい、私の眼鏡が壊れたんだ、私は目が悪かったが、別にいいか、と軽い気持ちで仕事に戻った、だが眼鏡が無いと何も見えず、仕事が手につかなかった、取引先の顔も見えず、企画書も読めず、人と何度もぶつかる。」
俺も経験があるからその気持ちは痛いほど解る。
「その時、私は思った、眼鏡が無ければ何も出来ない、なら眼鏡があれば何でも出来るようにすればいいじゃないか、と。」
最後は正直意味が解らないが、この人の考えている事は解った。
「それで、祖父母の保険金で会社を作り、この天翔眼鏡閃を開発したんだ、そしてこの眼鏡を世界中に広め、世界を平和にする事にした、君は記念すべきこの眼鏡を譲る人間第一号になったと言う訳さ。」
「何で俺に?」
「正直誰でもいいんだ、とりあえず眼鏡のありがたみを知っている君にした。」
「そうですか…。」
「君はこの眼鏡を受け取ってくれるかい?」
そんなもの答えは決まっている。
「もちろんです!」
「そうか…ありがとう、ぜひ正義の為に使ってくれたまえ。」
「はい、そのつもりです。」
そう言って、男は、俺に眼鏡を渡した。
「じゃあ、さよなら。」
「さようなら。」
男は帰っていった、歩いて。
俺は家に入り、飯を食って風呂に入り、すぐ寝た。
翌日の朝。
「よし、眼鏡かけてっと…。」
俺は昨日貰った眼鏡をかける、念のために今まで使っていた眼鏡も持っていく。
しばらく歩くと、商店街の入り口につく、ここを通れば近道だ。
「ひ、引ったくりよーーー!!!」
また引ったくりが出た、今までの俺ならここは避けて遠回りする所だが、今は天翔眼鏡閃がある、正義の為に使おう。
「待て!!!」
「何だてめぇどけえ!!!」
男は突進してくる。
「(ふん、この眼鏡があれば楽勝だ。)」
俺は向かってくる男にパンチを繰り出す、が。
「? ぐえぇっ!?」
俺のパンチは男に当たったが、男は怯むこと無く俺に突進し、俺を吹き飛ばした。
「(な…何が…痛っ……。)」
訳が解らない、パワーが50倍になるんじゃなかったのか。
「(あ…もしかして……。)」
俺は1つの可能性を見つける。
「(間違えた!?)」
つまり俺の眼鏡と昨日男から貰った眼鏡を間違えてかけていたと言う事だ。
「おらぁ!どけぇ!」
男は逃げて行く、駄目だ、このままじゃ!
「ま…待て…よ……。」
「あ?」
俺は男の足にしがみつく。
「んだよ!離せよ!!」
男は俺の顔面を踏みつける、何度も、何度も。
「離すかよ!!!」
「何なんだよ!!てめぇは!!!」
男は俺の体をを蹴りあげる、俺は少し飛んだ後、ドタッと倒れた、薄れて行く景色の中で最後に見たのは、警察がぞろぞろと駆け込んでくる姿だった。
――――――
――――
――
―
「ん……?」
俺は目覚める、どこだ、ここは、見知らぬ天井がある、目を横に向けると、後輩の山田と、部長の姿があった。
「! 先輩!起きたんですか!!」
「山田……?」
「そうです!山田です!」
「おお、起きたかね。」
「部長……。」
「心配したんですよ!先輩、死んだんじゃないかって……。」
「まだ死なねぇよ…。」
山田の綺麗で長い髪が俺の顔面にかかる。
「おい、近いぞ。」
「あ、はい!すみません///」
「眼鏡野君、お手柄だそうじゃないか。」「え?」
「覚えて無いんですか?先輩が足止めしてたおかげで引ったくり犯が捕まったんですよ!!」
「あぁ、捕まったのか、良かった。」
「えぇ、本当に良かったです。」
そのあと、刑事さんが来て、少し事情聴取を受けて、病院を出た。
帰り道。
「やぁ。」
「あぁ、貴方ですか。」
眼鏡をくれた男と同じ所で出会った。
「どうだった?」
「犯罪者に蹴られて、病院に運ばれて、もうさんざんでしたよ。」
「そうか、でも良かっただろう。」
「はい、良かったです。」
男と俺は笑い会う。
「………これ、返します。」
俺は貰った眼鏡を差し出す。
「いいのかい?」
「えぇ、俺には使えこなせる気がしませんから、それに…」
「それに?」
「この眼鏡が無くても、正義の為に出来る事があるって、解りましたから。」
「フフ…そうか、君みたいなのばっかりだったらいいんだがね…。」
男は眼鏡を受け取った。
「これは別の人に渡す事にするよ。」
「はい、ぜひそうして下さい。」
「じゃあ、さようなら。」
「はい、さようなら。」
男は帰っていった、歩いて。
俺は何だか清々しい気持ちで、帰路へと着いた。




