表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

タイムリミット

8月も残り数日


ということは

私がこの島にいられるのも

残り数日…


まぁ、考え方によっては

まだ数日


そう

ポジティブに考えよう!


と、ガッツポーズをしながら

教会の中で1人

寂しい気持ちと格闘していた


その帰り道…


「あれー?お帰りですかー?

美空ちゃーん」


妙に甘くてチャラい声

またか…


前方からひらひらと手を振りながら

ソラさんが現れた


「ど、どうも」


「どーも

未来のお兄さんだよ」


照れてる場合じゃないのに

どうしても顔が熱くなってきてしまう


「なんでですか!」


「あれ、不満?

じゃあ、美空ちゃんが望むなら

未来の旦那さんでも可!」


「な!ふ、不可ですよ!」


「あははっ」


盛大に笑っている……


まったく、この兄弟は…!


この笑った雰囲気がアオに似ているから

私はソラさんに強く言えないのかもしれない…


「もー、なんなんですか!

用がないんなら行きますよ?」


足を踏み出しそうになった瞬間


「あるんだよ

大事な話が」


大事な、を強調して

引き止められた


ソラさんが私には大事な話?

何も検討がつかない


「さっき糸瀬のばあちゃんに

美空を見かけたら

すぐに家に戻るように言ってくれって

頼まれたんだよ」


おばあちゃんが?

すぐに家に戻るように?


「え?

なんでだろう…」


「知りたい?」


呟く私に間髪入れずに聞いてくる


知ってるのか?

なら、今すぐにでも…


「知りたい、です」


ソラさんはニヤッと笑うと

腕を組ながら喋り始めた


「いいよ、教えてあげる


東京のご両親から連絡があったんだってさ

すぐに東京に戻ってくるようにって


理由はわからないけど

もう、ここにはいられないみたいだよ」


「……」


頭が真っ白になる


なにそれ

またソラさんが私をからかうために

言っている冗談?


でも、こんな冗談言って

面白い所なんて何一つない


すぐに帰らなきゃいけない


それが本当なら…


そんな…


ソラさんのことは怒らないから

これが嘘であってほしい

ソラさんの悪い冗談であってほしい


そう願いながら

かなり重い足取りで

なんとか家にたどり着いた


東京に電話をかけてみると…


「学校から電話があってね

問題が起きたから

夏休みが明ける前に

生徒会で緊急会議を開いて欲しいって


30日に会議をするから

それまでに帰って来れないかって

言ってたわよ」


そう、お母さんに言われた


駄目だった


タイムリミットが縮められた


30日までに戻らなきゃいけない…


ということは

明後日にはこの島を出なければならない


いつか東京に戻らなければならない日がくることは

当然ながらわかっていた


それが少し早まっただけ…


そんなふうに割り切れるほど

私はまだ大人じゃない


はぁ…


ため息混じりに

ちら、と振り返ると

玄関には私の様子を見るために

着いてきたソラさんがいた


「東京に戻る日にちが急に早まるって

結構ツラいよねー


明後日の朝の便で島を出るなら

もう、明日の1日しか時間はないよ」


「……わかってますよ」


わかってるよ、そんなこと…

時間がないって実感してるからこそ

残された時間で本当にやりたいことを

考えようとしてるのよ!


まだ、ショックで

考えられないけど……


「そうだよね!

美空ちゃんならそれくらいわかってるよね


なんだか、面白そうなものが見られそうな予感


楽しみだなー!」


はしゃいでるし…


そんな期待されても困るんだけど…


面白そうなものって何よ


ソラさんなからかわれるのなんて

もう御免だからね!



明日には東京に戻らなければならないと考えると

いてもたってもいられなくなり

私はアオの家へと向かった


しかし


「アオやったら

海に行くとか行って

はようから出て行ったばい」


アオは家におらず

教えてもらった通りに海まで行ってみた


「…いないじゃん」


海を見渡すがアオはどこにもいない


他にもアオのお気に入りの海があるんだろうか?


だとしたら

もうわかんない…


仕方ない

次は

キヨとノンに伝えに行こう


その3人には

しっかりと自分の口で伝えたかった


なのに


「なんで2人ともいないのよー…」


キヨとノンは

島の北側に出掛けたよ、と言われ

私は為す術もなく

トボトボと適当に歩いて回った


このまま会えず終いで

東京に戻ることになったら…


そんなの嫌だ


どこにいんのよー!


そう叫びたい思いと共に

歩いていると


「美空ちゃーん」


どこからか私を呼ぶ声が聞こえてきた


キョロキョロと辺りを見回すと


あ、ソラさん


逃げようかな…


「アオじゃなくてごめんねー


見つかんなかったみたいだね?

落ち込みすぎだって

もー、かわいいなー」


うるさい!


ぴしゃりとそう言ってやりたい


「アオもキヨもノンもいないんでしょ?


あんな薄情な奴等は置いといて

俺達もどっか行こうか?」


「なんでそうなるんですか


行きませんよ!」


軽すぎるよ、この人は!


「東京の子なのに

ガードが固すぎるんじゃない?


なんでそんな子を

アオが落とせてるのか

不思議でならないよ」


「…」


そう言われると…

私だって

こんなにもアオに惹かれてることが

不思議でならないよ


「お、もう否定しないんだね


前なら

落とされてません!

とか言ってそうなのに」


綺麗な顔で

ニヤリと笑いやがる


ちくしょー!

この人はすぐに隙をついてくる


「俺、美空ちゃんみたいな

固い子を相手したことないからさ

いまいちどうしたら良いかわかんないんだけど…


んー、そうだな

面白そうだから……」


手がのびてきたかと思うと

人差し指を私の顎の下にあて

くっと上を向かせられた


ん!?

なにこの状況!?


またマズイことになりそうだ

そうなる前に手を振り払え!


頭ではそう指令を出しているのに

体は嘘のように動かない


え…なんで?

うそ、誰か…!



場所は変わって

ノンの家


「あとは任せたばい!

後からうちらも行くけん」


「頼んだよ」


ノンとキヨに見送られて

一足先に美空の家へと向かった


美空には内緒で

こっそり立ててた今日のための計画


美空にとって

最高の日になってくれれば良い


きっと喜んでくるはず


そう思うと

自然と笑みがこぼれる


そんなウキウキな気分の中やったら

離れた所に見える

今にもキスしそうなカップルも

微笑ましく思えてくる


観光客かな?


……。


!?


全然微笑ましくないやん!


俺は急加速で走り出した


観光客でもないし

微笑ましいカップルでもない!


そこにおるのは

兄ちゃんと

後ろ姿しか見えとらんけど

あれは絶対美空やん!


ちらっと兄ちゃんがこっちを見て目が合った


何かを企むように若干

その目が笑った


兄ちゃんってば

俺が2人のことを見よるって

わかっとって

あんなことしとるんだ!


前の時は

キスしたのが頬やったし

挨拶、って言われたら

そうなのかなって気もしたけど

今回は絶対違う


挨拶、って言われても

納得できんよ!


もうあと十数メートル


全速力で2人のもとまで走り


「美空!」


そう叫んで

美空の腕を掴むと

そのまま兄ちゃんから遠ざけたくて

手を引いて走った


もちろん美空がついてこられるように

スピードは落とした


「わ…っ、アオ?」


突然の出来事に

美空は驚いとるらしい


兄ちゃんの

面白いものが見られたかも

という楽しそうな声は

聞こえんかったことにしとこう


まったく、兄ちゃんは

何をやってんだよ!


とにかく距離を離したくて

ひたすら走る


ただただ走る


「ちょ、…っと

も、…限、界……」


ふと

途切れ途切れの美空の声が

耳に届いた


やべ


「あ、ごめん」


どれだけ走らせてしまったんだろう


もうとっくに

兄ちゃんは見えていない


足を止め

息を整えている美空を見ながら

あそこで2人は何をしよったんやろう

と、考える


まるで、恋人みたいに……


恋人…


え?

もしも2人が付き合ってるなら……


え、え、え?


違う、よね?

でも、もしも2人が付き合ってるなら

俺はなんてことを!


いや、2人が付き合ってたとしても

同じことをしてたかもしれないけど…


とにかく

確認せんば!


「なー、美空

…もしかして兄ちゃんと付き合うとる?」


何故か緊張しとる時みたいに

胸がきゅーっとなる


「まさか!

変なこと言わないでよ」


今までゼーゼー言ってたのに

美空は急にはっきりと喋り否定した


あぁ、なんだ

よかった


そう思いながら

心の底からほっとした


「そっか、よかった」


「よかった?」


「うん!行くよ」


兄ちゃんと何もないことがわかったら

また、上機嫌が戻ってきた


「どこに?」


美空は怪訝そうにしながらも

ちゃんと着いてきてくれとる


「糸瀬のばあちゃんの家!」


「は?」


俺は美空とのこういうやりとりが

結構好きやったりする


上機嫌のまま

計画通りに

美空と共に部屋にあがりこみことに

成功した


あとは

キヨとノンを待つのみ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ