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2人を繋ぐ距離

「ちょっとキヨ!

あの2人は

まだくっつかないの?


あー、もどかしい!」


あまりのもどかしさに腹を立てながら

家に帰ると

キヨはクールに私に目を向けてきた


「姉ちゃんが口出しすることじゃなかけんね」


そんなことは言われなくてもわかってる!


でもあんまりグズグズしてると

東京に染まったチャラ男が

何かやらかしそうなのよ!


あー!


「キヨだって見たでしょ?

あの男は人をからかうのが生き甲斐なのよ?

放っておいたら2人の間に溝ができるようなこと

されるかもしんないでしょ」


「からかってんのは姉ちゃんじゃん


それに、溝ができたとしても

2人ならなんとかできるやろ」


まぁ、できるだろうけど…!


「なんとかできる時間があればね


美空ちゃんは夏休み終わったら

東京に戻るんやろ?」


「そうやけど

それでも姉ちゃんがどうこうすることじゃなかやろ」


冷めてる

本当に冷めてるよ!


我が弟ながら

そこまでのクールさは必要ないと思うぞ


もっと熱く

友人の恋を応援してあげたら良いのに


「キヨは応援してないの?」


「しとるよ


けど、2人は仲が良いとは思うけど

知り合ってそんなに長くもないし

今、付き合うたとしても

遠距離になるんよ?」


ふっ


そんな言葉

鼻で笑ってあげるわよ


「これだから恋愛経験のないガキは困るわね


会ってすぐにあれだけ仲良くなってんのよ?

もう、運命に近いんじゃない?


そんなの…

私からしたら

切なくなるくらい羨ましいわよ!」



そうよ

あんな運命を感じさせる出会いは

なかなかできるもんじゃない


確かに遠距離は難しい


島を出れば異性との出会いは増える


私だって……。


島を離れるときに

どんなにあなたのこどが1番だと思ってても

時の流れは残酷なもので


相手の心はおろか

自分の心さえコントロール出来なくなる


それを自分が経験しているからこそ

アオと美空ちゃんを見ていたら

私みたいにはならないと言える


上手くいってほしい


…結局は私の願望なのかもしれない


私が続かない恋愛をしてきたから


恋愛に臆病になっているから


2人の純粋な恋を見て

永遠もあるんだと信じたいのかもしれない





アオと私は何かが変わっただろうか…?


前よりも距離は近くなった気はする


私の心の中を占める割合も

大きくなった気がする


でも

2人の仲はというと……

特に変化はない気がする


今日だって

アオは相変わらずぶっ飛んだ行動をしてるし


まぁ、夜の洞窟に2人きりという

このシチュエーションに

ドキドキしない訳じゃないけど

それを忘れてしまうくらい

私は恐怖におののいている……


洞窟の中は真っ暗で

時々ピチャンという水の落ちる音がどこからか響いている


本当に何かが現れてもおかしくない雰囲気


頼れるのはアオの持っている懐中電灯のみ


後ろからついていくが

背中を急に何かに叩かれたら…

なんて考えちゃって

どんどん恐怖は増していく


だからって

前を歩こうとは思わないんだけど…



はぁ……


何故こんなことになってしまったのか


発端は私の軽率な一言だった




「アオの行動力にはやっぱビビるよね

すーぐどっか行っとるもんね」


今日も4人で集まり喋っていると

ノンがアオの行動力は真似できないと言い出した


「あの洞窟とかなー!


まじで行くとは思わんかった」


「あー

あの、夜の洞窟に1人で行って

何もいないか確認したって話?」


「そうそう

でも、ああいう話って

毎回毎回、何かが現れるってもんじゃないよね?」


そうだよね


毎回毎回現れるんなら

それはもう言い伝えなんかじゃなくなる


ノンの言ってることは100%正しいと思う


だから私は同意を示す


「うん

もう1回くらい行かなきゃだよね」


会話の流れに沿って

何気なく言った一言


まさかここだけが拾われるなんて

思ってもみなかった


「じゃあ、今日の夜

皆で洞窟行ってみよ!」


楽しそうな弾んだ声のアオ

目もわくわくして輝いている


え!?やだよ!

夜になったらあの辺真っ暗じゃん!


何も出ないとしても

普通に怖いよ


「いや、私は…」


「俺は今日用事あるけん行けん」


「うちも

旅館の手伝いせんばけん

美空と2人で行ってきーよ」


私の拒否の言葉を遮られたと思ったら

次には行くこと前提で話が進められている…


「待ってよ

いや、行かないよ私」


「何もないやろ?

もし、アオが何か見たとしても

見間違いで終わるんやし

美空がおった方が信憑性高まるやん


行ってみなよ

2人なら何かが現れてもくれるかもしれないだろ」


え、キヨ…

真面目な顔しておかしいよ?


「県トップが何を言ってるの…


嫌だ!

絶対行かないからね!」


「何で?

あ、美空怖いと?」


アオが純粋に聞いてくる


そりゃ怖いでしょうよ!

何もいないってわかってても

あんな真っ暗な所に入るなんて

想像しただけでも寒気がする


そう言えば良いのに

どうしたものか…

私は強がってしまった


「いや、そんなんじゃないけど…


けど、行かないの!」




大声での訴え虚しく

私は夜の洞窟に

アオと2人で足を踏み入れてしまった



「もー、帰ろうよー」


「今入ってきたばっかやん


「そうだけど…

絶対何もいないって


そもそも1人で来ないと現れないんでしょ?」


「大丈夫大丈夫」


何が?

何を根拠に大丈夫なの?


2人でも現れるよってこと?


それなら

全然大丈夫じゃないんだけど


「1番奥まで行ってみらんと

わからんやん


怖いならもう戻るけど」


「だから怖くないって!」


あー……

反射的に強がってしまう


ぎゅっとアオのシャツを握りながら言うって

言葉と行動が一致してないじゃないか…


怖いって素直に言ってれば

戻れたのに!


もう、今さら言い出すこともできず

仕方なく

アオの持つ懐中電灯の灯りだけを頼りに

進んで行く


こうも恐怖の中に身を置いていると

ほのかに照らされるアオの背中が

すごく大きく見える


アオのシャツを強く握れば握るほど

その分、恐怖心は小さくなっていく気がする


その恐怖の隙間に

小さな安心が温かく揺れる


でも

いつかはこの手を離さなければならない


東京に戻ったらアオのいない日常が繰り返される


……私はそんな日々に耐えられるのだろうか?


アオに会う前の私に戻るなんて

そんな単純な話じゃない


このまま一緒にいたいけど…

そんなことは言えない


言えないのは

私に勇気がないからだろうか…?


いや…


私なんかがアオを縛るのは間違ってるという思いがある


アオを1人占めしたいけど

自由なアオが好き


相反する思いが

私のアオに対する率直な思いなんだ……。



そんなことばかり考えていると

洞窟の1番奥の出口に着いていた


「結局なんもなかったね」


「そうだね、早く戻ろ」


アオは残念そうにしながら

来た道を引き返す


「やっぱなんもおらんとかなー?

俺達が気付いてないだけとかかなー?」



何故にそうなる?

気付いてないって…


「もっと小さい子にしか見えないんじゃないの?」


少しだけアオをフォローしてあげたくなった


でも良い言葉が見つからなくて

こんなことしか言えなかった


なのに…


「あー…なるほど」


すごく納得してように頷いている


こんなんで良いのか!


「まぁ、いないって結論が出たんだし

よかった…」

「しっ」


急に振り返ったアオに

話を止められた


訳がわからないけど

取り敢えず声をひそめて聞いてみる


「なに?どうしたの?」


「なんか、聞こえる

足音みたいなの」


「え…?」


ここに来て!?

油断してた!


もう出ないだろうって

余裕が出てきてたのに…


それが悪かったのかも


こういうのは大体

油断した頃にやってくる…


いや、でもまさか!

そんなのはどこにもいないはず!


そう自分に言い聞かせる


「何も聞こえないよ

聞き間違いじゃないの?」


「まじ、聞こえたとって

……ほら!」


……コツン…


「…っ

アオ……」


一気に恐怖が復活する


でも、まさか……ね?


「だ、誰かが入って来たんじゃないの?」


冷静に落ち着いて

足音の正体の可能性を考えて

自分の手の震えを抑える


「誰かって…こんな夜中に?」


「……」


アオの方が冷静で落ち着いていた


そうだよ

こんな夜中に

こんな真っ暗な洞窟に入ろうなんてのが

私達以外にいるはずがない


「じゃ、じゃあさ

アオ、ちょ、ちょっと

見てきてよ」


もう動きたくない私は

アオに全てを任せようと思った


「わかった

見てくる」


さらっとそう言うアオ


本当に怖くなどないらしい

むしろ

遂に得体の知れない何かに出会えることに

嬉しくて堪らないのかもしれない


アオが数歩進むと

私は気がついた


あれ?


このままアオが行ってしまうと

懐中電灯すらないここに

私は1人で残されてしまう


真っ暗な

洞窟に

1人


……


「うそうそ

待って!やっぱり1人にしないで」


遠ざかる光を追いかけ

必死でアオにしがみつく


「うん、じゃあ一緒に見に行こ」


「…うん」


行かないという選択肢はないらしく

はい、と手を差し伸ばしてくる


もうどうにでもなれ!


半ばやけくそで

私はアオの手を握った


その温かさが伝わってきたとき

はっとして

ごく自然にアオと手を繋いでいることに

緊張を覚えた



アオの背中に隠れるようにして

ゆっくりと

しかし着実に足音に近づいていく


もうやめたい


これ以上近づきたくない


足音はもうすぐそこにまで来ている


「すぐそこにおる」


アオがかなり小さい声でそう言うと

足を止めた


私はアオの照らしている光の先からは

目を逸らし

何かあってもアオを盾にできるように

身をひそめる


心臓の音が全身に響くくらい

恐怖に支配されている


「くる」


アオがそう言った瞬間

私はぎゅっと手に力を入れた


これ以上ないくらい

近くで足音が聞こえる…


と思ったら

なぜかその音がぴたりと止んだ


え…?

どういうこと…?


しんとした

静寂が蘇る


その瞬間…


「誰だ!」


な、なに!?


かなり大きい声で怒鳴られたかと思うと

すぐに強い光を当てられた


さっとアオの背中に身を隠し

眩しさから逃れるが

心臓はばくばくと

激しく打っている


「うわー、なんだよ

交番のおっちゃんやん」


交番のおっちゃん…?


って…前に海で会ったあの?


そろーっと顔を出して覗いてみると

確かに警察官の制服を着ていた


「なんだってなんね

まーた、お前達か…


洞窟の入口に自転車が停めてあるけん

誰かおったら危ないと思って

見に来てみたら…


高校生がなんしとるんか!」


また洞窟内に低い声が響く


久しぶりに怒鳴られて叱られる経験をした私は

少し落ち込んだのだか

アオはこういうことには慣れているようで

ヘラっと笑って上手く切り抜けていた


そして私達は

交番のおっちゃんに促されて

洞窟の外に出た


「あ…」


手を繋いだままだ


アオは気付いているのだろうか?

気付いてないから

このままになっているのだろうか?


真夜中の島を

家に向かって2人で歩く


「なぁ美空

この間、ソラ兄が来たけん

おかしなことになったけど


俺は美空のこと気に入っとるんよ?

それで…美空は?」


おっと?

これはどんな展開なんだ?


その前に

気に入ってるってどういう意味を含んでるんだろう


好き…?


いや、たぶんそこまではいってない気がする


もー、ほら!

ドキドキしてきたじゃん!


アオにとって

お気に入りってなんなのよ…


どう?

って言う感じで

じっと見つめられる


答えなきゃいけないらしい


んー…


仲も良いと思うし

私にとってアオは大切な人だし

好きって思いはあるんだし


もし、それらの意味が

含まれていないとしても


「…お気に入り」


そう返すしかないじゃん!


お気に入りじゃないよ、なんて

冗談でも言えないし

……そもそも

それは本心じゃないんだし


私の声が届くと

アオはあの笑顔を向けてくれた


誉められた子どものように

屈託のない笑顔


やばい……

私は今

顔が赤いかもしれない…


でも大丈夫

どこにも灯りなんてないから

バレることはない


この島に来て

初めて街灯がなくて良かったと思った瞬間だった




私はアオのことが好きだと思う

1人占めしたいとも思う


でも、これは恋愛感情なんだろうか…?


アオは大切な存在で

アオの代わりはどこにもいない


そう思っているのは間違いない


ただ、恋人になりたい?

となったら話は別なのだ


そもそも

私には付き合うとかが

いまいちわからない


今まで恋愛に目を向けてこなかった私が

恋がどんな気持ちなのか見極めることは難しかった


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