5話 確信
冒険艦『ペリカヌ』が、その巨体を青空に飛ばす。向かうは外世界と内世界の境界線。そこにあるヒドランデと言う町だ。
いや、町と言うより基地と表現した方が良いかもしれない。多くの場所に植民地を持つガーヴィッド公国であるが、外界との接点の様な形で持つ土地の一つがそこであった。
何時かは外の世界について調査し、開拓し、植民する。そのための拠点としての場所がヒドランデであるのだ。
周囲の治安についてはお世辞にも良くは無いため、人口こそそこまで多くないが、それに不釣り合いな程に飛空船離着陸場や補給物資。外泊所などが整備された場所なのである。
その場所への物資運搬任務こそ、飛空開拓計画の元に動くペリカヌの事前演習内容であった。あったのだが………。
「突然の呼び出し。いったいどの様な事情ですかな?」
声を発するのは班長のビーリーであり、聞くのは艦長のアニーサだ。
未だ仲間同士の共同作業は固い部分があるものの、順調な空の旅と言えるこの事前演習飛行。そんな中であまり仕事の無い俺達小型飛空船班は、何故かアニーサ艦長に呼び出されていたのだ。
小型飛空船班の3人とアニーサ艦長。この計4人がミーティングルームにて、他の船員を締め出して話をしている。
「これから1日後ほどでヒドランデに付きますの。そこで輸送用の荷物を降ろせば、今回の事前演習は終了ということになるのですが、その後について、少しばかりご相談が」
アニーサが相談をする対象として、俺達小型飛空船班が選ばれたらしいが、その意図がまだわからない。
「ふむ? 小型船を飛ばせと命じられれば幾らでも飛ばしますが、いったいどの様な?」
ビーリーも艦長の意図は分からぬらしい。艦長の方はと言えば、少しばかり言葉を止めた。まるで焦らすかの様である。
「………ヒドランデという土地のことですの。みなさま、ああいう場所がどの様な場所かご存知かしら?」
と、問われて、やはり意図が読めぬと俺達は考え込んでしまう。ただ、何時までも黙ってはいられないだろうと、俺は率直に意見を口にする事にした。
「外世界への門ってところでしょうかね?」
ヒドランデは外世界への入口であり、内世界へ戻るための場所でもある。行ってみれば門の様なものであろう。
艦長は俺の答えに対して、満足したとも不満足だとも顔に出さず、ただ頷いて話を続けた。
「素敵な表現ですわね。今後、用いらせていただこうかしら………。ええ、その門。門となるためにヒドランデという土地はございますの。ですがそれはわたくし達側の目線で見た場合ですわよね?」
「まあ………どの様な場所が知っているかと聞かれたので、自分なりに答えたわけですから………」
他人の目線で見てみろとなどとは言われなかったはずだ。
「一方で、ヒドランデに生きる方々にとっては自分達の土地はどういう場所に見えるでしょうか?」
「どうとは………土地は土地じゃあ?」
視点が変われば周囲の環境が変わると言うのなら、この世界は人の視点の数だけ風が吹いたり雨が降ったりするということになるではないか。
「見る目が変われば映る世界も変わる。そういうものですのよ?」
まるでこちらの頭の中を覗いた様な言い方をする。そうして、まだまだその答えに満足していないらしい。
「ふむ。見る目ですかな? ああいうところに住むとなれば………ああ、なるほど。われわれは歓迎されませんか」
「………何故?」
ビーリーの言葉が分からぬと、レイリーが首を傾げる。彼がそういうちょっと間の抜けた格好を見せなければ、俺の方も首を傾げていたかもしれない。それくらい、良くわからぬやり取りだったのだ。
「わからんかね? ああいう場所に住む人種は、ああいう場所だからこそ得るものがあるのだ」
「ああいう場所ってのは、外世界への境界線上って言う意味で良いんですか?」
ならばどういうことになるのか。頭の中で想像してみる。
「うーん」
「…………何か分かりましたか? 先輩?」
先輩。レイリーは俺の事をそう呼ぶことにしたらしいが、こうやって一々聞いて来るのは、分からないということなのだろう。
ならば、俺の方は分かるべきだ。後輩が分からぬことを先輩が理解することで、こういう関係は成り立つのだから。きっと。
「あれだな。暮らし辛い場所だからこそ、得るものがあるってことだ」
「その得るものと、僕達を歓迎しない理由に何か関係が?」
後輩という奴は、どうしてそう聞かないで欲しいことをずけずけと聞いて来るのか。
「いや………そりゃあわかんねぇけどさ」
「なんですか……それは」
とりあえず適当に言ってみるのだが、追及されると、それ以降、何も言えなくなる。呆れたような目が心に痛い。
先輩だって、何か深い考えを持って行動しているわけではないのだ。後輩はその事を良く理解して欲しいものである。
「いや、良い線を突いているぞ。でしょう? 艦長?」
こちらのやりとりを見学していたビーリーが、艦長を横目で見る。ビーリーの場合はハッタリでも何でも無いらしく、彼の言葉に艦長は頷く。
「ヒドランデはああいう土地………外世界への最前線だからこそ、国から援助や補助などが、その人口規模以上に与えられていますの。事実、現在航空している土地は所謂辺境と呼んで差し支えない場所でございますけれど、ヒドランデはその言葉に反して発展しているようですし」
発展していなければ、大型飛空船を離着陸させたり整備補給等は無理であろう。そうして、それを作り出せる環境こそ、国から与えられた恩恵と言えるのかもしれない。
「国との関係性は良さそうに思いますけど」
「その関係性を壊してしまうのがわたくし達。という事ですわね」
「………ああ、なるほど」
漸く合点がいった。国からの援助はあくまで外世界との接点にあるからで、俺達飛空開拓計画はその接点からヒドランデを離す行為なのだ。接点で無くなれば、ヒドランデへの援助は無くなり、援助を背景にしたこれまでの発展も期待できなくなるだろう。
「これまでも、飛空開拓計画の前線基地となる様な場所では、むしろ計画を歓迎しない現地の方々の遠回しな妨害が実際にありましたの。わたくしが以前に参加した計画も、その様な問題が多々」
参加してみなければ分からぬ悩ましさ。というものだろうか。こういう話が出て来る以上、俺達が呼び出されたのも、現地に歓迎されないという問題に関する事なのだろう。
「艦長はそれを解決したいと考えていらっしゃる?」
「そうですわね。順調な計画の進行には現地との関係性が良好であることが欠かせません。何がしか対策したいと思うところです」
「仲良くしてくださいと………頼むだけでは駄目なのですか?」
さすがにその意見はどうだろうという言葉をレイリーが漏らした。頼んで何とかなるのであれば、もっと世の中生きやすいし楽しいだろうに。
「頼みますわ」
「頼むのかよ!?」
「何か?」
「あ、いえ………直球勝負ですね………と」
勢い余ってタメ口に近い言葉を艦長に投げ掛けてしまった。これは不敬な行動ではあったが、しかして艦長の答えもどうかと思う。
「基本、王道を外れてはいけませんわ。仲が良くないとなれば、仲良くすべき事だとわたくし思います」
「しかし真っ当に伝えて上手く行くものですかな?」
まったくだ。はいそうですかと終わる問題ならば、それは問題とは言わない。
「搦め手も使わせていただきますの。王道を外れず。かと言って邪道を進まないという事もありません。なにせわたくし達、個人でありませんもの」
「なるほどなるほど。両方の道を我々に進ませるというわけですな。ところで王道と邪道。どちらに誰を向かわせるので?」
艦長とビーリーのやり取りを見る。そんな中で分かることと言えば、俺達が呼び出されたのは、あくまで内密な話であろうことと、それを聞かされた以上、真っ当なやり方をさせてはくれないだろうことであった。
「王道を進むのはここにいる以外の人間。邪道はここにいない人間。という事でどうでしょうか?」
「やれやれですな。最初の任務からしてまともで無いとは、今後も面倒くさいものが多そうだ」
笑うビーリーを見れば、愚痴は言うが文句は言わないつもりであろうことは分かる。分かるのであるが………。
「分かった顔してるとこ申し訳ないんですが、結局、俺達はいったい何をすれば良いんで?」
俺達はただ一人の人間だ。どのような作為があろうとも、やれることと言うのは、説明されなければ十分に動けぬ不自由な身なのである。
空飛ぶペリカヌはヒドランデの基地にて羽を休めることになる。初の長距離航空であるためか、現在は整備班が付きっ切りで不備が無いかのチェックをしていた。
そういう状況であれば、邪魔なのは作業員以外の乗員である。ヒドランデにいる間は息抜きと言う名目の元、ヒドランデの宿場へと追いやられてしまったのだった。
「だー! ったく。艦長はここの代表者と会談だってよ。偉そうな立場じゃねぇか」
「いや、実際偉いだろう………」
白兵隊員兼作業員であるところのバーリンの話を聞きながら、どうしたもんかと俺は今の状況を眺めていた。
場所はヒドランデの宿場町。その中に幾つかある酒場の一つだ。場末の。という表現がぴったりの寂れ、尚且つ小ぢんまりとした場所であるが、むしろこういう場所の方が落ち着く。耳に同僚の文句が聞こえなければと条件を付けるものの。
「おいアーラン。お前、あの女艦長の肩を持つってのかよ」
既にかなり酔っぱらっているバーリンを見て、自分も酔うべきかどうかを本気で悩む。酔ってしまえば、この愚痴もまた楽しいものになるかもしれない。酔っ払いは何を聞いたって愉快に感じるものであるし。
一方で、目の前の男と同じ醜態を晒すのは遠慮したいという気持ちもある。ここにいるのは俺とバーリンだけではない。俺達以外の人間に、できればバーリンよりかはマシな人間だと思われたいではないか。
「肩を持つ持たないの話じゃ無いだろ。そもそも、俺達の上司だぜ? 会ってそう経って無いってのに、なんでそう酔って悪口が言えるもんかね?」
とりあえず恰好悪い真似はするなと忠告してみるものの、あまり効果が無いことは分かる。
「はっ。俺にはわかんだよ。ああいう女はな、腹に一物も二物も抱えてるんだよ。そうして、美味い汁を吸おうって腹だ。間違いない」
良くもまあそこまでの事が言えたもんだと思う。同じ故郷の出身だというのに、こうまで相手を嫌えるものなのか。
(いや、腹に一物云々は正解だけどな)
俺にとってのアニーサ艦長の印象は、容易く食えぬ相手であるという事だった。最初の印象は、お嬢様が何の因果か冒険艦の艦長になった妙な存在。というものであったが、それがさらに酷くなり、ねじり曲がりまくった結果の印象だ。
「で? あの艦長が何を企んでるって考えてんだよ。言うだけ言って、何にもわからないってんなら、不敬も不敬だろう?」
「………そりゃあ。ほら、色々あるんじゃねえか?」
バーリンの言葉は苛立ちという感情から出ているものであるため、詳しく聞かせてみろと尋ねれば、そこで会話が止まってしまう。それを狙っての言葉であった。
人様への悪口というのは聞いていれば耳が腐ってしまう。こうやってほどほどに止めて置くのが吉なのだ。
それにこれは彼のためでもある。ここには目の前の男の上司もいるのだから。
「いかんなぁ! バーリンくん。それはいかんぞ! 何の根拠も無く言葉を発すれば、それは言葉では無く風聞になってしまう!」
バーリンと俺が丸テーブルに向かい合って酒を飲んでいるのに対して、バーリンの上司、ブラッホはカウンターに座り、こちらに背を向けている。ただ、その背中だって馬鹿でかいため、威圧感は十分だ。
顔も向こうを向いているため、より一層不気味さが増す。だいたい2割増しくらいだ。そこからこちらを振り向き笑顔を見せ始めると、そこでさらに1割増える。
「しっかしですねぇ! 隊長! あんな若い女が艦長ですって言われて、はいそーですかって認められんでしょう!?」
同じ班であるためか、ブラッホに意見するくらいの事はできるようになったらしいバーリン。しかしブラッホという男は、そんな意見を一笑にして吹き飛ばす。
「ならバーリンくんが艦長になってみるかね? 船員30名をきっちりまとめ、従えることができるというのなら、是非とも国に物申すと良い。君の立場は不適格だった。是非とも飛空船の艦長をしてくれやしないかと向こうから頼み込んでくるだろうから。いや、そうすべきだよバーリンくん!」
「そんなこと言われたって………言われたってよぉ………」
愚痴には正論が一番効く。何故かと言われれば愚痴は弱音だからだ。強い言葉であるところの正論には何時だって負けてしまう。
「こういう場所で管を巻くなと私は言わんよ? 酒と酒場はそういうものでそういう場所であるからな。ぐちぐちとした苛立ちを洗い流す洗剤こそ酒だ。かく言う私もこれは大好きであるな」
手に持った透明のグラス。その中にある少し茶けた液体をブラッホは揺らす。確か相当にアルコールが強い酒であるが、ブラッホは酔った様子を一切見せていなかった。普段から酔ったような言動を見せる人間だから、酒には強いのかもしれない。
「ただ、愚痴を言うならあの艦長が何やらミスをしてからにしたまえ。今のところ、ミスらしいミスをしていない。むしろ優秀だと言って良い。そうであるならばどれだけ愚痴を言っても、バーリンくんは敵を作るだけになってしまうよ?」
含蓄があるのか無いのか分からないが、彼の言葉でバーリンは完全に黙ってくれた。そして苛立ちを洗い流すために酒を飲むである。
このまま沈黙が続いたとしても別に構わないのだが、酒が入ればそれなりに口数は多くなるというもの。俺はブラッホと会話を試みてみたくなった。
「ブラッホさんはどう考えてるんです? あのアニーサ艦長に関しては?」
「どう? とは?」
「若い。綺麗。有能。無能。いろいろあるじゃないですか。無い評価ってんなら、そうですね、普通や一般的ってものが無いでしょう? なら尚更気になりますよ」
「ふむ、確かに。変わり種であることは確かであるな! ただし有能だ。その能力についてはまだわからんが、兎角雰囲気は有能だよ!」
「雰囲気は……ですか」
「今はそれ以上分からんからね! ただ、こういう言葉もある。他人が有能ならそれを妬まず利用しろ。と言う感じのな!」
身も蓋も無い言い回しである。ただ、計画を無事に遂行してくれるって言うのなら、歓迎すべき人材なのは確かだろう。バーリンの様に、自分の取り分が減ってしまうなんて考える人間は、少ない方だと思われる。
「で、最後に君の方はどうなのかね? あの艦長。どう思っている?」
バーリン、ブラッホと艦長について語ったのだから、順番で言えば次は俺。ということらしい。
「俺は………そうですね。まだまだ分からない人ですけど、一筋縄じゃいかない人間だってことだけは、もう分かってますよ」
明日以降。俺は艦長に頼まれた事をせねばならない。艦長に直接命じられた任務についてを思うのなら、やはり普通という言葉は似合わない相手だと評価するのだった。
アニーサ艦長から与えられた任務。それは空賊退治であった。
「丁度ヒドランデから北西。外世界側にほんの少し進んだ場所に向かい、そこで空賊を討伐して欲しいんですの」
そんな風に頼む艦長に対して、班長のビーリーは了承するより先に疑問を口にした。曰く、そこに空賊がいる保障は無い。そもそも空賊を討伐する理由はなんなのかと。
まったくもって正しい物言いだ。ビーリーが聞かなければ俺が。俺でなければレイリーがその疑問を言葉として発していたことだろう。
3人してそうなのだから、頼んだ側の艦長だってわかっているはずだ。まずは空賊を討伐する必要性について、艦長は説いた。
「人には外聞というものがありますわ。恩を受けたら返さなければならない。できなければ恥知らずだと罵られる。内心がどうであろうとも、これは強いルールとして人の行動を縛りますの」
例えばヒドランデが開拓計画を歓迎していないとしても、開拓計画の一環として恩を受けたのなら、それを返さなければならないということらしい。
「ヒドランデ近隣の空賊を討伐したとすれば、ヒドランデ側はそれに対して礼をしなければいけなくなりますわよね? その礼として、今後の良好な関係をとこちらが要求するのは、それほど不自然ではありませんし、むしろ外面だけは美談に近いことだと思いません?」
外面だけはと発した時点で、美談では無くなると思う。ただし理屈は理屈だ。そういうこともあるだろう。問題がまったく無いわけでは無い。その問題に対して、艦長はこう答えたのだ。
「皆様が心配していらっしゃる事。空賊がそう都合良く現れてくれるかどうかという話ですけれど、わたくしが指定する場所に、適切な時間で行けば、高確率で存在すると断言できますわ」
ですから安心してくださいなと艦長は微笑み、俺達の空賊討伐を俺達の任務とした。表向きは違った気候での飛空訓練という名目でだ。
「どう思います? 本当に空賊がいて、戦闘になると思いますか?」
ペリカヌの小型飛空船格納庫。そこで飛行準備完了を待ちながら、レイリーが話し掛けて来た。
俺は自分の飛空船に少しばかり体重を掛けながら、少しばかり考える。彼の言葉がどういう意味なのかはわかっているが、あえて茶化してみようかと思ったのだ。
「なんだ? 空戦になるのが不安か? もしかしてビビってるとか?」
「そんなわけないでしょう? 違いますよ!」
怒鳴るレイリーだが、小柄であるためちっとも威圧感が無い。
(やっぱり、あんまり慣れてないな、こいつ)
空戦経験の多少は訓練の中ではあまり見えてこない。こうやって実戦を前にした時の態度を見ることで、漸く出来るやつかどうかが分かってくるのである。
レイリーは飛空船操縦の腕は良い。それはこれまでの訓練で分かっていた事であるが、一方で万一にでも実戦が待つこの段階で、無暗にエネルギーを消費する様な怒鳴り声は上げない方が良い。そういう事が分からないというのは、経験の浅い証明であった。
(余裕があるなら、ケツ持ちしてやるか。初戦で仲間が撃墜されるのは気分が悪いしな)
そう考えるが言葉にしない。それを言えば、さらにレイリーが怒ることが容易く予想できたからだ。
そうして、空戦そのものがあるであろうことを確信している自分に俺は気付いた。
「覚悟はしとけよ。空戦はある。多分な」
レイリーをなだめる様に手のひらを相手に向けつつ、その予感を口にした。
「だから、なんでそう言えるんです?」
何故かと言われて、その理由について考える。何故、俺は空戦があるだろうことを予想したのか。
「根拠は………あの艦長の目だな」
「目が、何か?」
「あ、いや、本気の目だったろ? ああいう目は、嘘は言わないさ。少なくとも艦長は空戦は必ずあると思ってるんだ。なら、俺だって信じるってもんだろうよ」
「そういうもんなんですか?」
そんなはずは無い。ただの屁理屈だ。本気の目をして騙す奴もいれば力不足で失敗する奴もいる。
俺があの目を見て確信した事は、弟と同じ目であるということだ。そうして俺とも同じ目をしているはずなのだ。
(あれは決意している目だ。どんな手を、どんな方法を使ってでも、自分の願いを果たす。そんな目だ)
あの艦長にして元お姫様が、これまでいったいどの様な目に遭い、何を思う様になったのかは分からない。だが、俺達と同類であることは分かる。
「良いから空戦の準備だけはきっちりとしとけって。俺が保障してやる。その準備は損にはならないはずだ」
「………そりゃあ、まあ、命令ですから」
納得し難い様子のレイリーを見ると、色々とぶちまけたくなる衝動に駆られる。勿論、そんな感情は表に出さない。
何かに対して復讐を誓っている思いなど、同類相手にしか言葉にできぬのが世の常であった。




