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フライトコロナイズ  作者: きーち
第8章
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6話 生きるか死ぬかへの分岐点

 ロンブライナの前方をレイリーの小型飛空船が飛んでいる。彼はロンブライナの援護や牽制のためにと言う理由で随伴してくれているが、実利的にはあまり意味が無い行動ではある。

(黒鷲の攻撃は、どんな種類のものでも、掠っただけで小型飛空船はアウトだ。だから、壁になるとか、敵の注意を引くとかは、あまり意味が無い……)

 だから出撃するだけ無駄だとは、俺には言えなかった。無茶をしているのはこちらであり、向こうはただ、その無茶に、出来るだけ付き合わせて欲しいと言っているに過ぎないのだ。

「まあ、あれだ。お前は生き残れよ。別にこんなところで死ぬこたぁ無いんだ」

 そろそろ潮時だろうと、俺はロンブライナの速力を限界まで上げる。限界速力はこちらの方が上であるから、レイリーのそれを超え、ついには後方へと追いやる。

 さらに差を広げて行くロンブライナ。これでお別れだという意思を強く相手へと示すのである。

「さあって、道連れにするならやっぱりデカい方が良いよな! 男の子ってのはデカい飛空船が大好きなんだからよ!」

 そうして、ロンブライナは相手の攻撃線中へと突撃していく。幾つもの光線が飛び交うこの状況だが、それでも隙はある。

 光線は直線にしか飛ばない。いきなり撃たれればそれこそ防ぎようのない攻撃だが、同じ角度、同じ一本線状にしか飛ばない光線なのだから、その線をそのまま障害物だと思えば良いのである。

 その線上にはロンブライナを侵入させず、光線と光線の間を抜けるアクロバティック飛行。それが俺のすべき事だった。

 幾重もの光線であったが、あくまで攻撃対象の主体はシームルグ。狙う大きさが違う以上、ロンブライナが潜れる隙間はそこにある。

(あったとしても、それが敵の懐まで安易に続いてるわけじゃあねえってのが厄介だよなっ)

 光線は常にシームルグを追っている。シームルグもシームルグで、その光線によるダメージを抑えようと移動を繰り返しているため、光線の角度や狙う先は常に変わり続けているのだ。

 それを先読みし、回避し、さらに黒鷲へと接近していく。生半可な集中力と操縦技術では、数秒も経たずに地面へと落下するか、光線により蒸発するかしているはずだ。

 だが、不思議と俺の頭の中は冷静で、未だ撃墜されずにいた。

「なんだ? 不思議だ。こんな感覚は初めてかもしれない。何時もは熱くなるか……頭の線が焼き切れそうになるくらいにチリチリしてるってのに……今は……」

 涼しかった。体感的なそれでなく、頭の奥底が透き通る様で、そこに心地よい風が吹ている様な、そんな感覚。

 冷静というよりもすがすがしいと表現する方が近いのかもしれない。考えてみれば、熱くなればなるほど、頭を追い詰めれば追い詰めるほどに、限界は近くなっていく。

 だが今は違う。今のその状況はそうではない。むしろ、ロンブライナと共に、どこまでも飛べそうな気さえしてくる。

(極限状態になった飛空士は、空に天国を見る……なんて話があったな。あの世にまっしぐらって意味だと思ってたけど、こういうことか?)

 死を覚悟したことで、体が素直になった様な気がした。出来る事と出来ない事がはっきりと分かり、目の前の物事をすべて頭の中に受け入れる。だと言うのに、その行動が苦ではない。

(こりゃあ、最後の瞬間まで、行けるかもな)

 操縦桿を握る手が、我知らず強くなる。微妙な動きが必要となるこの状況では、そんな握りの強さも一瞬だった。そのすぐ一瞬後には、ただそれを小刻みに動かす手があるのみ。

(黒鷲の真正面から接近して……それからは……うん)

 敵の攻撃装置へと接近していくわけであるが、それは黒鷲の正面部にある。正面と言うくらいだから、勿論、壁の様に垂直になっている場所に取り付けられていた。

 ロンブライナに取り付けられた兵器は、幾ら効果があると言っても、それは直上より落とし、ぶつけなければ効果を発しないものである。

 真正面から近づき、真正面の兵器群へぶつける。そうしなければ効果が無いのであるが、そもそもそれが出来ないという矛盾。それをどう解決するかについて、俺はとっくに答えを出してしまっていた。

(ロンブライナごと、ぶつかる。そうすれば、真正面からの攻撃もできるだろ……)

 死を覚悟する。それは文字通りの意味だった。最後の最後、自らの意地を通すために命を捨てる。

 誰が聞いても馬鹿らしい選択だ。俺だって馬鹿らしいと思う。だが、こうしなければ、俺は新たな人生を受け入れられそうにない。だから命を捨てるのだ。

 九割がた死ぬ。それはその九割に成功した場合の可能性すべてが含まれている行動。そうしてどうにも、残りの一割にはなりそうになかった。

 感覚が超然とした状態へ。自分どころか、ロンブライナと、それを取り巻く空間すべてを把握できている。そんな状態のまま、ロンブライナは黒鷲へと近づいて行った。

 光線すらも避けている様な挙動。それは先読みが過ぎた錯覚でしかないが、傍から見れば、奇跡を起こしている様に見えただろう。

 ただ、それは死に行くものの命の光だ。何時もの俺には決してできないことで、特殊な精神状態だからこそできる行為。

「さあ、あと少しでって……なんでそこにいやがる!?」

 驚き、声を上げた。黒鷲が、何かをしてきたということでは無いのだ。そことは違う部分。違う景色にそれはあった。

 レイリーの小型飛空船の姿が。

「お、おい! 何やってんだ! 危ないだろ!」

 レイリーの小型飛空船は、黒鷲の射線上にこそないものの、ロンブライナと並走する様に小型飛空船を進ませている。

 そのままでは、ロンブライナと共に黒鷲にぶつかってしまうかもしれない。そんな危険な飛空に、静かだった俺の心が乱れた。

(どうする? おい、どうする? あいつまで巻き込むなんて、んなことできやしないだろ!?)

 自分の命だけなら良い。だが、見知った相手が自分と心中しようとするなんて看過できなかった。

 レイリーを如何にして助けるか。いや、彼を助ける方法は簡単だ。俺が、この特攻を止めれば良い。そうすれば、あいつもさっさと引き返すだろう。

 だが、それができるならとっくにしている。

(くそっ……考えたな。ってことは何だ? 俺は、黒鷲に一泡吹かせた上で、無事、帰還することを、今からやらなきゃならないってことか!?)

 そんな方法があれば、とっくに行動している。それが出来ないからこその今なのだ。というか、そもそも、そんな事に思考を回す余裕が今は無い。

 少しでも手元を誤れば、ロンブライナごと撃墜されて……。

「手元……には」

 リュックサックの様なものが近くにある。何時でも手に取れる様にと、操縦桿の近くに置いたそれ。

 弟のエイディスから、ロンブライナがやられるかもしれない時に紐を引けと言われているリュックサックである。

 別に、これが今の状況を打開できるとは思わない。思わないが、今、俺にできる数少ない行動がそれだった。

 ロンブライナをさらに進行させ、このまままっすぐ進めば黒鷲にぶつかると言ったところで、俺はリュックの紐を強く握った。

(おい、神様。ほら、あれだ。あの破壊神とか言う人形みたいな奴でも良い。俺は別に構いやしないんだ。だけどな、あいつまで俺の死に突き合わせる必要なんてないだろ。だから……なんとかしてみせろ。分かったか?)

 それだけ、心の中に思う。そんな事考えたって仕方ないとは思うが、愚痴くらいは言わせて欲しい。出来る事とやれる事はすべてし尽したのだ。だから後は……ただ、神に祈るだけだった。

 俺はロンブライナの飛行を安定させた後、リュックについた紐を引いた。




『恨み節なんて言われても困るな。いや、恨み思い。と言うべきかな?』

「な!?」

 リュックを引いた瞬間、俺は暗闇の中にいた。ただの暗闇ならあの世か何かだと思ったのであるが、そうではない事が、目の前の人間によって分かる。

 いや、人間ではない。これは人形だ。真黒な、不気味で、気色悪く、偉そうで、紳士ぶって―――

『おおっと、そういうのは頭の中でも考えられ続けると、こっちだって傷つく。止めてもらおうか。というか、前に名乗っただろう? 私は破壊神だと』

「夢か何かだと思ってたよ」

『嘘だな。であれば、あの黒い球で起こった事象も嘘になる。ああ、安心したまえよ。君らはあれを上手く使ったし、その効果は今も継続中だ。いや、もうすでにその意義を果たしたと言うべきか』

 暗闇の中で浮かぶ一体の黒人形。破壊神らしいが、どちらかと言えば人形の詐欺師だ。以前、一度出会った時と変わらぬ、そんな詐欺師染みた人形。

『嘘を吐いてはいないだろう? あの黒い球だって真実だった。今、君らの街が害を受けていないのは、私の行動のおかげとも言えるだろう?』

「そうやって、いちいち心を読むからそう思うんだ」

『ふむ? なるほど。実際に心を読めたとしても、言葉にするのは止した方が良い……か』

 というか、そもそもこの現象は何なのだ。俺はロンブライナで特攻の最中だったはずだ。

「あんたが、俺を移動させたのか?」

『馬鹿を言うな。前にも言ったが、私の力はあの穴倉の中だけなのだよ。ただし……一時的にだが関わり、黒い球の所有権を渡した君には、ある程度の干渉がまだ出来るわけだな。だが、君を大きく移動させるとかそういうことはできない。今とて、単に、君の頭の中に話し掛けているだけなのだよ』

 つまり、単に幻覚を見せているだけ。ということらしい。となると、俺はまだロンブライナの操縦席で死を待つだけの身ということか。

『それはどうだろうな? まあ、私はね。君が私に愚痴を言うものだから、それに対して文句を返しに来ただけなのだよ』

「は? 文句?」

『神様がどうとか言う奴だ。なんとかしてみせろと言っただろう?』

「うん? 何とかしてくれるってのか?」

『そんな必要はないと言いに来た。いや……違うな。手は貸すが、それは単に君の弟が間抜けで、君も君でちゃんとそれを確認しないからで……ああ、つまりは、最後の手が誰しも抜けているということだな。だから私が、それくらいの恩は返すべきだろうと……』

「おいおい。ちょっと待ってくれよ。恩だって?」

 人形の言うことはさっぱり分からないものだったが、一番分からない部分について尋ねることにした。

『ああ。恩だよ。願いを叶えてくれただろう? 彼らの命脈を絶って欲しいと』

「命脈っつたって、あんたが言ってた彼ら……俺達が辿り着いた時には、もう最後の一人もミイラ姿だったんだぜ?」

『誰しもが死に、その遺産だけが暴走する。そんな状況に終止符を打ってくれと、そういう頼みだったのだがね……滅亡した彼らの道具が、次の世代の人間を滅ぼしているなどと、笑い話にもならん』

 ああ、つまり、この人形は、彼らにとっては本当に神様だったのだろう。破壊神と名乗ったが、それは、しっかりとした終わりをもたらしてくれる存在だと言うこと。

 中途半端な状態で、その終わりすらも汚され続けたその状態を解決する。そんな存在なのだ。

「あんた、もしかして、言動で思うよりかは良い人間なのか?」

『神様だ。まあ……兎に角、ここからやるのは恩返しだ。と言っても命を救うとか、そういうことじゃあない。私に穴より離れた君の命にまで干渉する力は無いからね。だが、まあ、道具を適切な位置で、適切な形で発動させることはできると、それだけだ』

「待てって。まだ、何の事かさっぱりだ一体あんたは何を……」

『もう会うことも無いだろう。いや、違うな……世界に果てがあるのならば、また会えるだろう。その時もまた、破壊の神としてだが』

 人形はそれだけを告げると、俺のことをじっと見た。人形の空洞の如き目が、薄くなっていく。いや、輪郭そのものも。

 景色が、真っ暗であるその景色が薄れて行く。暗闇が薄れるということは、白に染まって行くということだ。

 明かり、太陽の光。それが視界を染めて行く。そうして、漸く気が付く。どうやら俺は、目を開けようとしているらしかった。




 目を開く。それは世界を始める行動の一つだ。最初に言葉があったり、最初に世界があったりとかではない。誰かが初めて目を覚ましたその瞬間に、世界というのは始まるのだ。

 俺は……その時、漸く新しい世界を始めることが出来た。

 始まりの世界は、いつも通りの世界だったと言える。遥か遠くにある地平線。どこまでも続く大地が見えて、同じく、どこまでも続く空も見えた。

 空では、二つの巨大飛空船が戦っていた。片方の巨大飛空船、俺達が黒鷲と呼んでいたそれは、かなりの数の攻撃用兵器を損失している様に見えた。丁度、ロンブライナが向かっていた部分の攻撃が止まっていたからだ。

 そうして、その隙に向かって、シームルグが戦っていた。隙間の開いた敵の攻撃の中を掻い潜り、シームルグが持つすべての火器を使って黒鷲へ攻撃を仕掛けていた。

 黒鷲も耐えてはいるが、形成は完全に逆転していると見えた。敵は意思を持たぬ反射機械。持ちうる選択の中で最善を選ぶことはできても、その選択肢すべてが敗北となれば、新しい選択肢を生み出すことができない相手なのだ。

 シームルグを動かす、あの鬼の様な艦長は、ほんの少しのミスも無く、黒鷲に攻撃を加えて行くことだろう。

 そんな光景を見ながら、漸く俺は俺自身の状況を理解していく。

「こりゃあ……脱出装置って……ことか?」

 出撃前にエイディスより貰ったリュックを俺は背負っていた。リュックからは紐がピンと張り詰めて伸び、紐の先には膜状の布が広がっていた。

「バルーン……っていうより、落下を遅らせるためのデカい滑空用の布って感じか。ってか、大きい傘みたいなもんか。紐を引いたら、これが一気に広がる仕掛けで……って、おいおい。じゃあ、まずリュックを背負って、ロンブライナの外に出る必要があったんじゃねえか」

 なるほど。先ほどまでに見た黒い人形が言っていたことはこれなのだろう。あいつは俺の命は救えないが、俺をロンブライナの外まで出し、このリュックを背負わせることはできた。紐自体は俺が引っ張っていたから、あとはそのまま空からゆっくりと落下するだけ。

「けど、命の借りと言えば借りじゃねえか。世界の果てが見れる頃ならまた会えるだって? それまでは借りを返させないつもりかよ」

 向こうは恩を返したと言った具合だろうが、それでも、命の恩人になってしまった事は変わりなかった。いや、神様なんだろうが。

「何にせよ……これで終わり。か?」

 シームルグが完全に黒鷲の優位に立っていくのが見えた。それが、俺がやったことの結果だと思うと、気分が晴れる思いがあるものの、どこかで心に靄が掛かっている様な気分もある。この気分の正体は何だろうと考えてみて、漸く、思い出す。

「参ったな。レイリーの奴に何て説明しようか?」

 俺の近くを、レイリーの小型飛空船が飛んでいた。特攻しようとした事に対する言い訳も考えなければならないし、結局は生き残った事の弁明も準備しなければならない。何より、どう助かったのかの説明をしなければ。

「なんだろうな。先にあるのが死ぬ事だって覚悟するのは簡単だけど、生きるってなりゃあ、そう簡単じゃねえってことか」

 大地まではまだ距離がある。このままゆっくりと降りて行くのであれば、考える時間は幾らでもありそうだった。




 その日。後に外世界侵攻事件と呼ばれる事件は幕を閉じた。発生した事象に対して、内世界が受けた害は殆ど無く、ただ大量の巨大飛空船が侵攻したものの、途中でその進む動きを止めて、どこかへ去って行った事件として記憶されることになった。

 唯一、ガーヴィッド公国だけが、巨大飛空船同士の戦いを目撃していた。が、その戦いも、本国に何かしら被害を与えるものではなかった。

 結局、二つのうち一つは、もう一方の巨大飛空船により破られ、残りの一つも、どこかへと消え去ったそうだ。

「という顛末になっている。外世界の脅威こそあれ、被害は無かった。故にこれからも一層、外世界の探索を続ける。ということで事実は落ち着く事になるだろう」

 巨大飛空船同士の空戦を行ってから暫く。ガーヴィッド公国の軟禁が続いた後、俺は庁舎内にある部屋の一つへと案内された。

 狭苦しく、二人の人間が対面となる机と椅子が一セットのみ。俺の目の前に座る人間はと言えば、報告官のサーイル・エンゲンであった。

「後始末ってのは大変ですねぇ。いや、俺も何時まで不味い飯と狭い部屋での寝泊りが続くのかって文句もありましたけど、あんたの立場にゃあなりたくないです」

「ふんっ。言っておけ。確かに事の後始末は面倒かもしれんが、ここで存在感を発揮すれば、出世街道にもまた戻れるかもしれんのだからな」

「諦めた方が良いと思うけどなぁ」

 サーイルは巨大飛空船に関わる一件について、その関係者かつガーヴィッド公国に近い立場であったためか、事の後始末係をしているらしい。

 後始末というのはつまり、去って行った巨大飛空船群はともかくとして、残ったシームルグと、撃墜した黒鷲についてだった。

「説明した通り、黒鷲の残骸については研究用として公国が回収することになる。多くの人間が撃墜された姿を見ているから、これは問題ない。だが、一方でシームルグだ」

「あれ、俺達は乗ってないってことになったんでしたっけ?」

「そうだ。そもそも君らは脱走事件なんて起こしていないし、故にシームルグに乗っているはずも無いと、そういうわけだ」

 シームルグはあくまで外世界よりやってきた存在という形で決着を付けたいのだとの説明を受けていた。

 シームルが、かつてラクリム王国が研究していたものであり、それが引き金となって外世界の巨大飛空船に国が滅ぼされたという真実は、ガーヴィッド公国にとっては些か都合が悪いのだそうだ。

「公国は植民開拓事業によって成り立つ国家だ。そのためには外世界の探索を行い続けなければならない。そんな国に、外世界との接点は国を滅ぼす可能性があるぞと喧伝するのは芳しく無いのだよ」

「芳しく無いったって、実際、あれだけの事件が起こったわけですからね?」

「事件は起こったが、なんやかんやで滅んではいない。まあ、滅ぼさない様に我々が動いたわけだが。今のところ、我々がその事を声高に宣言しない限りは、なんだか知らぬが、外世界より巨大飛空船の群れがやってきて、仲間内で争った後に、さっさと帰ったということにもできる」

 つまり、ジームルグもまた内世界と無関係でないと、本格的に内世界が余計な事をしたせいで、外世界から侵略を受けた。ということになりかねないらしい。

 実際そうなのであるが……。

「あー、けど、巨大飛空船の中枢は撃墜したわけですし、侵略云々については、もう心配する必要はないんじゃないですか?」

「本当にそう思うかね?」

「はい?」

 サーイルが部屋に取り付けられた、部屋と同じ小さな窓へ少し視線を向ける。外に何かあるわけでも無いのだが、とりあえず、窓の外には勿論、外の世界がある。

「だいたい、集まった巨大飛空船群はどこかへ去っただけだ。その場に留まらずにな? もしかしたらまた内世界を荒らすかもしれないし、そもそも、外世界の害が巨大飛空船群に関わるそれだけとは限るまい」

「で、そんな危険があるのは当たり前な世界なんだから、いちいち余計な情報で立ち止まってはいられないと」

 分からない話でも無い。世の中、本音だけで回していればすぐに限界が来てしまう。全員がそれで損をするか、嘘を信じ切ってしまった人間だけが割を食うかのどちらが良いかの問題だ。

「我々にとって好都合なのは、おかげで我々の罪に対しての罪も不問になった事だ。そもそも無かったことだからな」

「けど、じゃあ無罪放免で解放ってわけでも無いんでしょう? 真実を知った上で、事実はそうじゃないから口止めさせるってのは、そういうことだ」

 これからどうなるか。今の不安はそこにある。一時よりかは悪い様にはならないんじゃないかと思うのだが、それにしたって希望的観測であろう。

「だからまあ……その件なのだがね。これは希望者のみに与えられる選択肢なのだが……」

 サーイルがここらかが本題だとばかりに話を始める。何もかもが一旦終わった俺達の旅の、そのさらに先についての話を。




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