1話 空戦
「味方はどうしてんだよ!!」
意識を過去から現在に戻す。空を駆ける羽。空戦用の小型飛空船を操縦しながら、アーラン・ロッドこと俺は、狭い船内で叫んでいた。
船内でうつ伏せになりながら、眼前に映る光景を見つつ、左右に飛空船を揺らす操縦。これは敵飛空船からの攻撃を避けるための動きだった。
同じ空域に、敵は5。うち1つを撃破し、追って来た4の攻撃を避けているのが現状だ。敵の飛空船の型はかなりの旧式であり、こちらの飛空船より速度は遅い。小回りに関してもこちらが上。
攻撃方法も、こちらが1つ落とした時に使ったものと同様の、鉄片を飛ばすものしかないのだ。鉄片は直線上にしか飛ばないため、小まめに自らが搭乗する飛空船を動かせば、滅多に当たるものではない。
(接近されなきゃだけどな!)
こちらの飛空船よりも敵の方が遅い。と言っても、今、追われているのはこちらであり、放たれる鉄片を避ける動きをしている分、その進行速度は同じ程度だと思われる。
つまり、距離を置いて、こちらが再度、攻撃に回るということは中々にできないのであった。
さらに言えば、敵はこちらの取り囲もうとしている。後ろから追ってきている敵飛空船は2つ。残り2つは、さらに斜め後方に、それぞれ広がる位置にいた。
「ちょっとでもこっちがミスれば、一気にお陀仏だな………」
一つの操縦ミスで命を落とす。小型飛空船での戦いはそんなルールが存在している。普通に追い付かれれば後方の2つに撃たれ、それを避けようとすれば、後方の2つを包む様に広がる2つ叩かれる。ではどうすれば良いか。このまま逃げ続けるか。
(それもまあ一つの手だが、それ以外の選択もあるよなぁ!)
飛空船での戦いにおいて、敵を撃破する方法の一つ。一つの操縦ミスで命を落とすのであれば、そのミスを誘発させる。
俺はレバーを動かし、後部のフライト鉱石による推進装置。その向きを、一気に下方へと動かす。
推進方向が急激に変化すれば、船体も大きく傾く。今回の場合は、船体の前面部が上向きに、後部が下向きとなった。
平たい三角形の形をしている俺の飛空船は、その腹を、今までの進行方向に向けたことになる。となるとどうなるか。
前方から激しい風が船体の腹に叩きつけられ、飛空船が急減速するのである。それは一種の衝撃と呼んで良いくらいの激しさで、船体そのものを軋ませ、揺らす。
回転し、錐揉みする様にブレるこちらの船が、後方の敵からはどう見えるか。簡単だ。前方から突っ込んでくる塊である。
(こ……れ……はっ……!!)
ブレて揺れて回転して。ぐるぐると変わる景色と、体を襲う衝撃。酷く辛いものであるが、それでも俺自身の平衡感覚を手放さない。
案の定、敵は慌てて攻撃を忘れる。むしろこちらの船を避ける様に動いた。すぐ後ろに付いていた2つの船であるが、こちらの急減速により、今では俺の前方にいる。
そうなって後、すぐさま船の姿勢を立て直す。恐らくはこちらの動きに驚いているであろう二つの敵の後ろにしっかりと付くと、俺は鉄片を放つトリガーに指を掛けた。
こちらの攻撃を避けるため、さきほど、俺がやっていた様に船体を左右に振る二つの敵であるが―――
「おいおい。美味そうに尻尾を振りやがって! そんなん見せられたら、食っちまうぞぉ!」
速力と機動性はこちらの方が上なのだ。左右に揺れる敵には容易く接近できる。
接近してしまえば、揺れたところで確実に鉄片を叩き込めるだけの技量くらいはあるつもりだ。
(一つと! 二つ!)
一つ目の敵の尻に鉄片を叩き込み、そのまま二つ目の後方に付き、再度鉄片を放つ。鉄片が敵飛空船に突き刺さり、飛行のためのバランスを崩した二つの飛空船が落ちて行く。
しかし敵もそのまま何もしないわけではない。広がっていた二つの敵が、こちらに鉄片を放ってくる。
こちらが固まる二つの飛空船を排除した結果、遠慮なく、こちらに飛び道具をぶち込める状態になったのだろう。
(こっちはもう3つ落としてる! こっちが落ちても、まあ採算は取れるだろうが、そう簡単に落ちてやるものか!!)
飛空船を加速させることで、なんとか飛び来る鉄片を避ける。いや、避けたつもりだったが、幾つか当たった。
ガタガタと飛空船が揺れ、バランスが崩れる。
「あっ、くそっ、だから落ちるつもりは無いって!!」
まだ撃沈するほどの崩れでは無い。レバーを細かく操り、飛空船の体勢を立て直すのであるが、さらなる追撃を敵飛空船は狙って来ていた。
ブレるこちらの飛空船に、敵の一つがさらなる鉄片を放ち、もう一つが後方に付く。完璧な布陣だ。こちらが逃げる余地がこれで殆ど無くなる。
(さて、どうしたもんかなぁ!)
こちらの飛空船の左後部を鉄片が掠める。さらにバランスを崩す飛空船。そこを後方に付いた飛空船が追い打ちをかける様に鉄片を―――
「飛ばして来ない? っと、漸くかよ!」
後方を見ると、そこにはバランスを崩して落ちて行く敵飛空船と、そのさらに後ろに付いた、こちらと同型の小型飛空船。つまりは味方だ。
「悪いが、こっちの戦闘続行は難しいんだ。後始末はよろしくな」
挨拶するように船体を上下に揺らしてから、こちらは帰還を開始することにした。幾らか鉄片を喰らったのだから、いつ何時、俺が乗る飛空船が沈んでもおかしくないのである。戦う余力は、申しわけ無いが残っていなかった。
飛空船の帰還先、大型飛空船『メロウピティクス』。大きく膨らんだ腹と、そこにおまけの様についた小さな羽と前方艦首が特徴の不細工な飛空船。
しかし、そここそが俺の飛空船が帰る場所であった。大型飛空船の後部に回り込み、そこにこちらの小型飛空船を近づけると、メロウピティクスの後部装甲が開いていく。そこへこちらの飛空船を入り込ませるのだ。
両者共に空を飛んでいるため、これが意外と難しい。相対速度とやらがとても大事で、速度を間違えれば、どちらかの船に大きな破損が生じる。
ただ、俺にとってはもう既に慣れたものであり、幾らか傷ついたこちらの飛空船と言えども、失敗する事は無い。
「…………ふぅ。なんとか成功っと」
失敗する事は無いと言っても、難易度が高い事に変わり無く、かなり緊張した。船内で一息吐いてから、小型飛空船下部の蓋を開け、畳み梯子を下げて、そこから降りて行く。
「おつかれさまでーす!」
こちらが降りると、左右に待機していた飛空船の整備技師が数人走り寄ってくる。
「ああ。結構やられちまった。悪いな」
「いえいえ。無事に戻してくれただけでもありがたいっすよ」
若い男の技師に話し掛け、お互い笑い合う。整備技師との信頼関係、飛空船の乗り手にとって何よりも大切だ。
空を飛ぶ際、命の半分は彼らに握られていると言って構わないのだから。
「ロッドさん。今回は幾つ落としたんですか?」
「3つだ。暇な時でも記録入れといてくれよ」
「へえ! そりゃあ大量だ!」
小型飛空船での空戦の場合、撃墜数とはそのまま操縦者の名誉となる。俺の場合、空戦目的で出ればだいたい何がしかは撃墜して帰るため、それなりに名は売れている。
俺自身、そういう名声はあって悪い気はしないため、整備技師に記録を頼んでいた。自分の船に、撃墜数の分だけ小さな星の絵を入れてもらうのだ。
「まあ、代わりに幾らか撃たれて、味方に助けられたんだけどな。誰か分かるか?」
「ロッドさんの空域だと、ベスラさんか、ガルトさんあたりじゃないですかね? 後で聞いてみれば?」
「わざわざ援護に来るってのならガルトあたりか。いや、ベスラさんも撃墜数稼ぎって可能性があるな。とりあえず艦長に報告してくるよ」
離れた飛空船同士で確認を取り合えれば良いのだが、残念ながらその様な機能は無い。後になり、飛空船を降りてから、直接話して確認するしか無いのである。
俺にしたって、このメロウピティクスの艦長に、帰還次第、直接報告する様にとの命令を受けていた。
メロウピティクス。ガーヴィッド公国が所有する小型飛空船搬送用大型母船の一番艦は、老朽艦寸前の船だ。あちこちガタが来ており、整備技師の調整が常に欠かせない。
収容小型飛空船数は5つと多いものの、無理矢理押し込む様な形になっているため、出撃も帰還も、一つずつしかできないという欠陥がある。
そんな船の廊下を俺は歩いていた。ところどころに汚れが目立つ廊下であるが、そう長く続くわけでも無いため、気にはしない。
艦長がいるのは船前方の艦首部分。艦首部分は小型飛空船内部の様に、透過の魔法が内部に施されており、装甲に覆われているというのに、内部から外を見ることができる様になっている。
艦内はそれほど広くは無く、早歩きで5分ほど。その程度で船の小型飛空船格納庫から、艦首部分まで来ることができた。
「失礼します」
艦首部分への扉を開きながら、部屋内部に聞こえる様に声を上げる。乗員であれば艦首部分への立ち入りが禁止されてはいないが、こうやっての挨拶は必須である。
艦首内部は大きな窓の様に外部透過の魔法が掛けられた壁が存在し、青空と雲が見える。その壁近くには前方と左右にそれぞれ一人ずつ作業員が椅子に座っている。構成は確か観測士1名と透過魔法調整用の魔法士が1名。さらに操舵用員1名だったはずだ。
艦首そのものの大きさはかなり広い。さすがに一軒家という程ではないが、それを一回り小さめにすれば、これくらいの大きさになるだろうか。
その中心に、白髪が目立つ髪を短く切り揃えた、これまた短く整えた白髭を撫でる老人が一人。元はそれなりにしっかりとした椅子であろうが、経年劣化によりちょっとボロくなった椅子に座っている。
その老人こそ、この船の艦長、イズール・ファイロンその人であった。
「アーラン・ロッドかね。良く来てくれた。まずは戦果を聞こうか」
優し気かつ落ち着いた口調でファイロン艦長がこちらを見やる。この艦長のもっとも素晴らしい特徴として、年相応の懐の深さというものがある。
ガミガミと煩いタイプの艦長というのも、それはそれで長所の部分があるのであるが、それでも下で働く者にとっては、ファイロン艦長の様な存在が上司の方が良い。
「はい。標的の空賊ですが。俺の空域に展開していたのは5つ。どれもこちらの小型飛空船よりは性能が低いもので、そのうち3機を撃墜。残りの2つにこちらも被害を受けたので、味方の援護を受け撤退しました」
「ふむ。予想より数が多いな。尋ねるが、敵は君の空域のみに集中していた様子だったかね?」
「集中はしていたでしょうが、他にはいないという印象は受けませんでした。味方の援護もなかなか来ませんでしたので、恐らくは別空域でも空戦は行われていたかと」
とりあえずの個人的な意見を述べるが、ファイロン艦長はそういう意見を汲み取るタイプの人である。普段からして気安いタイプであるため、こういう報告時にあれこれと考えずそのまま話せるのが有り難い。
「これは外れクジを引かされたかな?」
今回、ファイロン艦長と彼が率いるメロウピティクスとその乗員の任務は、ガーヴィッド公国が植民候補地にしている土地を占拠している、空賊の討伐である。
ガーヴィッド公国は植民地拡大策を積極的に取る国柄であり、その土地を植民地として“適した”形にする事業も行っている。
この空賊討伐もその一つだ。現在空戦を行っている空域は、近くに大きな淡水の湖があり、気候も比較的落ち着いた土地の上空であり、この土地を狙う国家は多い。
ちなみに公的には、この土地の植民地化権利はガーヴィッド公国にある。そんな土地を他国が狙う場合、色々な手段が存在しているのだが、国とは無関係の空賊に牽制をさせるという手も無いわけでは無い。
今回、空賊が大規模なものだとしたら、その可能性はグッと高くなるわけだ。
「裏にいるのはどの国でしょうかね?」
「そういう事は口にするものじゃあないよ、ロッドくん。悪いというよりは、余計な仕事を増やす事になるからね」
窘められてしまった。確かにファイロン艦長の言う通りだ。裏にいるのがどこぞの国だったとして、それに頭を悩ますのはもっと上の連中であり、俺達が背負い込む苦労は、敵が多いというものだけで十分だろう。
「牽制と言う意味で言えば、君たちのおかげで十分だろうとは思うな。だから、何も知らぬままに国へ帰還すれば良い」
髭を触りながら、前方の透過壁に映る空と、その空を飛ぶ小型飛空船を見て呟くファイロン艦長。また一つ、小型飛空船が帰って来たのだ。
「あの飛び方は多分ガルトですね。ちょっと無事の帰還を祝いに行ってきますよ」
「ああ。行動を許そう。大事無い様だったら、報告も少し遅れたって構わんとガルトくんに伝えておいてくれ」
やはりファイロン艦長は、部下に対する緩急を分かっている物言いだった。今回の任務。面倒ではあるが、そう大変なものではないと理解しているのだろう。切羽詰って考えるより、部下に余裕を持たせることを選んだ指示であった。
そんな指示を受けたため、さっそく俺は小型飛空船格納庫へと戻る。そこでは既に、帰還していた小型飛空船から乗員が降りて来ており、なにやら整備技師と話をしていた。
「やっぱりガルトだったか。おーい!」
俺は手を振りながら、小型飛空船から降りた、俺と同じ操縦員であるヘルガ・ガルトに近寄って行く。
彼女。そう、女性であるガルトは、女性だというのにかなりの長身で俺より高い。セミショートくらいで切り揃えた青髪が綺麗であるため、それが女性らしさと言えばらしさだろうか。
スタイルは良い方なので、見ている分にはとても素晴らしい相手だと言える。ただし話をするのであれば………
「アーランじゃない! やっぱり先に帰ってたの? ったく。相変わらず後方確認が下手ねぇ。あんた」
と、こんな感じで荒っぽい。小型飛空船の操縦者のだいたいは男であるため、彼女も彼女でそういう空気に馴染んでしまっているのかもしれない。
「そっちの助けを期待しての行動だったんだって。おかげで3つも撃墜できた。そっちは?」
「同じく3つ」
3本指を立てながら、自分の撃墜数を示すガルト。今回の任務に関しては、戦果は俺と同数であるらしい。彼女の同乗船の傷つき具合を見れば、彼女の方が上かもしれないが。
「って、ありゃ? 残したのは2つだった気がするんだが………」
「何言ってんのよ。私の担当空域に敵がいなかったわけじゃあ無いのよ?」
それもそうかと頷く。そうして、ファイロン艦長の予想通り、かなり敵数は多いということが分かる。
「ベスラさんとクーリングの方もそうみたいだな」
この船には現在、小型飛空船の操縦員が俺を含めて4人いる。今回出撃したのは全員であり、そのうち2人が帰って来ていないのが現状だ。どこぞでサボりなどしていなければ、敵と遭遇していると見て良い。
「ベスラさんはそうでしょうけど、クーリングの坊やがそうだとは限らなくない?」
意地悪そうな顔を浮かべるガルト。
もう二人の操縦員。そのうちの一人、ラーント・ベスラは、俺の倍近くの年齢があるベテラン操縦員だ。小型飛空船の操縦技術も職人芸そのものであり、手足の先がフライト鉱石の推進室に繋がっているとまで言われるぐらいに細緻に富んだ操縦をする。そんな彼がまだ帰還していない程度に仕事をしているとなれば、彼の空域に敵がいることは確実だ。
一方で最後のコッソ・クーリングは、ほぼ新人と言って良い腕前の操縦員である。今年で18になる俺より、さらに3つほど歳が下の少年でもあった。彼の場合、同じ空域に敵がいなくても、飛空船の操縦だけで手一杯なのではとガルトは言っているのだ。
勿論、空戦をする飛空船の操縦者として選ばれているのだから、そこまで下手ではない。
「はぁ………何時までも素人扱いしてると、何時かあいつもキレるんじゃあないか?」
「それくらいの男気見せろって言いたいのよ。こっちとしてはね」
と、格納庫で話していると、ガルトが乗っていた飛空船が奥に収納されていく。次の小型飛空船が帰ってきたのだろう。
「開閉壁開きまーす!」
整備技師の大きな声が格納庫に響いた。俺とガルトは、邪魔にならぬ様に格納庫の端にまで寄り、次の帰還者は誰だろうと見物する。
そうして小型飛空船が格納庫へ入って来た時点で、それが誰かはすぐにわかった。
「相変わらず、格納庫への着船が下手だな。クーリングのやつ………」
ガルトでなくても溜息は出てしまう。見ていて冷や冷やする挙動なのだ。今にも格納庫のどこかに、勢い余ってぶつかりそうでありながら、その前に減速が行き過ぎて、開閉壁に挟まりそうな。
「あらやだ。しかも幾らか損傷してるわよ」
「ふん?」
とりあえずクーリングにも空の旅はどうだったかと聞いてみようと思う。少なくとも空戦はあった様子であるし。
「いやあ、大変でした、大変でしたよ! っと、失礼! ヘルガさーん! 俺、今回は敵を一つ―――
「技師への報告疎かにしてるんじゃない! ほら、さっさと事後報告!」
「は、はいぃ!」
飛空船から降りるや否や、ガルトの姿を見て、駆け寄ろうとしたクーリング。そんな彼を、ガルトは怒鳴って止める。
(厳しいってより、先輩としてしっかりしてると見るべきか?)
技師とはしっかり話をする。小型飛空船の操縦員としてはある意味で必須技能であるし、そこをヘガルトは教え込もうとしているのかもしれない。
(怒鳴らなくてもって思うのは、こっちが甘いってことなのかねぇ)
コッソ・クーリングは少年らしい外見と、その金色の髪のせいか、どうにも弟と被ってしまい、俺の方はあまり厳しい事を言う気になれないのだ。
本来、経験が上の操縦員が無理にでも教えなければならないことを、俺がせず、ガルトがやってくれているというのは、むしろ感謝すべきかも。
「怒鳴る割には懐かれてるな、ガルト」
「ハッ。こっちの尻見てるのが丸わかりなのよ」
「あー。そうか。そういうのもあるよな」
クーリングはどうにも軟派なところがあるため、そこが気に入らないガルトが、ガミガミとした態度になってしまっている。そういう理由もあるのだろう。
「しかし、やっぱりクーリングも空戦をしてきたってことは、今回、敵の数は相当なもんって事になるな」
「だね。ベスラさんが幾つか落として帰ってくるとして、下手しなくても二桁の小型飛空戦が敵側に居たってことでしょう?」
今回、俺達が相手にした空賊は、飛空船の型こそ旧式であるが、数は十分に用意している相手らしい。
「艦長は貧乏クジ引かされたってボヤいてたよ」
「そう? そうでも無さそうだけれど?」
「何か気になることでもあんのか?」
今回の仕事が中々にしんどい物であることには違いないはずであるが、ガルトには違う考えがあるらしい。
「クジっていうのに当たりがあるから、外れを貧乏クジって表現するじゃないの。最近、これくらいの仕事は普通っぽくない?」
「まあ、確かにな」
今回ほどでは無いにしても、楽な仕事というのは少なくなって来ている気がする。その理由はなんであろうかと頭を悩ませているうちに、一つの答えが思い浮かんだ。
「近場に、楽な空戦地帯ってのが無くなって来てるみたいだな」
空戦。それが行なわれる状況というのは幾つかある。戦争か防衛か、それとも威圧か治安維持用か。それくらいであろう。
戦争に関しては、表立ってガーヴィッド公国と戦争をしている国というのは存在しないため省くとして、それ以外の目的については、とある一つの事柄が関わって来る。
「適当な植民地が少なくなって来てんのよ。きっとね。ほら、この前、お偉いさんが近隣諸国も発展が進み、とても喜ばしいだかなんだか言ってたじゃない」
人が豊かになれば、それだけ人は増える。さらには居住地域や自らの仕事に対しても欲求も増える。
そうなれば、国は適当な仕事場や居住区を用意しなければならないわけだ。ガーヴィッド公国はそれを、植民地開拓事業を行うことで幾らかの解決を図っている。俺が今やっている仕事にしたってそうだ。
その仕事が難しくなっているということは、それだけ開拓適正地域が無くなって来ているということ。
「となると、そろそろありそうだよな」
「ええ。どうする? あんたは参加するつもりある?」
「最近は随分と余裕も出て来たし………飛空開拓計画か。挑んでみても良いかもしれないよ」




