3話 視界からあふれるほどで
時間が過ぎ、翌日になると、約束通りにアニーサ艦長はヴェルの街へと向かうことになった。彼女をロンブライナで送り届けるのは勿論ながら俺、アーランであり、謎多き街へとまた向かうことになるのである。
ロンブライナを所定の位置まで移動させて着陸し、街まで歩くこと少し。その間にて、俺はアニーサ艦長に話し掛けられた。
「とりあえず幻には見えませんわね」
ヴェルの街にある高き尖塔を見て、アニーサ艦長は呟く様に話をする。前回は、その幻に酷い目に遭わされたのだから、その部分は彼女にとって酷く重要なのだろう。
「夢の中で、これは夢だと気づけるかどうかって問題じゃないですか?」
幻と気づけるのならば、それはまだ良い幻だ。幻だとも気づけないのが一番厄介で、前回はその通りに危なかった。
いや、それでも違和感に気が付けたので、その危険から脱することができたのだが。
「あれだけものものを違和感無く見せる幻があるのでしたら、わたくし達にはどうしようも無いこととして諦めましょう」
危険かもなどという想像は、どこまで行っても存在するものであり、幾らかは受け入れなければならない。
挑戦する者にとって必要なのは、その受け入れる線引きをどこにするかの判断だとアニーサ艦長は話す。
「受け入れて、そうじゃあ無いことを祈るってことしか、できないか……」
天を見上げる。今日は晴れであるがやや雲が多く、塔は天を突き刺す様に雲を貫いていた。どこか幻想的風景だ。これが本当に幻想なのだとしたら、それはそれで脅威なのであるが。
「それで、そろそろ見えてきますけれど、あれがそうなのでしょうか?」
ヴェルの街の門。それがかなり近くに見え始めたと言ったところで、門の前で待つ人間がいた。
そのうち3人については知っている。昨日会った門番と、他ならぬブラッホとミナ導師だった。
そうして、他に2人。腰に棒のようなものをぶら下げた体格の良い男と、腰が曲がり禿頭で、長く白い髭を生やした老人が杖を突いて立っていた。
「そうですね。明らかにこっちを待っているみたいです。おーい!」
手を振り、声を掛けてみると、あちらもブラッホが手を振り返してきた。やはり、あちらに向かえば良いらしい。
「見る限りにおいては、初接触は上手く行っているみたいですわね」
それだけ述べると、アニーサ艦長はやや足を速くして歩き始めた。確かに、一日街へ滞在し、特に変わった様子の無いブラッホとミナ導師を見れば、接触そのものは穏便に済んでいると言って良かった。
暫く歩き、ブラッホ達のところへとたどり着いた頃合いで、アニーサ艦長が頭を下げた。
「お待たせさせてしまった様で申し訳ありませんわ。わたくし、ガーヴィッド公国飛空開拓計画の代表者兼大型飛空船ペリカヌの艦長をしております、アニーサ・メレウ・ラクリムです。そうして、さらに謝罪しなければならないのでしょうけれど、あなた方のどちらが今回、わたくしと交流をしていただける、街の代表者の方なのでしょうか?」
淀みの無い挨拶だ。言葉が本当に通じるかどうかの試しでもあるのだろう。こういう言葉は、本当にこちらの言語を理解していなければ、返せないものであるはずだ。
いちいち、言葉や動作で相手を試そうとするアニーサ艦長らしい。
「こちらの、ダダラージァ・ラルフェンルどのが我々の街の長をしていらっしゃる。が、話す際は私を通していただけるとありがたい」
隣の老人を手で示しながら、腰に棒(どうやら武装らしい)を下げた男が話をする。
「それは……目上の相手に直接話してはならない、などの文化が?」
「いや、違うのだ、艦長。こちらの方はそもそも、我々の言葉を話せんのである」
と、ブラッホが事情を説明してきた。彼に曰く、ダダラージァは喋れないわけではなく、俺達の言語を理解できないだけなのだとか。
そう、これが普通だ。ヴェルの街で、彼らは彼らの文化の中に生きているのだから、突然、外からやってきた人間の言葉など分かるはずがない。だが……。
「長へは私が言葉を伝えるし、長の言葉は私があなた方へ伝える。そういう形で話を進めていただきたい。アニーサどの」
武装した男が、こちらからの言葉に対して的確に返してくる。そうだ、こちらの方がおかしい。
何故、翻訳して伝えられるほどに、こちらの言葉が流暢なのか。彼らは何時、どこで俺達の言葉を知ったのか。
(文化として知ってるって可能性は無くなったよな。なにせ、街の長がしゃべれないってんだから)
何かあるのだ。こう、魔法的なものかもしれないが、常識外の理屈が。
「では、とりあえず先ほど名乗った通りのことを、ダダラージァどのへ」
「分かった。暫し待って欲しい」
武装した男が、ヴェルの街の長の耳元へ口を近づけ、ぼそぼそとした声で何かを伝えている。それが終わると、今度はダダラージァが男の耳元へ何やらを話し始めた。
「ほう……なるほど。お待たせした、アニーサどの。長はあなた方を歓迎するし、もし周辺の土地への植民を希望するのであれば、状況次第でそれを了承できなくも無いとのお達しだ」
「え、ちょっと、いきなり!?」
俺はつい、驚きの声を上げてしまった。とんとん拍子に話が進み過ぎである。というか、どうしてこちらの開拓計画の目的まで知っているのか。
「ああ、すまんな、艦長。ダダラージァどのとは話す機会があり、こちらの立場をある程度は明かしてしまっている」
またもやブラッホが状況を説明する。事前にブラッホやミナ導師が話しを進めていたというのなら、話が早いのも分からなくはないが、それにしたってどうなのだろうか。この状況は。
「いろいろと仕事をしていただいた様であり難いですわ。けれど、やはり植民の話へといきなり向かうというのは、少々危うい気もします。その点、ダダラージァどのはどうお考えなのでしょう?」
「ああ、それについても、ちょっと待ってほしい」
また男とダダラージァがやり取りをする。そうして少し待った上での返答が始まる。
「どうせ、我々はこの街を遠く離れることはない。なら空いた土地を好きに使われるくらいは了承しようとのことだ。塔に近づきさえしなければそれ良いと」
随分と気前の良い話である。これを受けてしまえば、こちらの開拓計画の目的の大半が叶うくらいには。
(アニーサ艦長や俺にとっては少し不味いかもか?)
ここで飛空開拓計画が完遂されてしまえば、俺達の方の目的は果たせなくなる。恐らくはアニーサ艦長自身、なんとかしようとするだろうから、俺はまだ冷静に話の展開を見守っていられるものの。
「とてもうれしい申し出ですわね。ですけれど、少々時間をくれませんかしら? 例えば先ほどまで街に滞在していた二人にも話を聞きたいですし、できれば、わたくし自身、ヴェルの街を拝見させてから、答えをだしたいところで。あなた方も、もう少し、わたくし達について知りたくはありません?」
どうやら、問題を先延ばしにする選択をしたらしい。現状、悪い選択肢ではあるまい。話が突拍子無さすぎるのだ。
良い展開とは言え、自分たちが置いて行かれている状況というのは喜ばしくあるまい。だから、とりあえずは自分たちのペースを取り戻すためにここでの話し合いを終了させるつもりなのだろう。
「ふむ……なるほど……長はこう言っている。我々がそちらについて積極的に知りたいことは無いが、そちらがこちらを良く知りたいと言うのなら歓迎しようと。街への滞在も許可するという話だ。今度の滞在者は今の二人に加えてそちらの二名ということでよろしいか?」
「ええ。そうですわね。とりあえずはそれで。ああ、けれど、少し艦に戻って報告を行ってからでよろしいでしょうか? いきなり、艦長のわたくしが長期間、こちらへ出向いたまま、返事もせずに帰らないというのは問題ですので」
「ああ。そちらについては構わないとのことだ」
なんとかこの場を乗り切ったらしいアニーサ艦長。ただ、ここからペリカヌへ戻った後、きっと今回の件の会議は紛糾するであろうことは予想できた。
ペリカヌへと戻ることになった俺達であるが、それでも今後の方針が大きく変わるということは無かった。
つまり、誰もが同じことを考えたということ。いきなりで展開が早すぎる。少し様子を見た方が良いんじゃないかと。
丁度良く、艦長が相手との交渉で、さらなる街への滞在許可を得たのだし、それに乗ってみるのもありだろうとも。
「実際、そろそろ補給も必要になってくるころですし、そちらの件に関しても、引き出してみるつもりですわ」
「そりゃあまあとても良いことではありますね。なんで俺が同行することになってるのかは謎ですが」
現在、場所はヴェルの街の真っただ中だ。街の中を歩きつつ、街についてを知ろうとしているその途中なのである。
問題としては、そんなヴェルの街への偵察に、俺が駆り出されているということか。
「だって、ヴェルの街の長との話し合いで、追加で街に滞在する人員は、わたくしとあなた。ということになってしまったんですもの」
話と言うのは流動的であり、どのような結果に至るかは、話している人間にも中々予想できないものだと言うのはアニーサ艦長の弁であった。
「で、どうするんです? 街をこのまま観察してペリカヌへ戻るって手は無いんでしょう?」
俺達はまず、ヴェルの街までやってくると、引き続き街に滞在する予定のブラッホとミナ導師とは別行動をとることにした。とりあえず今日は、街を見て回り、街の雰囲気を実感するのが先であるとしたのである。
一方でブラッホ達側には、先ほどアニーサ艦長が言った通り、船への補給物資の調達を行ってもらっている。
ヴェルの街へ来るまでの間。そしてヴェルの街へ滞在する時間。それらは確実にペリカヌの物資を消耗させる。物資が無くなれば、それだけ船員の士気が下がるというもの。
本来であれば、街に船員全員を滞在させられれば一番なのであるが、それをいきなりするのは、さすがにヴェルの街側も拒否してくるだろう。
「周辺地域に植民の許可をいただけるという話ですけれど、それについてはこのまま順調に交渉が進む場合、受けてみるのも手であると思います」
「そりゃあそうだよな。拒否する理由なんてない。けど、俺達にとってはそうも言ってられないでしょう?」
このまま、植民地を見つけて、はいここで終了などと言っていられる立場ではあるまい。お互いに。
「一番良き展開は、この街が、ラクリム国を滅ぼした元凶であれば良かったのですけれど……」
「その言いぐさは、この街は期待から外れているって感じですけど、まだ決まったわけじゃあないんじゃ?」
復讐相手はさっさと見つけられるに越したことは無いと思う。そうして、希望は最後まで失わない方が良いという言葉もある。何故、ここに新たな文明圏があるというのに、この場所が、ラクリムを滅ぼした未知なる文明だと言えないのか。
「確たる証拠はございませんけれど、やはり文化ですわね。外から来るものを拒まない精神をこの街はお持ちの様ですが、一方で、外へ出て行く文化ではないと言う印象も持ちました。この街、飛空船に関する技術はあるとのことでしたけれど、それが飛んでいる景色は見ましたかしら?」
そう言えば、一度も見ていない。直接、街の周囲で飛空船を飛ばしていたのだから、他の飛空船が飛んでいれば嫌でも気が付くはずだ。
「外に出ない文化圏が、外を侵略するはずも無い……か」
「そもそもが敵意の様なものを感じませんもの。まだすべてを見たわけではなりませんけれど、この街で、なんとしても他の街を滅ぼしたいという意思を、いまのところ感じません」
他を滅ぼすというのは、それだけ消費が存在する。物質的なものがというより精神的な部分でだ。
高ぶる感情か、それに代わる何かが無ければ、他者を滅ぼすなどとは考えすらもできないはず。そうして、この街では、確かにそのエネルギーを感じられない。むしろ……
「なんでしょうね。街をざっと見た雰囲気ですが、悪い雰囲気じゃあないが、どこかこう……熱気が無い気がする」
周囲を見回して、そんな感想を述べてみる。街には人通りが少ない……わけではないのだが、それでも活気が無いのだ。
寂れた雰囲気や暗い景色というわけでも無い。ただ、なんだろう。この街には停滞があった。誰も彼もが、泣いているわけでも笑っているわけではない。
ただ淡々と目の前のことを流しているようだ。そうだ、街の作りにしてもそうなのだ。無機質な灰色で石造りの街並み。道だって舗装をされているが、やはり建物と同じ材質のためか灰色だ。
寂れた雰囲気ではないが、なんと表現すれば良いのか……そう、老いた。と表現してしまうのが望ましいか。
「人は何故、外を目指すと思いますかしら?」
「何故って……そこに外があるから……とかですか?」
アニーサ艦長から突然の質問に、良くも考えずに答えてみる。
「惜しいですわね。内に籠るとそこで停滞してしまうから、さらなるフロンティアを求め始めるというのが正しいですの」
社会の停滞とは、それ即ち、生き辛さだとアニーサ艦長は言う。定型化したルールに雁字搦めにされて、心の身動きが取れなくなる。そんな状況が延々と続けば、後に残るのは飢える様に精神をやせ衰えた人間のみであるとも。
「この街がそうだって言うんですか?」
「少なくとも、何がしか、寿命が見える様な気がしません? この街の雰囲気は、まさに文化が成熟し、さらにその次の段階へ移行したその末路の様にも思えます」
ヴェルの街はそんな衰えを象徴する街だということか。ならばこそ、やはり俺達が目指すものではないということ。
「植民地として自由に周囲を使えってのも、自分たちにはもう外を開拓する意欲が無いからってなもんなんでしょうかね。どっちにしろ、計画にとっては都合が良くて、俺達にとっては期待外れの場所ってことか」
結局、話はそこへ戻る。この街は計画の終着点になりかねない場所だということだ。大半の人間が望む場所でもあるわけだが、その望みを抱く者達の中に、俺やアニーサ艦長はいなかった。
「このまま何もせずにいれば、遠からずわたくし達にとっては期待外れの結果を招くことになりそうですけれど……」
顎に手を当てながら、何やら思索へ入ろうとするアニーサ艦長。歩きながらなので危ないと思うのであるが。
「つまりは何かしなきゃってことですかね? 何します? 俺としては、近所の喫茶店にでも入って、足を休めることから始めたいんですが」
街を歩き回り、その景色を見て回るというのが今の目的だったが、さすがにそろそろ足が疲れて来た。喉だって乾いてきているし。
「喫茶店ですの? それには金銭が……これで食事の数回くらいならできるそうですけれど……」
とりあえずの滞在費として、俺達はこの街の長から金銭を幾らかもらっていた。ただ、それが紙切れなのだ。金貨や銀貨と言ったものではない。何か文字が書かれているが、その意味も分からない。
「文字は、さっぱりわかりませんわね……やはり、彼らが持つ言語はわたくし達とは違う」
「けど、話す言葉は同じだ。文字は違うが読みは同じ? それにしたって、ヴェルの街の長は言葉も違ってるみたいでしたが」
「そこが一番の謎ですわね。けれど、この謎を解明することが、状況を変える一手になるかもと、わたくし思っていますわ」
つまり、分からないことは調べるべきだという方針らしい。それには同感であるが、一応、聞いておかなきゃならないことがある。
「変える状況ってのは、他の大多数にとっては歓迎すべき状況のことを指してですかね?」
「そうですが……それが何か?」
「いいえ、頼りになるなと感心したところで」
他の船員には申し訳ないが、ここで安住の地を見つけてハッピーエンドとなるのは避けたかった。植民地に適した土地を見つけ、それが今回の計画の成果となる。そこまでは良い。だが、それで計画を終了されては困るのだ。
アニーサ艦長がそこへの対処してくれるのは嬉しい限り。だが、大多数の船員を裏切る形になるわけで、それを事も無げに言ってのけるアニーサ艦長が、やや恐ろしくもあった。
「何にせよ、確かに少々足も頭も疲れてまいりました。試しにこのお金を使ってみましょう」
適当に喫茶店らしき店を見繕い、そこへと入っていく。店員に、やはり俺達と同じ言語で案内されながら席へと座り、現地の一般的飲み物らしいやや赤みがかった色をした、酸味と甘みがある飲み物を注文して飲み始めた。
「さっきの話の続きですけれど」
一息吐いたところで、アニーサ艦長は話を再開することにしたらしい。別に構わないが、こちとら、難しい話ばかりしているせいか、ちょっと頭が痛くなってきている。
「街の謎を追う中で、気づいたことが一つありますの」
「さっそくですか。早いですね」
「隠している事では無さそうでしたから……恐らく、彼らとわたくし達の言葉だけが通じるのは、何らかの力が作用していると思われます」
「そりゃあ、何かタネはあるんでしょうが……」
そこまでは分かっている。問題はそれが何であるかじゃあないか?
「力と申しました。それはつまり、わたくし達の言葉を憶えて使用しているわけではないということ」
「けど、しっかりしゃべってるじゃないですか」
「いいえ。しゃべっていませんわ。もし、街の人間と話す機会があれば、口元をしっかり観察してくださいまし」
「口元?」
「ええ。喋る時に、言葉と合っていない動きをしているはずですから」
「それは……」
どういうことだ? 彼らは皆、変わったしゃべり方をしているということか。発音方法が違うとかそういう……。
「何を想像しているか分かりませんけれど、恐らくは違いますから、説明させていただきますわね?」
わーお。全然信用されてないでやがる。まあ良い。考えることは誰かに任せると決めた以上、あまり頭が良く無いと思われても仕方あるまい。
「彼らは、彼ら自身の言語を話していると、そうわたくしは考えていますの」
「でも、彼らの言葉確かに俺達へ通じる」
「つまり、彼らの声がわたくし達の耳へ届くまでに、何がしかの改変が行われているのではないかと、そう思っているわけですわ」
だから力か。とても都合の良い力だと思う。言葉を自動的に翻訳してくれる力とは一体、どの様な仕掛けがあるのやら。
「普通なら荒唐無稽って言うところですが、やっぱり俺達が旅するのは普通じゃない場所ですしね」
「そういうこともありえますわね。上手く、この技術をなんらかの形で本国へ伝えられれば……」
今回の様な開拓計画の中で、とても使える技術となるやもしれない。それだけではない。内世界でも言語はバラバラな部分があるのだ。それを学ぶことなく共通なものとしてしまえるのなら、これほど便利なことは無い。
「ああ、それと……結構大切な話だから、問題を先延ばしにできる?」
「気づきましたかしら? この街には植民地以外にも価値のあるものがある。となれば、事は慎重に運ぶ必要がある。さて、次はどうなるかは……仰る通りですわね」
事の決定に時間が掛かると言うのであれば、どれだけの成果があったとして、とりあえず次の仕事を。ということになるだろう。その間に目当ての相手を見つけてしまえというのがアニーサ艦長の狙いらしい。
「次に探りを入れるのは、ヴェルの街の長ということになると思いますわ。あの方だけ、何故か言葉を通じさせる力が働いていない様に見えました」
「誰にでも働いているらしい力の、その例外。例外を探れば、力そのものも見えてくるってことですかね?」
俺の問い掛けに、飲み物を口に含みつつ、アニーサ艦長が頷く。やはりやる事に関しては、アニーサ艦長に任せた方が良いらしい。
「あ、けど、まだ謎は残ってますよ。そっちについてはどうするんです?」
「まだ残っている謎?」
「ほら、あれですよ。あれ」
俺は喫茶店の窓から見えるものを指さした。それは街の中心にある巨大な塔。あまりにも巨大過ぎて、視界から排除していたが、それでも俺達が最初に抱いた謎であった。




