2話 ただ驚嘆するばかり
俺達がその街、住民が名乗るところのヴェルという街に着いた時、もっとも目を惹いたのは、やはりその長大な塔であった。
近づいてみれば、それこそ天を突き刺してしまいそうな高さのそれが、明らかに支えきれないはずの細さで存在しているのを見れば、どう足掻いたって、口をぽかんとあけて、唖然とする他無くなる。
材質は何か金属質のものであるが、近づいて触れてみなければ分からないもので、そうして近づいて触れられないのが今だった。
最初、ヴェルという街に近づいた俺達ペリカヌ一同は、まず、ミナ導師の指示に従うことにした。
選んだ少数で接近し、穏便な交渉を行うというそれだ。選ばれた船員は、ミナ導師と作業員班の面々。そうして、やはり彼らを小型飛空船で運ぶ役として俺。
前回、クリストという集団と接触した時と同じ手筈だったので、ある程度、同じ様に進められた。小型飛空船、ロンブライナに運ばれた連中が、揃いも揃って船酔いをしたのもまったく同じだ。
違っていたのは、外壁に囲まれたヴェルの街の、その門へとやってきたその時である。
「いや、世の中広いものであるな! このような摩訶不思議、世界には幾らでも広がっているのやもしれん!」
何やら楽しそうに笑う作業員班のブラッホ班長。今、俺達はヴェルの街の門にある、待合室らしい場所で待機している。
この街へとやってきた俺達は、街の門番に発見されて、とりあえずの初接触を終えた段階だった。
状況的には順調と言える。言えるのであるが……。
「何故に……何故にこの様な……」
一同、何時も通りの様子であるはずが、ミナ導師だけが絶望したような顔でぶつぶつ何かを呟いている。
その理由については、なんとなくであるが分かる。と言うのも、ある一つの驚きがあって、その驚きがミナ導師の精神に大ダメージを与えているのだ。
では、その驚きが何であるかと言えば、それはヴェルの街の住民に関することだった。
「すみませーん。とりあえずみなさん、こっちへ来て欲しいんですがー」
と、ヴェルの街の門番が待合室までやってきて、別の場所へと案内しようとしてきた。
そう、これが驚きである。何せ彼ら、言葉が通じている。離れた土地で、言語なんて別々であるはずが、何故か彼らは俺達と同じ言葉を話している。
「おお、では皆、立ちたまえよ! こういう時は大人しく従い、彼らの流儀を憶えて行くのが良き交流であると、そういうことであったであるな? 導師どの!」
「は、はい……その通り……です」
ミナ導師にとっては、言葉が通じぬ相手との交渉こそが彼女の本領発揮であったはず。だが、それが残念ながら叶わなかったことがショックなのだろう。彼女にとっては残念だが、簡単に話が進むのは良いことだと思う。少なくとも、こっちが争う気が無いことを伝えられるし、あっちもあっちで、こちらに敵意は無いことを意思確認できる。
(いや、それにしたって、なんで言葉が通じるのかが不思議だけどな)
ブラッホ班長と同じ意見を、俺も抱いていた。偶然、ヴェルの街の住民が、俺達と同じ言語を使っているとは思えないのだ。
(ってーか、これまで交流なんて無かったってのに、最近のスラング混じりで話をされると、どうにもおかしいって思うんもんさ)
例え同じ言語だったとしても、地域が違えば変化は生まれ、時代が変われば言い回しも変わって来る。
内世界だって、少し土地が変われば方言というものが発生しているのだ。それすらもまったく違和感を覚えないというのはどう考えてもおかしい。
「なあ、ブラッホ班長」
自分の疑問をブラッホにぶつけようとした時、前を歩いているブラッホに手で制される。
「まだ深く考える段階ではないであるよ。見れるべきものを見ず、先んじて何かを思い込めば、致命的な考え違いをしてしまう可能性とて、あるであろう?」
今は順調に進んでいるのだから、とりあえずはその流れに任せてみようというのがブラッホの意見らしかった。
(正論だけど、どうにもな……前みたいに幻想でも見せられてるんじゃないかって不安が……)
門番に案内される形で、詰所の様なところへ向かうのであるが、その間にある建築物や、通り過ぎる人々を観察していく。妙なところがあるかもしれないからだ。
(石造りの建物だよな? けど繋ぎ目が見当たらないってことは、それをどうにかする技術があるってことか……っていうか何の石を使ってるんだ? 近くに採石場なんて無さそうだったけど)
あの塔にしたってそうだが、ヴェルの街は建築技術が相応に高く、俺達が理解できない程の領域にまで至っているのかもしれない。
そう言えば街を囲う外壁にしても分厚く頑丈そうで、内世界でも随一のそれに匹敵するか超える程だった様に見えた。
(これは、技術的な格差と見るか、それともなにかタネがあるかってことで、見方も変わって来るよな)
現状では、単純に技術力を持つ街に見えるが、その実どうであるのかは、俺の観察力では判断が付かないのが実際だった。
「ここだ。じゃあとりあえず、ご用件等を正式にお聞かせ願いましょうかね。それと……人数がいるみたいだから、代表者をお教えてもらえると……」
ある程度広さのある詰所まで案内され、来訪者である俺達全員がそこへと入った。警戒はされていないらしい。何せ詰所内にいるのは、俺達を案内した門番一人だけなのだから。
「代表と言うか、この中では私が一番上であるな!」
「この中では……というと、他にも人が? そりゃあ凄い」
とりあえず詰所の椅子に1人ずつ座ってから、机を囲む様にして向かい合い話をする。全員が門番一人を眺めているため、彼のプレッシャーは中々のものだろうが、それにしてはなんだか軽そうな言動をする。
「あまり大人数で押し掛けるのもあれであったであるからな! 外、少し離れた場所に飛空船を置いてある! 飛空船はご存知かな?」
「フライト鉱石で船を飛ばすってあれで合ってるなら、こっちもにもあるよ。それのことかい?」
「そう、その飛空船に他の仲間が残っているであるよ。というか、あまり外来人には抵抗感を抱いていない?」
そうだ、ブラッホの言葉で、この門番が軽いと感じる理由が分かった。外から来た人間に対する警戒心がまったく無いのだ。
まるで慣れていると言った様子で事を進めている姿を見れば、彼らはこういう外来者に慣れているということか。
「なんだかさっきから質問ばっかりだなぁ。こっちがいろいろと聞く立場なのに。まあ、慣れていると言えば慣れているかな。外も内も同じ人に違いは無し。普段から人と接していたら、外から人が来てもまた同じ人だろ?」
随分と立派な考えな様な、それでいて考えなしの様な答えを門番は返してくる。もし、この街の住民全員がこんな感じであるなら、それはもうそういう文化なのだろうと思うより他無い。
「まあ、外来人は来るには来るけど、そんな多く無いんだなこれが。俺が門番をする様になって、あんた方で2……いや、3回目ってところだったかな」
門番がどれだけの期間を門番として過ごしているかは分からないが、確かにそう頻度は多く無いらしい。
「その割には対応が慣れている」
「街の中の住民が、街の外に出る時もある。そうして帰って来た時と同じ対応さ。言ったろ? 外も内も人であることは変わらない」
やはり、独特な考えをすると思う。それほど外来人との接触が多く無いのに、外も内も変わらないなんて考え方、できるものだろうか?
少なくとも、俺達が知る内世界では、外世界の人間に対して、警戒さや慎重さが必要と考えるものであるが。
「一応の確認なんだが、別にうちの街を攻めに来たわけじゃあないよな? 盗賊や強盗目的ってんなら、さすがに街に入れるわけには行かないな。ああ、外に残っている人間が大人数なら、それ全員ってのも止めてくれ。さすがに街が混乱する」
もし本当に強盗だとして、正直にそうだと答える奴もいないんじゃないかと思いながらも、俺達は(主にブラッホがであるが)質問に答えて行く。
そんな時間が幾らか流れたところで、門番がパンと自身の膝を叩いた。
「よし! つまりあんたらは、あんたらの言うところを外世界で、植民地探しをしていて、この街周辺が適した土地かもしれないと、そう考えやってきたわけだな!」
「それと、こうやって未知なる相手と出会うのも目的の一つであるな! 違う文化との交流は、土地以上の価値を与えてくれる。関係性が友好であればであるが!」
なんというか、幾らか話していて、ブラッホと門番は打ち解けたらしい。ノリが近いというのもあるのだろうが、それ以上に、やはり言葉が通じるという部分が大きいのかもしれない。話せない相手と話せる相手。これだけでも付き合い易さが何倍も違う。
「具体的には、まずそっちの代表者さんがこっちの代表者に会って、方針を決めさせれば良いのかい?」
「こっちはトップの艦長が出るであるが、そちらはそちらの都合で結構であるよ。まだ第一接触。そちらの方針に従う方が、何かと問題も少ないであろう!」
ブラッホは、ミナ導師より事前にレクチャーされた交渉内容を進めていた。見る限りは順調だ。順調過ぎてむしろ不安になってくるくらいに。
(外世界に住む人間との接触ってのはこんなもんなのか? クリスト達と接触した時の方が、よっぽど苦労した記憶があるけどな……)
そちらにしたって、ミナ導師が言葉を翻訳できるという幸運に恵まれていた。そう、運が良いのだとしたらあちらの方で、ヴェルの街に関しては、幸運を通り越して作為的なものを感じてしまう。
「ちょっと待ってろ。そうだな、外で待機できるならその方が良いかもな。明日の昼頃にでも、また街の門に来てくれれば、その時、こっちの公式的な意思表示をするよ。それとなんだが……」
何か良い話があるとばかりに門番が笑う。
「うん? 何であるかね?」
「2人。俺の付き添いがあれば、それくらいなら大丈夫だろ。今日、街の中で過ごすのを許可するぜ。夜までまだ時間はあるだろ? 交流ってのなら、こっちについても幾らか知ってもらった方が良い」
本当に順調だ。暫く掛かると思っていた街への偵察が、こうも簡単に許可が下りてしまうなんて。
(やっぱり、そういう文化なのか? 外に対して敵意が無い)
いったいどんな形で文明が進めば、そういう考え方になるのか。そういう部分についても知りたいと思う様になってきた。
「二人であるか。では代表者の私とミナ導師であるな! 早く元気を出してくれたまえ!」
「は、はい……」
まだ気落ちした様子のミナ導師。向こうの指定は2人までだから、ブラッホとミナ導師の二人で決まりなのは幾らでも予想できる。
「ではアーランくん! 他のメンバーの船への帰還を頼むであるよ!」
「わかりました。二人は街で泊まる感じで?」
門番に、また迎えに来れば良いのかと尋ねてみる。
「ああ、二人に関しては宿に泊まらせるさ。それじゃあ明日」
二人の外部の人間を、いきなり街に入れた挙句、泊まり込みを許すというのは、いよいよ持って不気味だ。そんな風に思っていると、耳元でブラッホが呟いて来た。
「今、疑問に思っていることを、艦長に余さず伝えてくれたまえよ。恐らく、重要になってくる」
「……わかりました」
班長から密命を受けた形になるのだろうか。とりあえずの結果として、ヴェルの街との接触は、そんなものであった。
ペリカヌに戻り、上部艦首へとやってくる。そこでブラッホの指示通り、アニーサ艦長へヴェルの街の報告をしてみたわけであるが。
「興味深いですわね」
そんな言葉が返って来た。何のどこが興味深いのであろうか。絶対に普通の事は考えていないのだろうなと言う確信はあるものの。
「興味深いというか、変な街だって印象はありましたね。いえ、中に入って確認はしてませんが」
「そもそもが、言葉が通じるという事態が異常事態なのですわ。あなたが感じた通り、また何がしかの幻想の中に迷い込んだとも、十分考えられますし、今後の予想の一つであるとわたくしも思いましたの」
もっと身も蓋も無い言い方をするのなら、何が起こっていてもおかしくはない状況であり、どんな想像もあり得ると言える。
なので俺は完全に心配を放棄しようと考えた。そういうのはやはりアニーサ艦長の仕事だ。
「今後の方針、何か決まれば、それに大人しく従いますよ。頭を働かせるのは柄じゃあない。どうにもあの街を見てると、考え事が増えて困る」
「ああ、それはつまりこき使っても良いということでしょうか?」
「………ああ、そうですよ。その通りです!」
言葉尻を捕えられた形であるが、一度口にした言葉は引っ込められない。ここは本当に大人しく従っておくのが、潔ぎの良い男というものであろうさ。
「なんか……なんか、そのやり取り! 良いですね! はい!」
と、いきなり観測士をしているシィラ・メリベイが会話に入って来た。上部艦首には艦長以外にも、ペリカヌの運用メンバーが集まっているため、他に話す人間がいないわけではないのだ。
ただ、あくまで仕事の報告であったから、他が参加して来ないのが普通だ。まあ、個人的な意見を言わせてもらうなら、このシィラという女の子は、ちょっと普通じゃあないところがある。なんというか、こう、せわしない部分があるというか。
「ええっと? 何が良いんだ?」
「いえ、その……仕事してるって言うか!」
「君も仕事をしてると思うんだが……」
ただ、今は観測をせずにこちらを見ているので、していないことになるのか。
「まあ、シィラはこの様な調子で良いのです。言わば癒しですの」
「え? 癒し?」
当のシィラが疑問符を浮かべている。いや、アニーサ艦長が思っている事はわからないでもないが。
(こういう風に、空気をガラッと換えてくれる人材ってのは貴重ってことか)
アニーサ艦長とその周囲に関しては心配する必要は無さそうだ。とりあえずの仕事は終えたから、この場を去ることにした。
またロンブライナで人を運べと言われるかもしれないが、それまでは俺なりに動かせてもらおうと考えた。
俺なりにできることとは何か。答えは簡単だ。意見を聞いて周り、それなりに自分で納得するというなんだかなぁという満足を得ること。
だいたい意見を聞く対象は決まっており、後輩のレイリーか弟のエイディス。そうでなければブラッホで、より知識として知りたければデリダウ・ドーガという魔法士の老人へ尋ねることにした。
今はなんとなく知識欲を満たしたかったので、デリダウの研究室へとやってきている。というか、俺にとってここは船内で暇なときにやってくる場所の一つであった。
「休憩室もあるのだから、そこでだらだらしてくれるとありがたいんじゃがのう……」
「あそこはあそこで、だらだらするより溜まり場みたいになってんですよ。落ち着く場所じゃあないんで」
「ここは落ち着く場所ということかね?」
「基本的に静かです。シーンとしているって意味じゃあなくて、騒がしさが無い」
デリダウは潔癖ではないが整理整頓はするタイプである。それでも、あちらこちらに研究用の資材はあるのだが、その位置関係がきっちりと決まっているためか、より整った部屋という印象を研究室からは受けた。
偶に何かを読んだり実験をしたりするデリダウの、老人らしいゆっくりとした動きが、また何か心を落ち着かせる要因だった。
「一応、気は使ってるんですよ? 何か話したいことが無ければ、できるだけ来ない様には務めてる」
「その割には、何の意味も無くふらっとやってくることが結構ある気がするがの」
それは仕方ない。努力はしているが、すべての努力が実るわけではない。それが世の中というものだろう?
「今日はちゃんと、話したいことがあって来たんですって。先生はどう思います? あの塔やあの街について」
「君から聞いた話の内容じゃが、まだまだ少なすぎて何とも言えんよ。不思議な街という印象がそこまでじゃろ? 実験や研究というのは、その不思議だなと感じる時点から漸くスタートであるからして、まだ最初に一歩を踏み出そうとしている段階じゃろうて」
つまり、今、直接街を見ているであろうブラッホやミナ導師が戻って来るまでは、何がしかの仮説も浮かばないということか。
「あの街で話した人間は門番一人だけ。だけど、何かこう……不思議というか不気味な部分を感じたんですよね。あれが何なのか、知りたいから、先生の意見も聞きたかったんですが」
「その不気味さについてであれば、答えなんぞ分かっとるだろう」
「答え?」
「いきなり親切に接して来られても、段階を踏まぬ接触は拒否感を憶える。人間なんてそんなもんじゃ。違うか?」
「まったくもってその通りです」
言われてみれば、分かり切った答えが返って来た。例えば道端を歩いていて、あなたは私の友達です。なんて見ず知らずの人間に声を掛けられれば、不気味に思う。そういう感情を、ヴェルの街の門番に抱いていたということだろう。
「普通はその何歩も前の段階で、いろいろと探りを入れる。それはせん相手は怖い。不気味だ。そう思うのもまた普通じゃて。お前さんの感情は当たり前のそれじゃな」
「ああ、けど、ちょっと待ってください? だけどそんな接し方、街の門番がしてくるのはまた変でしょうに」
「変じゃなくてあの街では普通かもしれんぞ? ふむ? そうなるとどうなる? その街の文化そのものが、他人に対して距離が近いということになるが……いや、その門番個人が変人という可能性もあるがの」
変人であるという可能性はとりあえず除外しておくとして、もし、距離感が近いという文かが根付いているとしたら、それはどういう性格の街なのだろうか。
「外敵に脅威を感じない集団ってことになりますか。圧倒的な武力を持っているとか?」
「それもあるかもしれんの。見た感じ、かなりの技術力を持っとったのじゃろう? もしや敵なしの状態が長らく続いたから……おや、ちょっと不自然なことに気が付いてしまったのう」
話の途中で、顎髭を擦り始めるデリダウ。何か考え事を始めたと言う合図だった。こうなるとデリダウは魔法士らしく、考えに没頭し始める。話がし辛くなるのだ。
「先生がそうなると、暫くこっちは話し相手がいなくなるんで、その不自然に思えた部分だけ教えてくれませんかね? その事について一緒に考えて、暇でも潰しましょう」
「やはり暇つぶしでここに来ておったのか」
それ以外の理由ではあんまり来ない場所だと思う。
「で、不自然とは?」
「ううむ……周囲に敵なしの技術や国力を持っているやもという話じゃったが、良く考えてみろ。実際、敵なしではあるじゃろう?」
「それはまだ断言できない……いや、できるのか?」
思い出す。それはヴェルの街そのもので無く、そこに至るまでの旅。旅の中、ペリカヌは空を飛び続けたのである。
ではその旅の中、ヴェルの街以外で人里というものを見ただろうか? 否である。もし発見していれば、必ずそれと接触するはずだ。
「そうじゃ。わしらは出会わなかった。ヴェルの街以外の人里にな。本来、見るだけでも分かるあの技術力や国力を持っていて、外世界へ飛び出さぬ文明など少なくは無いかね? 我々とてそうであろう。内世界に溜まりがちな力を、外へと発散させる。フロンティアスピリッツという奴じゃな」
デリダウの説明するところによると、ある一定まで文明が成熟してくると、その文明は外へ外へとその規模を広げていくらしい。
そうして大きな範囲をその国土としていくのだとのこと。
「けど、ヴェルの街はそうじゃあない。それが不自然ってことですか」
「うむ。考えられる事象として、必要になってくる条件は二つじゃな。一つは何がしかの理由で、周辺文明があの街へと集まるという過程があった」
「じゃあもう一つは、あの街がそもそも外へ出ない文化かもしれないってことですか」
「そうじゃな。この二つの理由が合わさってこそ、今の街の現状があるのかもしれん」
仮説ですらなく、想像の段階であるが、益々謎が増えたかもしれない。
ヴェルの街との接触は、いったい俺達に何をもたらすのか。期待と不安が心に無いと言えば嘘になる。そんな状況だった。




