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フライトコロナイズ  作者: きーち
第5章
30/49

3話 それは聞くのは無粋ではないのか

「神を作ったって、なんでそんな発想に……」

「そうは思わんかね? かつて存在した神。その神がいなくなった後、似た様な神を幾つも作っていたと私があの劇を見て感じたが」

 クリスト達により劇が行われたテント。そこを出てすぐの場所で、俺とブラッホは話を続ける。結構、白熱した会話であった。傍から見れば、テント内で見た劇について、あれやこれやと話す観客みたいに見えることだろう。

 そういう人種は劇そのものの宣伝みたいなものであるから、迷惑になることはあるまい。テントのある場所は街の外れなので、近所迷惑ということも無い。

 問題はやはり、ブラッホとの話そのものである。

「呼び出した……とか、見つけ出した。とか言う解釈もあるでしょうに」

「呼び出したり見つけ出したりした存在が、以前の神とそっくりなものである可能性はあるのかね?」

「それは単純に、女神役の役者が女の子一人だけだから……」

「ならば衣服を全面的に変えれば良いであろう? 衣服を部分的に変えて、違う神として表現するというのは、やはり全般的には似通っており、しかしどこか違うという解釈として見て取れると思うが!」

「ふむ……」

 言われれば、そうとしか思えない。ただし納得はしかねる。そうなってくると、クリスト達は神を作る技術を持っていたということに―――

「あれ? ちょっと待てよ? なんだ……何かが繋がりそうな……」

 どこかで、そういう話をした覚えがある。どこだったか。神を作る……。

「おや! 何がしか思うところでもあるというのかね! それは良いぞ! 真実を探る際、必要になってくるのは、そういう奇妙な符号であるからな!」

「いや、けど、突拍子も無いのは事実だ。思い出しましたよ。弟がそんな印象を受けたらしいんですよ」

「弟と言うと、整備士のエイディスくんであるな! 彼がどんな印象を?」

「ええっと……」

 話すべきか迷う。弟自身が、その話について、やや恥ずかしがっている様子だったからだ。何故、そんな印象を受けたか分からない、ちょっと発想が飛んでいる内容。

 ただ、そんな飛んだ発想が、こんなところでも見つかるなんて、そんな偶然あるだろうか?

「弟がですね、以前、例の廃墟で、妙な道具……機械? 兎に角そういうものを見つけて、それはあの皇帝の力と関わりがあるのではないかと……まあ、妄想に近いそれですが」

「機械を使い、皇帝という存在を生み出した。そう考えれば、あの劇の内容とも一致するであるな!」

 正確に言えば、劇を見てブラッホが抱いた感想と合致しているというだけだろう。解釈の違いがあるかもしれない。

「クリスト達に詳しく聞くことって可能ですかね?」

「ほう! 君もそう考えるのであるな! しかして、我々だけでは彼らの話は聞けまい? 頼み込む相手がいる」

「ああ、俺を連れて来た理由ってもしかして……」

「ははは! 何のことやらさっぱりであるが、頼み込む相手が複数であれば、それを聞き入れて貰える可能性は高くなるであろうな!」

 ブラッホは、俺を巻き込んで、とある人物にクリスト達との通訳を頼むつもりなのだ。国教、カーラン教より派遣された導師、ミナ・ペイランガに。




 カーラン教徒であるミナ・ペイランガ導師は、日常では堅物で有名だ。酒もやらないし暴食もしない。性云々に関しては、もう触れるも聞くもタブーという徹底ぶり。

 ちなみにカーラン教はそういうものに対して禁欲的な教えではないため、単純にミナ導師がそういう性質なのだろう。

 そんな彼女であるから、突然、彼女がヒドランデに借りている宿に、男二人が押し掛けたとするならば、どういう反応をするか。

「……帰ってくれません?」

「はっはっは! そう連れないことを言うものではないよ! ミナくん!」

「あー、はい。すみませんっす」

 露骨に不機嫌そうな表情をしているミナ導師に対して、まったく動じた様子の無い、むしろ上機嫌なブラッホ。こんな二人と一緒だから、必然的に俺の居心地が悪くなる。

「その……何でしたかしら。通訳を頼みたいと聞こえたのですけれど?」

「まったくのその通りであるな! この街にクリストの方々が来訪しているのはご存知かね! その通訳を頼みたいと思ってな!」

「とりあえず、承諾するかしないか云々を前にして、声量を抑えてもらえればありがたいのですが」

 ミナ導師の言い分はもっともである。俺とブラッホがクリスト達の劇を見たのは昨夜のことで、夜が明けてすぐに、ブラッホはミナ導師が泊まる宿へとやってきたのだった。俺にしてもブラッホに無理矢理起こされたため、まだ眠く、欠伸が止まらない。

「ほう。つまり、声量を抑えてくれれば通訳役をしてくれると?」

「ですから、承諾するかしないかは別と申したはずですが……」

「なんかもう、ほんとすみません」

 酷くやり辛いというか、どうしたら目の前の獣が、早急に自分の周囲から消え去ってくれるだろうかと考えている顔をしているミナ導師。俺に関しては謝ることしかできない。他に何ができる? 知っているのなら誰か教えて欲しい。

「わたくしの仕事は、ペリカヌの搭乗員として、未知の種族と出会った場合、その種族の方々と敵対せず、友好関係を築くという重要なものです。頼まれて、はいそうですかと動く、便利な翻訳道具というわけでは……」

「最近は仕事が無くて暇そうにしているのであろう?」

「うわっ、それ言っちゃいますか」

 ミナ導師は外世界で、知らぬ人種と出会った際に、彼らとの接触をどうするかの意見を出す立場である。

 ただ、今回の飛空開拓計画においては、そういう切っ掛けはクリスト達と出会った一度のみしかない。つまりその一度のみの仕事しかしていないと言える。

 とは言え、それでも重要な役目だから、誰も彼女をごく潰しとは言わない。言わないのであるが、ブラッホは彼女を引きずり出すために、あえて言うことにしたらしい。

「………給料泥棒と言いましたが」

 言ってない。が、気にしてはいるらしい。しかしだ、これは一歩間違えれば喧嘩になりはしないか。

「仕事をしている人間にその様なことを言えば、それはやっかみということになるであるな! ところでミナくんは今、暇かね!」

「声を小さくと言ったはずですが! わかりました。わかりましたから、仕事をすれば良いのでしょう!?」

 なるほど、押しが勝つと考えたから、ブラッホはがんがん進んだらしい。こうも早くミナ導師が折れるとは思っていなかった。それほど仕事をしてないという現状が心にダメージを与えていたのかも。

「いやあ、ミナさん。本当にすみません。けど、手伝ってくれるってのなら百人力だ」

「アーラン殿……あなたまで……いったいどういう了見なのです」

 どうにもミナ導師は、これまで俺のことをブラッホと同類には見ていなかったらしい。だが今回の件で、似た者同士として扱ってくることだろう。

(不服じゃああるんだが、否定できないんだよなぁ)

 実際、ミナ導師を連れて行くことには賛同していた。昨夜、クリスト達のテントで行われていた劇について、詳しく聞き出したいという好奇心を、止める気が無いのである。

「とりあえず、面白いことはありそうだって話ですよ。案外、ペリカヌの今後に関わって来るかも」

 一方で、何の意味も無い行動になるかもしれない。そういうことはあえて言わないで置こうと思った。




「―――」

「――――?」

 場所は再びクリスト達のテントへと移った。と言っても、前回の様に劇を見に来たわけでは無いため、テントの裏から、彼らが劇の準備や生活をしている場所でのことである。

 そんな場所にて、さっそく仕事を始めてくれているミナ導師。話し相手は、クリスト達の中で、青年らしい年恰好の男だった。

 ミナ導師から聞くには、彼が劇に関しての一切を取り仕切っているらしい。そうして運が良いことに、彼は俺達の顔を憶えているとのこと。

 初めてクリスト達を発見し、彼らのテントへと向かう途中、彼が真っ先に俺達と接触したのだそうだ。そういえば、こちらにもこの顔には見覚えがある。

「昨夜の劇の内容について、詳しく聞くことはできそうかね!」

 青年とミナ導師が話す後ろで、ブラッホが何を話すべきかをミナ導師へ指示していく。

「少しお待ちになってください。こちらの方は、何故、そのような事に興味を持ったのか疑問に思っている様ですが」

「ふむ? 劇のある部分で、友人と意見の相違が生まれたと伝えてくれんかな!」

「ああ、そうですね。そうです。ちょうど、女の子の役が服をいろいろと入れ替えるシーンで」

「服を入れ替える場面ですね。―――。―――?」

「―――、―――――。――――!」

 なにやら、青年の言葉が強くなっている。ただ、それは悪い意味のもので無いことは、青年の表情を見れば分かる。

「ど、どうやら、あの仕掛けに良くぞ興味を持ってくれたと興奮しているようです」

 ちょっと疲れた表情をするミナ導師。テンションの高い者同士を通訳し続けるというのは、想像以上に疲れる仕事なのだろう。

「――――……――――?」

「――――。ええと、考えに相違があるということですが、どういう部分で? と尋ねていらっしゃいます」

「ああ、俺は男の子役が女神様を呼ぶ儀式をしてるって見たんだが、ブラッホ班長は違うらしくて」

「私は女神を作っていると見てね! その場面はいったいどちらを意味しているかを是非とも知りたいのだよ!」

 さて、真相はどちらだろうか。これには俺もちょっとどきどきしてきた。役に立つ情報が得られるかもという意気込みもあるのだが、こういう娯楽ものの裏側を知るというのは、単純に面白いものなのかもしれない。

「その場面というものは良く分かりませんが、とりあえずは伝えてみましょう。―――? ―――」

「―――? ――――――?」

 次に青年は怪訝な表情を浮かべ始めた。何かおかしなことでも聞いたろうか? 

「ええっと、その……その二つに、何か違いがあるのか? と」

「おや? つまり、儀式であり、尚且つ神を作る行為でもあるということなのかね?」

「いえ、そこまでは聞いて………」

「――――」

「え? 今なんと?」

「――――。――――!」

「まあ……」

「―――――!!」

「なんと……」

 と、ミナ導師と青年が、というより青年の話にミナ導師が驚いている様である。何だ。何を話しているのだ。こうされるとかなり気になってくるではないか。

「これは、わたくしも一度、その劇を見てみたいような気になってきましたね」

「いや、その前に何の話をしていたか話してくださいって」

「どう申し上げれば良いか……とりあえず、わたくしなりに整理してから伝えますので、もうしばし、この方と話をさせていただけませんか?」

 そう言われるということは、こちらが話を聞けるまでまだ時間が掛かるということだ。なんとももどかしい。

「良いであるよ! できれば、完全に理解するまで話を続けて欲しいであるな! その方が我々も齟齬無く知識を得られるからして!」

 ブラッホの方は、まだ気が長いらしい。できればミナ導師と青年の話が早く終わってくれれば良い。そんな事を思いながら、今日の時間は過ぎて行った。




 さて、ミナ導師が青年から話を聞き終えたのは、話し始めてから1時間と少しが経った頃であった。

 何故そんなに時間が掛かったかと言えば、どうやら青年から劇のストーリーの大まかな部分を聞いていたかららしい。

 そんな劇の内容をあっさり伝えて良いのだろうかと疑問に思う俺であったが、

「彼らが劇をする主たる目的の一つに、彼らの足跡を、他者に伝え残す。というものがあるようです」

 との答えを、ミナ導師から得られた。現在はミナ導師から色々と話を聞くため、クリスト達のテントがある場所から離れ、近くにある喫茶店へとやってきていた。

「それで、あの女神の一件は、いったいどんな話だったんで?」

 俺が尋ねると、やや興奮した表情を浮かべるミナ導師。どうにも、彼女は彼女なりに、今回の一件について乗り気になってきたらしい。

「そうですね。そもそも、あの物語は、クリストの方々が流浪の旅へ出る切っ掛けとなった過程を説明するものですが、では流浪する前は、どの様な文化を築いていたと思います?」

「あの劇そのものだとするのであれば、かなり発展した街で暮らしていたと見るべきであるな!」

 ブラッホの言う通り、劇の背景となるタペストリーには、発展した街が描かれていた。あくまで街の一部だろうが、それは俺達が知る街並と、そう遜色がある様には見えなかったと思う。

「そう。かつては発展し、相応の技術を持っていたそうです。しかし今は、そういったものを嫌悪している節がある」

「嫌悪? 発展した街を? そりゃあ妙じゃないですか? 街や技術なんて、発展してればそれだけで良いもんだ」

 より大きな街は、それだけ人を繁栄させるし、高い技術は便利さを与えてくれる。ついでに飛空船をより早く飛ばしてくれもする。

「行き過ぎた技術は、時に不幸を呼び込む! そういう考えはあるものだよ! 私の故郷でも、そういう考え方があった!」

 ブラッホには理解できる話だったらしい。そう言えば彼はどの地方出身だったろうか。どこぞの片田舎という話は聞いたことがあるが。

「行き過ぎた技術。確かにそうであったらしいのです。彼らは神に命じられて、自分たちの種族を発展させよという命を受けた。それがすべての始まりだと語っています」

「へえ、神様に命じられて。あれ? じゃあなんで技術に否定的な考えを?」

「神様の命を勘違いしていたとか何とか……。その言い回しが独特過ぎて、いまいち理解できないのです。ただ、技術を発展させる中で、神の存在を忘れてしまったのだとか」

 それは昨夜の劇とほぼ同じだ。問題はその後の展開だろう。

「存在を忘れた後……どうなったのかね? 恐らく、我々が求めるのはそこであるよ!」

「その後、どうやら技術の発展の先に、再度、神を求め始めた。という時代が来るようです」

「いろいろと満たされた後は、そういう信仰に向かうって感じか」

 そこは分からなくもない。腹がいっぱいになれば、次はなんだか知らぬ満足感を欲しくなる。人間というのは、何がしかを求め続ける生き物だ。

「問題と言えば良いのか、神を新たに降臨させることができる知識が彼らにあった。ということですね」

「そこだ! そこであるよ! 降臨させる知識とは……なんぞや?」

 ブラッホは何時もよりさらに大きな声で尋ねる。余程興味があるのだろう。俺だって、散々もったいぶられて、気が気で無かったりする。

「それがその……そこが分からないからこそ、技術か儀式か、そういう詳しいことが分からぬ……と」

「は?」

 ちょっと待て、まさかここで答えが分からないと言うのか?

「この話は、クリストの方々にとっては神話なのです。神話というのは、神々の物語。現実には不可能な事が起こり得るのがそういう話ですので、神々を生み出した力というものが、いったいどうであったのかについて説明されても、分からぬものは分からぬとしか……」

「なーんてこったぁ。つまり無駄骨かよ……」

 座っていた椅子の背もたれへ、さらに体重を預けつつ、天を仰ぎ見た。そこには喫茶店の天井が見えるのみだが、とりあえず天は天だ。

「無駄ということはございません。彼らの文化、風土、そして来歴というものへの知識が、さらに深まることになったと大いに思います」

 確かにそういう事に興味を持った導師なのだから、有意義な時間だったのだろうが、それにしたって、こっちはかなりの時間無駄にしてしまったと思ってしまう。

「いや、待ちたまえよアーランくん! まだすべての話は終わってはいまい? でなければ、ああも長時間話を続けるものか」

 どうにもブラッホは諦めが悪いタイプらしい。彼も彼で、クリスト達からどの様な話を聞けるかわくわくしていた側なのだ。裏切られた気持ちになっても良いと思うが。

「まだ……すべてではありませんが……作る方法については分からない。ということは確かに申しておりました。しかし、その意味については分かる。とも申していましたね。そう言えば……」

「ほう! 意味?」

「その通りです。要するに、新しい神が現れるというのがどういうことか。です」

「新しい……神」

 なんだか、その言葉がどうにもむず痒い。何かに引っ掛かりそうで、結局何にも引っ掛からず通り過ぎる。なんだかそれが腹立たしい。そんな気分だ。

「それが儀式により呼び出すにせよ、技術により作り出すにせよ、その場に存在しなかったはずの神が、新たに現れる。という事には変わりありませんでしょう?」

 それはそうだろう。新しい神が現れる。それがどういうことで、どういう事態を招くのか。そういう話なのだろうか。

「新しい神が現れると、必ず、何がしかの法則が誕生するようです。それは多大な影響を及ぼし、その影響は、必ずしも良いものばかりでは無い……と」

「神様ってのが、良い存在ばかりじゃないってことか。それはまあ、良くわかる話だ」

 これまで旅をした廃墟や砂漠を思い出す。あそこにいた神々と呼ばれる存在が、突然現れたとしたら? 恐らくは混乱をもたらす。酷い混乱をだ。歓迎できる代物ではない。

「しかし、それら新しい神はあくまで意図的に呼び出したものであり、もし害があっても限られたものであったとのことです。問題となるのはその後の展開。とのことでした」

「女の子が役を演じていた、最初の女神とどこか違う白い服の女神こそが、意図的に呼び出していたそれ、ということであるか! となると、その後の展開とは、黒い服の女の子であろうか?」

 ブラッホの言葉で頭が整理できた。昨夜の劇において、気になることと言えばそこだ。黒い服に着替えた女の子。あれもまた神なのだろうが、あれだけが雰囲気の違うものだった様に思う。あれにはいったい何の意味があるのか。

「その、わたくしは見なかったのですけれど、白い服が作られた神だとするのなら、黒い服はその反動なのだとか。わかりますか? 強い力には、必ず何か反発がある。神という超常的な存在にもそれはある」

 クリスト達の説明を、ミナ導師を通して聞くところによれば、それは穴とも表現できるらしい。そうして神は山だ。

 山を作り上げると、必ずその山を積み上げた結果、穴が出来る。その穴こそが黒い女神であり、神を作り上げた分だけ、その穴は大きくなる。

「街を滅ぼしたのは作った白い女神でなく、反動である黒い女神であるということらしいです。まさに技術や過剰な知識がもたらした結果。だからこそ、彼らはそういったものを忌諱する様になったそうで」

「待ってくれたまえよ! 黒い神によって、街が崩壊したというストーリーは分かった。しかし、それでどうして街を出て放浪の旅を始めたのかがわからんであるな! 壊れたとしても、街は街。再度復興させようとするのが人情ではないかね?」

 クリスト達は贖罪の旅を続けているという話らしいから、黒い女神の破壊に対する贖罪のために旅を出たのでは。などと俺は思ってしまうが、その過程が事実なのだとしたら、街に留まるという選択をするのが人情ではないかとブラッホは思っているらしい。

 神が現れたり破壊したりと、神話みたいな話であるため、歴史的事実の様に話すブラッホが奇妙に映った。

「それが……街はもう絶対に暮らせない場所となっていたそうで、それを含めての贖罪の旅へ出たのだとか」

 なるほど。そういう事であれば理のある話だ。何時か旅を続け、罪が許された時、かつての土地へ戻れる。などという感動的なオチも用意できるし。

「ふうむ。神を作った反動により、悪い神を発生させてしまい、それにより住むことすら不可能な土地を作り出してしまった……か」

 どこか深刻そうな表情をするブラッホ。彼がこういう顔をするのは珍しい。一方で、俺もブラッホの呟きを聞き、何か嫌な発想が思い浮かびそうになる。

「作られた神が多発すると、すごく大変な事が起こる。なんだ? こんなのは単なる妄想なわけで……」

「どうしたのですか? お二人とも?」

 唐突にブラッホと俺とが妙な顔を浮かべ始めたので、ミナ導師の方は困惑してしまったらしい。

 どうにも、迷いが生まれる休日である。この迷いが、次の出発までにどの様な昇華がされるか。神ならぬ俺には、まったくもって分からないのだった。



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