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フライトコロナイズ  作者: きーち
第5章
28/49

1話 休日は話を聞こう

 前回までの冒険を終えて、ヒドランデへと帰投したペリカヌ。ヒドランデにいる間は休息の時間。

 フライト中はどうやったって禁欲的な生活スタイルになるため、こういう休息期間は、はしゃぐ人間が多い。

 俺、アーラン・ロッドがどうかと問われれば、勿論ながら飲み食いをする。はしゃぎ過ぎるというほどでは無いが、脂ののった肉を食べ、しっかり味のある酒を飲む。それが最高の贅沢だと長期のフライトでは実感させられるのだ。

 ペリカヌに乗っている間はできないことをする。それが飛空開拓計画に参加する者の贅沢なのである。

 さて、そんなご機嫌な時間。酒場で他の船員と騒ぐのが本来……なのであるが。

「君はどう思うね? 今回のフライトでも、明確な利益は得られなかった。これは国家の損害だよ。アニーサ艦長の能力は認める。危機的状況において、人的被害をこれまで出していないという状況判断能力は抜群と言えるだろう」

 俺に語り掛ける声が、テーブルに置かれた鉄板の上で焼かれる肉厚のステーキのじゅうじゅうとした音を遮る。

(この音、結構好きなんだけどなぁ)

 好きな音が遮られたせいで、余計に減退していた食欲が無くなっていく。食欲減退の原因はサーイル・エンゲン報告官。彼がテーブルを挟んだ向かい側の椅子に座っているからだ。

 彼はペリカヌであったことを逐一国へ報告する役目を担う人間である。

(確か……普段のフライトじゃあ暇な分、こういう休息時間に仕事をする人って聞いてたんだけどな)

 ちらりと酒場の窓を見る。外はまだ明るい。当たり前だ。今食べているのは昼食なのだから。

「どう思うかと私は聞いているんだが?」

「あ、はい。艦長の能力がどうか、でしたか」

 サーイルは昼に時間を取って、俺に話をしに来たのだと思う。ご苦労な事であるが、正直、話をするには気乗りしない相手だった。

 報告官なんて役目、聞けばそれなりの立場に思えるが、実際は、艦内の悪い部分を告げ口する立場。そういう仕事だから仕方ないとは言え、好意的に見る人間は少ない。

「アニーサ艦長に能力はある。判断力もだ。そこは私とて認めている。しかし、目指すものに関しては、些か疑念を感じざるを得ない。そこを君はどう思うかね?」

「俺に聞く話ですかね? 艦長と普段接してるメンバーは―――

「艦首配備の船員は、完全にアニーサ艦長側だと見て良い。だから、そこ以外の部分で艦長と接触する機会の多い君に聞いているのだよ。私は」

 側とはなんだ側とは。ペリカヌの船員である以上、誰だってアニーサ艦長の部下だろうに。それとも、別の“側”を作りたがっているのだろうか、彼は。

「そりゃあまあ、結構大胆なことする人ではありますね。あの人は」

 ステーキをナイフで一口分切る。それをフォークで突き刺してから、口に運ぶかどうかを迷う。今食べると、絶対に不味い気がするのだ。

「だろう? その大胆さで、どれほど船員が大変な目に遭っているか! 君が一番良く知っているのではないかね?」

「まあ……それは否定しませんけど」

 とりあえず、フォークを置く。食事は苦手なものから先に片付ける性質なのだ。

「私はね、今回、アニーサ艦長のこれまでの言動を、包み隠さず本国へ伝えるつもりだよ。その時、何かしら君も意見を求められたら、船内の環境について、一切の遠慮なく語ってくれよ?」

「え? あ、はい。嘘は吐きませんよ。そりゃあ。頑張ってください、応援してますって」

 とりあえずさっさとこの話を終わらせたいのと、サーイルが考えている程度のことであれば、アニーサ艦長ならとっくに対策できているだろうという信頼があるため、会話をさっさと流そうとする。

「約束したからね! 私はこの計画を正しい方向へ修正しようとする人間だということも忘れないでくれたまえ」

 それだけ告げると、サーイルは席を立ち、酒場を出て行った。机の上には数枚の硬貨が残されたままだ。

 ちなみにサーイルは店に来てから、何も飲み食いしていなかったはず。

(とりあえず、嫌な話をしているって自覚はあるのか………)

 存外、あの人も能力はあるのかもしれない。そう思いながら、漸く、ステーキの一人切れ目を口に入れる。

「っ、やっぱり不味いな」




 ヒドランデにいる間は、小型飛空船班同士の訓練などを行う時はあるが、大半は暇だ。なので積極的に暇つぶしを見つけ、心体ともにリラックスさせることがこの期間の仕事だとも言える。

 フライト中だって給料は出るため、懐は暖かい。飛空船の船員が派手に金を使うのはヒドランデの経済を動かすため、基本的には歓迎もされる。

「問題は、今日をどこで過ごすかだ」

 やや不満の残る昼食を終え、腹は満ちた。この後に惰眠を貪っても良いが、そういうのは手持ちの資金が尽きてからでも良い。

 ヒドランデの街にはカジノやちょっとした遊びを行える店もあった。選択肢には困らない。どれを選ぶかという贅沢な悩みだ。

「とりあえず、街を歩いて決めるか」

 店が並ぶ主要道を歩き、あちらこちらを物色する。こうしていれば、勝手に呼び込みが来るので、探す手間が随分と省ける。ただ、その呼び込み自体も考えものみたいな部分があった。

「おにーさん! 良い娘いるよー!」

「あー、悪い。昼間からじゃあそんな気にならねぇよ」

 こんな風に、別に興味が無い店からの呼び込みだってくるのだ。特段、女遊びを嫌悪しているわけじゃあない。

 ただ、飛空開拓計画中は、どうしても艶っぽい気分になれない自分がいる。遊びたいけど一部は除く。結構傲慢な考えに至りながらも、見つかるものはあるだろうとぶらつき続ける。

 すると目に留まる看板があった。

「考え物屋?」

 確か、数字遊びや出された問いに対して答えを考える。みたいなことをしている店だったと思う。そうやって頭を動かすということは苦手なため、利用したことは一度も無かった。

(金出してまで苦手なことするってのもな)

 嫌厭しがちな種類の店であったと思う。が、今のなんだか微妙な気分を入れ替えるには丁度良いかもしれない。

 ふらふらと立ち寄り、入り口になっているウェスタンドアを潜る。

「おっと、中はこうなってるのか」

 壁に紙がピン止めされ、天井には棒な様なものが何本かある。そうしてその棒から吊り下げる様に、やはり紙が存在していた。紙だらけの場所だ。

「いらっしゃーい。一枚取ったらここにお金いれてねー」

 40代くらいのおばさんが、入ってきた俺に対して話しかけてくる。店内はそれほど広くなく、この程度の扱いで良いのだろう。

 俺はとりあえず近くにあった紙を取り、言われた通りおばさんの近くに置かれた箱へ硬貨を入れる。

 恐らくはこの後、店内に幾つか置かれた椅子に座り、紙に書かれた問題について頭を悩ませば良いのだろう。

 と、店内を見渡している内に、見知った顔がいることに気が付く。アニーサ艦長だ。まさかと思ったが、酷く似合っているので、まあそうかなと納得する部分もある。

「艦長も息抜きですか」

 知り合いがいて話しかけないのも空気が悪くなる。とりあえず近くに空いた席もあることだし、そこに座ってから話をしてみることにした。

「あら、こんなところで珍しいですわね」

 紙を一旦近くの机に置いてから、アニーサ艦長が顔を上げる。確かにこんなところで珍しい人間であることは自分でも知っているが、知能が低いと言われた様な気もして、やや良い返事とは思えなかった。

「そっちは思った以上に似合ってそうだ。どんなのしてるんです?」

「閉ざされた部屋のなかで、絶対に欠けない石があったとして、その部屋では時間が流れているか。という問題ですわね」

「え? あー……うん。なぞなぞ?」

「哲学ですの」

 そうか。学問なのか。そりゃあ参った。俺にはさっぱりだ。

「っていうか、面白いのかな、そういう問題ってのは」

「面白いですわね。少なくとも頭の中を整理できますし」

 難しそうな問題に思えるが、それを考えて、むしろ頭を整理できるというのはどういう状況だろうか。あれか、長い文章を見て眠くなってくるみたいなものか。それならば共感できるのだが。

「あなたはそう思いませんの? 一向に手に取った問題を見ていない様ですけれど」

「ああ、俺? 俺は……まあ良いんですよ」

 ちょっと興味が湧いて紙を見るも、良く分からない数字と記号の羅列だったので、早々に諦めることにした。良いさ。募金みたいなもんだ。

「時間潰しに丁度良いお店なのですけれど、あなたは早々に出て行きそうですわね」

 ぐうの音も出ない。確かにあと数分ほどで店を出ることになるだろうと思うが。

「あ、そう言えば、伝えるかどうか迷ってたんですが、ここで会ったのも縁だから伝えておきますか」

 とりあえずここで会話を打ち切ったら、本当に店に来た意味が無いため、話を続けることにする。

「あら? なんですの?」

「報告官のサーイルって奴。艦長は何か彼に恨みでも買ったんですか?」

「? 彼が何か?」

「いえ、今日の昼間、艦長への恨み節をたっぷりと、それを国へ報告する旨を、何故か俺に話しまくってましてね」

「なるほど。何時も通りですわね」

 それだけ感想を述べると、そのまま手に持った問題に向き合おうとするアニーサ艦長。ちょっと待って欲しい。

「何時も通りって、それだけですか?」

「ええ。彼がわたくしに色々と苛立ちを覚えているのは何時も通り。それが本国へ報告されるのも何時も通り」

 手に持った紙を見続けるアニーサ艦長。この元お姫様、人と話すときは相手の目を見てという教えは受けていないらしい。

「良いんですか? 国はあなたを艦長の職から下ろすかもしれない」

「わたくし、この立場になることだけを望み、これまで励んで参りました。やっと目的の地位になって、これからというところでもありますわ」

「ええ、だからここで足を掬われるなんて……」

「足を掬う方はわたくしに匹敵するくらいに何かを望み、準備をしてきたでしょうか?」

「は?」

 変わらず紙を見たままだが、少しばかり語気が強くなった気がする。

「夢を叶えるというのは、叶える以外の選択肢を潰すことだとわたくし考えてますの」

「なんですか? また何かの難題ですか?」

「難題と言えばそうですわね。けれどすることは簡単ですわ。すべてを、願う道以外のすべてを自他ともに潰していきますの。自分についてはさらに簡単ですわね。それ以外を考えなければ良い」

 さて、かなりきな臭い話になってきたと思う。血の気が多くなってきたともいえるやも。ただ、ここで中断するのもなんだかなと思う。

「むしろ他人をどうするか。そればかり考えていましたわ」

「………顔、怖いっすよ」

「ああ、それはいけませんわね。基本的に、人に見せる顔も、人を型に嵌める重要な部分ですし」

 恐ろしい事を言葉にしながら、艦長はやさしく微笑む顔をするが、顔が怖いと言った意味はそうじゃあない。思いが顔に出ているのだ。どんな表情したって、威圧的なそれになっている。

「今さら、どこかで邪魔立てが入っても、揺るぎないくらいに潰して踏み固めていますから。サーイル報告官さんの行動はただ楽しんで眺めることにしていると、そういうことですわ」

 やっぱり怖い話だ。表情をどんなにしたって、目の前のこの女は化け物なのだと思う。そういえば前回のフライトでも、凡人ならとっくに諦めている状況に対して、それでも一人折れていなかった様に見える。

「あなたが艦長でいる限りは、頼りになりそうだってのは、よーっくわかりました」

 絶対に敵に回したくない存在がいるものだなと実感する。ただ、そんな答えに、何故か本当の感情で笑った表情を浮かべるアニーサ艦長。何か笑える事を言っただろうか? それとも、これもまた演技か?

「どうにも、見解に相違がある様ですわね。それとも本人は気付いていない?」

「なんのことです?」

「いえ、あなたも、わたくしと同類だと思っていたのですけれど」

「………」

 強い願いがある。その願いを叶えるために、他の選択肢を潰していく。そうか、そう言えば、俺もそんな生き方をしてきた気がする。自分なりにやるべきことをやり続け、ただひたすらに一本の感情に従って前へ進む。そうか、他人から見れば、俺もそう映るのか。

「あなたが変遷しない限り、俺はあなたの味方で忠実な部下ですって返答はどうですか?」

「あら、とても良いご返事ですわね。ならわたくしはこう返しますわ。信頼できる部下を持てて、艦長として幸せであると」

 お互い、目的は一致している。その事を再確認する作業だった。こうでもしなければ、お互いの感情が相乗効果で高まりそうなのだ。

 言いたいこと、恨み節は腐るほどあるが、ぶつける相手がいないなんて状況。それが子どもの頃からずっと続いている身だから、仲間を見つけたとなれば、それをぶちまけたくなる。

 しかしながら、そんなことをしたって何の意味が無いことを知っているから、お互い、直接にその感情を口にすることは無かった。復讐なんてそんなものだ。

「ああ、それとこれは同士として伝えておくことですけれど、次のフライトの目的地も、やはり人の文明がある場所ですの」

「……それって、前回みたいな恐ろしい目に遭うかもしれないってことっすかね?」

「もしかしたら前回以上かも。なにせ、そこは前回とは違い、無人の可能性の方が低い」

「ああそうか。順番的にはそうでしたっけ」

 ペリカヌのフライトは、外世界の住人より手に入れた情報から、より人が居住しやすい地域を探す方針で進んでいた。

 前回は人が住んでいた跡地。そうして次回は、実際に人が住んでいるかもしれない場所へ向かうことになるのである。

「前回のは災難でしたけどね。実際には、人の居住地で、そこにいる人間に嵌められた」

「あら? あれはその土地の神様が荒ぶった結果。という結論が出たような気がしますけれど」

 そういう風にも表現できるだろう。前回の旅は、元は人であり、何時しか神のごとき力を手に入れた存在が、自らの国の住人を、幻想の世界へと閉じ込めた場所への旅でもあった。

 俺達はそんな場所である街へと不用意に足を踏み入れ、結果、幻想の世界へ俺達自身が閉じ込められかけた。

 土地自体は人が住みやすい場所ではあったが、それでもその地にやってきた人間が幻想の世界に飲み込まれて行方不明になるかもしれない。

 ある意味では汚染されている土地だろう。だから人が住む土地としては向かない。なので開拓計画そのものとしては失敗の類であり、昼食時のサーイル報告官の文句も、丸っきり外れではないのだ。

「次は恐ろしい目に遭うかもなんて言ってましたが、それって、次も失敗するってことじゃあありません?」

「次が“目的”の場所であるならば、成功しますし、そうでなければ“失敗”しますわね」

「ああ、やっぱあんた怖いわ」

 そりゃあそうだ。飛空開拓計画が復讐相手を見つける前に終わったら、彼女の願いはかなわない。彼女の言葉を借りるなら、復讐相手を見つけないままの計画成功の選択肢は、既に潰している。ということなのだろう。

「あなたにとっては頼もしい存在として行動していると思いますけれど?」

「女性にそんなこと言われて、男冥利に尽きますよっと……やっぱり、俺には合わないみたいです。この店」

 俺は手で弄んでいた問題の書かれた紙を、アニーサ艦長に渡す。俺には理解できなさそうな問題だったが、アニーサ艦長であれば楽しめそうなものに思えたのだ。ただのゴミとして扱われるよりは上等な使い道だろう。

「お世辞でも似合いそうなお店とは言えませんものね。この後はどちらに?」

 さて、どうしようか。この店に来たのだって気まぐれからであるし、この後どうするかなどとは考えもしなかった。

 と、ここまで考えたところで、どうせ頭を動かすつもりだったのだから、もうちょっと面白いことで頭を動かしてみるかと考える。

「そうですね、ちょっと、老人に知恵を教わりに」

「ああ、時間潰しとなれば丁度良いかもしれませんわね」

 酷い言い様だが、まあ、そんなものだろう。魔法士、デリダウ・ドーガの話を聞くというのは。




「妙とは思わんかの?」

 と、デリダウ・ドーガ老の研究室へとやって来た俺は、部屋の主からそんなことを尋ねられる。

 というか、なんでペリカヌがフライトをしていない間も、この老人はペリカヌにある部屋に籠っているのだろうか。

「妙と言うと、先生が普段、研究以外でどういう暇の潰し方しているか想像すると妙な気分になりますね」

「そうかの? いや、基本的に暇があればこの部屋であれこれしとるから、想像できんのも仕方ないが」

 やはり何時も何時もこの部屋にいるらしい。良くやるものだと思う。

「で、何が妙なんです? 確か前回の街の話でしたっけ?」

「前回もそうであるし前々回もじゃな。もっと具体的には、空クジラと廃墟の皇帝。この二つについてじゃ」

 前回の旅で出会うというか、俺達を嵌めた形になる存在。それを俺達は廃墟の皇帝などと呼び始めていた。

 皇帝という大層な名前に、廃墟というなんとも寂しげな名詞を付けることで、一連の出来事を、ジョークみたいな話にしようとしている節がある様だ。

 実際は、ペリカヌの船員全員が街にて全滅していた可能性があるのだから、冗談ではない話だが、それもこれも終わった話である。

「その廃墟の皇帝と空クジラ……どっちも確か神様なんでしたか」

「便宜上、そう呼ぶとしておるだけじゃな。何かしら大層な存在ではないが、大層な力は持っておる存在じゃ。そういう存在が生まれる過程については以前話したの?」

「こう、選択肢がたくさんある中で、偶然すべての正解を選ぶ存在……でしたっけ?」

 うむとデリダウ老が頷く。この老人との話はこの通り、質問されたことにこっちが答えるという形で進む。一方でデリダウ老は何も答えられない質問はしないため、なんだか話していて面白くなってくるのだ。

 俺がこの老人を先生と呼び続けているにも、そこらの言動が起因している。

「その通り、この世界は広いから、そういう存在もあり得るわけじゃ。じゃが、ここで妙なことがあるのは分かるかの?」

「妙……ああ、数が多いってことっすね」

「そう。わしらがあった神は二体。しかもごく短期間のうちでじゃな。アーランくんはそう頻繁に、神などと言うものを見た覚えはあるかの?」

「まさか。そこらにそんなものがいたら、世の中、もっと纏まりの無いものになってる」

 あんな化け物以上のナニカが、早々いてたまるものか。

「では、どうしてわしらは奴らに出会えた?」

「そりゃあ………外の世界を冒険するんだ。そういうこともあるでしょうよ。知らない世界には危険は付きもの」

「理由になっとらんのじゃあないか? 外の世界で頻繁に出会えるなら、内の世界でも出会えておかしくないじゃろう」

「まあ、そうか……」

「この状況に関して考えられる状況は二つある。一つは、内の世界にもそういう存在はごろごろして、それを隠しておるかもしれんと言う状況」

 この一つ目はそんなことは無いと俺でも反論できる。さっきも言った通り、存在だけでその周囲を変えてしまう影響力があるのだ。隠したって隠しきれるものではない。

 廃墟の皇帝だって、当初はその力を隠していただろうが、それでも最後にはその力を行使した。内世界の社会がそれほどの混乱に陥っていないという事実が、内世界に神はいない。もしくは殆どいないと見るべきだ。

「じゃあ、二つ目が本命ってわけだ」

「ま、そうじゃのう。一つ目は内世界そのものを見ても否定できるし、別の飛空開拓計画で神と出会うなどという事件が起こっていないことからも、内世界に神がいないという状況が、特別ではなく他の外世界と変わらんということを証明しておる」

「あれ? 他の飛空開拓計画では神と出会わないと?」

「ああそうじゃ。わしが最初に空クジラを見た時に驚いとったじゃろう? 神の存在は説で語られるのみなのじゃよ。実在をああして確認できるのは、わしが知る限り初めてになるの」

 ちょっと待ってくれ。となると、俺はそんな稀なケースを、二つも目にしたというのか? 飛空開拓計画が始まってからこの短い間で?

「もし、これが単なる偶然ならそれで良い。じゃが、もし、万が一、また神と出会うことになるとすれば、二つ目の可能性も考えざるを得んかもの」

「二つ目の可能性……それってのは……」

「何者かの意図がある。ということじゃて」


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