3話 僕らの世界
「ここよ。ここ! ほら、見て!」
サウラに先導されて、俺達はまた夕暮れの砂漠へとやってきた。再び日が現れる頃にはこの調査は終わりであるため、それまでにやれることは終わらさなければならない。
例えばここ、サウラが一度目の探索で見つけた洞窟について調べるとか。
「こんなもの………良くあるってわかったな」
砂漠の砂で洞窟が隠れているというより、何故か砂が固まり穴となっているらしき場所だった。遠くからでは風景の一部となり、まったく判別できない。というか、俺もここに近づくまで、いったいサウラが何を目指しているのかすら分からなかったのだ。
「目は良い方ものっ。それに、変わった洞窟………そう表現した方が良いのよね? そういう感じだったから記憶に残ってるんだー。っていうか、普通、砂が自然と固まってこうなる?」
確かに、砂なんてものは明確な形になんてならず、重なれば砂山となるだけだと思う。
「怒るつもりなど毛頭無いが、何故ここを隠していたのだね? こういう場所であれば、探索する価値があるであろう?」
砂の洞窟へブラッホが真っ先に近づきながら、その洞窟の壁面を調べつつ尋ねている。彼の言う通り、こういう場所は報告する価値がありそうに思えた。
「だからですよー。なんか今にも潰れそうな洞窟なのに、言ったら絶対調べるってことになったじゃなですか。それに遠目だったから、見間違いかもって思ってた部分もありますし」
ばつが悪そうな顔をしながらサウラは弁解する。彼女の話の内容は、彼女の役目からすれば、その役目をサボる様なものなのだ。そりゃあ立場が無いと言う気分になるだろうし、ブラッホは怒るつもりが無いと言ったが、それでも後になり、何がしかの忠告は受けるかもしれない。
「今にも潰れそう………いや、それは違うようだぞサウラくん! この砂の壁、存外に固い。これは数年やそこらで出来たものではあるまい!」
「へえ………あ、本当だ」
ブラッホの言葉に誘われて、俺も砂の洞窟へ近寄りその内壁に触ってみる。ざらざらとした砂の感触が手に伝わるものの、そのまま壁は崩れず固いままだ。岩ほどの強度がある砂の壁と表現するべきか、こんなものが存在するとは驚きだ。
「マジかよ。ってことは、ちゃんとした洞窟ってことか、ここ。へえ、すげえじゃん。探ってみるか?」
安全が確認できたと判断したからか、バーリンも近寄って来た。確かに探索してみる価値はありそうに見える。
となると洞窟内での光源は砂漠探索用のランプで良いのか、それとも即興でたいまつあたりでも作るべきか。
「た、探索と言うか………これそのものが、発見じゃないか?」
ビーズはいつの間にか、俺達よりさらに2、3歩ほど洞窟へと入り込んでいる。それ以上先は明かりが無ければ暗いと思うのだが、それでも奥の方を見ている。夜目が聞くのかもしれない。
「湿気た風が洞窟の奥から吹いているようであるな! 恐らくはそれが原因だ! 何十年。いや、何百年という時間の中で、延々と同じ風が吹き続けているのだと思われるよ! それが穴を作り、砂を固めているのだろうさ!」
つまり洞窟自体は不可思議なものでは無いということか。そうであったらあったで、では洞窟を作った風はどこから来ているのかという疑問が浮かぶが。
「………湿気たって言いました?」
「指を立てて確かめてみるが良い! この洞窟からの風は確かに湿っているであるぞ!」
それはおかしい。だってここは砂漠だ。乾いた風しか吹かぬ乾いた世界。ではこの風はどこから来たと言うのか。
「ち、地下だな。砂漠とて、地下には地下水があるという話を聞いたことがある」
「地下? あー……待てよ? てーことは、わざわざスコップで掘らなくても、この洞窟を進めば、地下に行けるんじゃね?」
バーリンにしては鋭い。サウラから洞窟の話を聞いて、真っ先に期待できたのはそれなのだ。地面を掘らなくても、地下を探れる穴があるのなら、そこを調べる方が手っ取り早い。
「ま、そういうことよね。スコップで掘り続けるより大分マシって思ったから案内したんだけど………で、どうする?」
サウラはこの場にいる全員へ視線を向ける。ただ、どうすると聞かれても、答えは既に決まっている。
「ここまで来て、行かないってことは無いだろ。ですよね、ブラッホ班長」
「勿論だともさ! 進めなくなったらそこまでとして、さっそく進んで見るかね! 皆、ランプを忘れぬ様に!」
ランプは光源として使えると言うのもあるが、洞窟内での空気の変化も判断できる。全員が持って歩くべきだろう。
「何が起こるかわかんねえし、危険なのかもしれないんだが………なんでだろうな」
ブラッホが先に進もうとするので、それを追って俺も歩き出した。歩きながらの呟きは、ビーズに聞こえていたらしく、彼が言葉を返す。
「お、面白い。そう思えるのなら、上等な理由さ」
さて、なんだろうか。ビーズの趣向は、どこか浪漫を求めている様に見えた。彼がいったいどういう経緯でそれを求める様になったかについて、暇があるなら聞いてみたいところだった。
砂の洞窟は思いの外深く、暗い道を歩き続けていた。こうなってくると、なんだか心が落ち着かなくなって来る。
思うに人間とは行動し続けるタイプの生き物であり、何もしないでいるということに慣れぬ存在なのだろう。
だから暗闇の中、視覚すらもあまり利用しないで歩くだけとなれば、何か話でもして聴覚を働かせたくなる。
「そういえば、ビーズさんはなんでこの計画に参加したんですかね?」
話題はどうしようかと考えたところ、先ほど抱いた疑問を言葉にしてしまった。まあいい。嫌な質問だったら答えないで済むだろうし、相手をそこまで不機嫌にする様なものではあるまい。
「な、なんでとな? そんなに疑問に思われてしまうほどなのか?」
「まあ、はい」
自分がやや不思議な恰好や性格をしているとは自覚していないらしい。それはそれで仕方ないだろうが、それを疑問に思う人間は少なからずいるだろうことは分かって欲しいところだ。
「確か、前の仕事を止めてまで計画に参加したんだっけか?」
同じ班であるからか、バーリンが俺にとっては新情報を伝えてくる。
「ま、まあ………そんなものだ」
どんなものだろうか。正確には違うと言いたげである。
「ビーズくんはあまり自分のことを語りたがらんからな! と言っても、皆が皆、双方がどんな経緯を持って計画に参加したなどと、知らんもんであろう? 他人について知りたがるのは、他人について良く知らないからだ。ということである!」
「言われてみりゃあそうですね。誰かに計画へ参加した理由語るなんて、計画参加時の面接くらいだ」
その面接の際だって、俺は本当のことを話していなかった。かつて祖国を滅ぼした船を探して復讐するため。なんて理由、他人に話す様な内容ではあるまい。
「知らないで付き合えるってことは、知ってたって付き合えるってことなんだし、あんまりあれこれ話す必要性は無いわよねー」
むしろ知って不必要にぎくしゃくするよりは、知らないままでいる方が良いのかもしれない。
だからこの話はここで終わり。ということになるのだろうか。
「…………じ、実はだな」
終わるはずの話を蒸し返したのは、ビーズ本人である。他人の事を知る場合、こちらが聞くよりも聞かされることの方が多い様だ。
「実は?」
「じ、実は………俺は船に乗る前は、ちょっと人には言えん様な仕事をしていた」
「人には言えないって、してるじゃねえか」
バーリンはビーズの言葉へそう返す。肝心なのはそこじゃないと思うのだが。
「す、既に……足切りをしたからだ。というか、足切りのための行動が、この計画への参加だったんだ………」
足切り。汚れ仕事から抜け出すために、苛烈に身を清める行為と表現すれば良いのか、危機的な事が多い飛空開拓計画は、そういう行為として見ることができるかもしれない。
それに、ある意味社会から隔絶した場所に身を置くと言う行為なのだから、自身が汚れた立場だったと考える人間にとっては、最適な場所なのやも。
(なら、あんまり深く聞くべきじゃあ無いな)
過去を捨てたがっている。ビーズの話を聞くに、そういうことに思えた。過去を常に思い、その復讐を考える俺とは正反対だ。考え方のある部分において明確に俺とビーズは違うのであり、深入りし過ぎれば争いになりかねない。
人との良い付き合い方とは、見せて良い部分だけを相手に見せると言う事であるはずだ。
「悪い過去じゃあなく、面白い未来があって欲しいから、この探索に協力してるってところですかね?」
ビーズに尋ねると、暗いこの洞穴で、さらに顔を暗くしながらも、彼は苦笑に近い表情を浮かべた。
「す、好き好んで暗い立場に立つ人間もいないだろう? 何時だって、眩しい場所に立ちたいと考えてたんだよ」
この飛空開拓計画での冒険は、ビーズにとっては輝かしい場所なのかもしれない。彼はその先にある結果を求めているのでは無く、望む結果が素晴らしいものであるならば、それを目指す行動そのものも、自らにとって良いものだと考えているのかもしれない。
(やっぱり、俺とは違う。俺はこの行動を………どう思っているんだ?)
復讐。そのために計画を利用する。薄暗い考えだ。真っ当な考え方でも無い。過去において、ビーズの方が悪人と言える立場だったかもしれないが、将来においては、俺の方が余程の罪人となっている可能性もある。
「おお! みな、ちょっとランプの明かりを抑えてくれんか!」
一番前を歩いていたブラッホが、突然立ち止まって、俺達に声を掛ける。手にもったランプは、付属している布を掛けることで明かりを抑えることができるものの、一体何のためだろう。
「明かりを消すって、真っ暗になって何も見えねぇだろ………って、そうなんねえな」
バーリンが悪態をつきながらランプの明かりを薄くする。俺達もそう行動すると、勿論、周囲は暗くなるわけだが、それがある程度のところで止まる。
ランプ以外の明かりがそこにあるのだ。具体的には洞窟のさらに先から光が零れている。そう、溢れているというより零れていた。
微かな光が合わさり、視界を広げるほどの光となっている。そんな印象だ。その光は俺達が洞窟の奥に行くほど多くなっていき、そこへ到着する頃には、月明かりも十分にある星空の下くらいの光源として俺達が見る世界を照らしてくれていた。
だが、その事だけに俺達は驚いたわけでは無い。驚きは光源と、その光源が照らす世界に向けてのものだったのだ。
「すっげ………なんだこれ」
その言葉は俺が漏らしたものだ。感動とか感激とか、純粋な形でのそれらの感情は、言葉に多様性を無くさせる。
洞窟の先には開けた場所があったのだ。上が砂漠だとは思えない、広大な地下空間。ただ地下だと言うのに光が存在している。日の光のはずは無いだろう。この洞窟に入った時点で夕方だったのだ。地下の空間を照らせるほどの光量があるわけが無い。
「神秘的って言えば良いのかしら? なんだか綺麗よね?」
地下空間の底を指差しながら、サウラが呟く。空間を照らす光は、天からでは無く地面の方向から放たれていた。
日の光とは違う、どちらかと言えば星の光に似た淡い光が、地面のあらゆる場所から放たれている。さらに光は色を持っており、出ている場所に寄り、その色が違うのである。色はそれ単体で美しいと言えるものであるが、そんな光同士が混ざりあって、さらに幻想的な風景を作り出していた。
ここは夢の中の世界か。いや、確かに俺達は砂漠にある砂の洞窟をくぐりここまで来たはずだ。
「光る苔というものが存在するのは知っているかね?」
「はぁ?」
ブラッホがうんうんと頷きながら、光零れる地底を見る。
「既知のものは自らで光るわけでは無いらしいが、恐らくここのは違うのだろうな! 自ら光を発する植物的なものが、空間を照らしていると見るべきだ。ほら、見てみたまえよ!」
光る地底を言われた通りにじっくり見る。あまり眩しいと言えない光の奥に、揺れる水と、その揺れに合わせて水面が光を放つのを見た。
「水面に自生し、波うちに反応して輝く植物なのではないかな? この地底を照らしているものは!」
確かに動物というより植物的に見えた。それにしたって、この様な不可思議な景色を作り出しているのは驚きだ。
「って、なんで砂漠の地下に水があんだよ!」
バーリンはそう叫ぶものの、砂漠にだって地底には地下水があると誰かが言っていた気がする。まさかこんな形でとは思いもしなかったが。
「よ、世の中は広いな。こんな世界もあるとは………」
そう。この世界はあまりにも広い。感動という形では無かったが、こんな衝撃を別の土地でも覚えた。そうして短い間に、この場所でもう一度。俺達は何度、この世界に脅かされるのか。
「って、ちょーっと待った! そりゃあここは凄い景色だけど、私の目的は違うんじゃないの?」
言われてハッとする。この幻想的風景には驚きだが、言う通り、俺達が求めるものはこの景色では無く、クジラだったはず。
「クジラ……そうだ、砂漠の下にはクジラが―――
いるはず。そう続けようとした瞬間、地底に水面を叩く音が響いた。それと同時に、輝く地底を何かが飛ぶ。
高く水柱が天井へ昇るのと同時に、その水柱の中を泳ぐかの様に、大きな影が飛ぶのを見た。
「クジラって言うより、あれはエイだな………」
大きな影に見えたそれは、平たい魚の様な何かだった。体長はきっと俺が二人くらい縦に並ぶよりも大きいに違いない。それくらいの大きさがあった。
そのエイが地底の池を飛び、天井へと向かう。そうしてそのまま天井に潜ると言えば良いのか、穴を掘る様に埋もれて行った。
「不可思議であるな!」
「で、ですよね。どういう生態なんだ? この空間で普段は過ごしていて、餌を求めて砂に潜るとか?」
「いや、生物の生態系なんぞ、謎は謎であるが、謎では無いのだよ!」
生き物は生きるために効率の良い生き方を選択する。一見不可思議に見えても、そこにはちゃんと理由があるのだとブラッホは説明した。
「じゃあ、何が不思議なんです?」
「潜れる程度に、天井が柔いということがであるよ!」
「あ……」
そうだ。この空間の上は砂なのだ。普通、下にこれほどの空間があれば、砂は下に落ちるのみではないのか? だというのに、確かにこの空間は存在していた。
奇跡的なバランスという訳でも無いだろう。なにせ、あの池から天井へ飛んだエイの様に、空間のバランスを崩す要素はいくらでもあるのだ。風だって池を揺らすほどに吹いている。
「なんでだ? 何がどうなってここは存在してるんだ?」
自然の奇跡として納得し難い何かがこの空間にはある。ブラッホの言葉でそう気が付いた。
「変……確かに変よここ。光源になるものがちゃんとあって、分かる? 空気だって澄んでる。地下なのに……換気がしっかりしてるってことよ?」
「そういやあ、寒くも暑くもねえってのもおかしいよな? 砂漠のはずだろ? ここだって」
サウラやバーリンもこの空間の異常さに気が付いたらしい。そうだ。ここはあまりにも出来過ぎている。
幻想的と思っていた風景さえも、何故かわざとらしいものに思えて来た。いやに綺麗過ぎやしないか? なんというか、作為的と言うか、生物として生きるために光っているというより、見るものを楽しませるために………。
「じ、人工的な空間。班長は………そう思うか?」
ビーズは何故か、忌々し気にこの空間を睨み呟いた後、ブラッホの方を向いた。彼も彼で、この空間に思うところがあるのだろうか。
「人工的と言うが、ここが人の力で作られたと思うかね? 本気で?」
何時もの力強い口調では無く、まるで課題を出す教師の様にブラッホは尋ねて来た。目線はビーズから、さらに俺へと移る。
「できないですよ。できるわけないじゃないですか。ここは………人の手に余る」
こんな場所を作れる力も技術も、俺が知る世界には存在しない。では何だ。本当にこの空間は自然の現象だと言うのか。
「人の手に余るものは神の御業だよ! 人智しれぬ神がここを作ったのだ。そう思うことが健全だと私は思うがね!」
そんな言葉がブラッホの口から出て来るとは思わなかった。ただ、それ以外の理由が付け難いというのも事実だ。説明に神を求めるのは思考停止のそれだと言う輩もいるが、そこで思考を停止しなければ、さらなる混乱が待つ場合が多々ある。ここは即ちそういう場所だ。
「………とりあえず、さっき見たエイみたいなのが、噂のクジラってことで………良いんですかね?」
「クジラには似ても似つかないが、まあ仕方あるまい! これより奥はどういう何が待ち構えているか分かったものではあるまいから、一旦、ペリカヌへ戻り、クジラ発見の報告をしてから、艦長の指示を仰ぐことになるが、それで良いかね?」
「はーい」
返事はサウラのみがしたが、全員賛成だった。いろいろと発見が多すぎる。いくら冒険を望んでいたとしても、手に余る規模のものである。
装備だって万全とは言えないのだから、ここは一旦撤退するべきだろう。
「しっかし、なんだよな。俺達、こんなのがある世界に住んでるんだよな」
バーリンの何気無い一言で、どうにも不気味さを憶えた。俺達だって、こんな不可思議な世界の中に住む、やはり不可思議な存在なのではと思えたからだ。
砂漠の下にある地下空間についてアニーサ艦長へ報告した時、まず彼女にされた反応は、幻覚でも見ていたのではないか? というものだった。
「幻覚なら幻覚で構いませんけどね、砂漠の下にそういうのを見せる何かがあるってことに事実が変わるだけで」
相も変わらずブラッホとセットで、アニーサ艦長と会議室に詰めている。他の3人だって呼べば良いのに、俺達二人に限定しているのは、信頼されているからか、それともまた別の意図があるからか。
「確かに。興味深い事象であることは確かですの」
口元に手の平を当てて、どうしたものかと思案する様子のアニーサ艦長。捨ては置けない発見であるということは理解してくれたらしい。
「で、どうしますかな艦長! 我々はまだその興味深いものの門を見た程度でありますからな! ここで立ち去るというのはあまりにもだと個人的には思いますが!」
ブラッホの態度は、今度はしっかりと準備をしてから探索させてくれ。という意図を隠そうとしない。
一方でアニーサ艦長はどう考えているのか。
「あくまでも今回は………いえ、ですが………見るべきものは………」
かなり悩んでいる様子。珍しく、思考が独り言として漏れている。それともこれもポーズだったりするのだろうか。
「悩むということは結論が出ているのではないですかな! 艦長が当初描いていた予想から、事態は大きく離れていると見るべきです! 思いから現実が遠くなれば行動で近くせよ! ということですな!」
もうここまで来たら勢いだとばかりにブラッホは捲し立て続けている。艦長の様子を見るに、押し切られるまであと少しと言ったところだろう。
そんなアニーサ艦長が、チラリとこちらに目線を向けた。助けを求めてではあるまい。
「アーランさんは、どう思われますかしら? ここで、その地下を調べるべきだと?」
ここでの意見を求められるということは、彼女と俺の共通部分。外世界の巨大飛空船を探すという目的から外れはしないか。という事の意見を求められているに違いない。
「………俺は、アリだと思いますよ。俺達には覚悟が必要だ」
「覚悟?」
「この世界を知ると言う覚悟です。あの地下空間はきっと、それを与えてくれる」
目的の巨大飛空船にしたって、俺達にとっては未知で、しかも想像を絶するものである可能性があるのだ。その時、慌てずに事を成すには、そういう相手であるのだと覚悟しておく必要がある。
そのための試金石として、あの空間は丁度良いと考える。
「前に艦長の方が言ってましたよね? こんな不思議は序の口だと。今回もそうじゃあありませんか? こんな程度で心を揺さぶられてしまってるってなら、そろそろ耐性を付けないと」
俺がそこまで言葉にすると、アニーサ艦長は意思を決めたのか薄らと微笑み、口を開いた。
「分かりました。探索を許可しますわ。地下空間を見つけた時と同じメンバーで、今度はさらに装備を整えて挑んでくださいまし。ただし、失敗は許しませんわよ?」




