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フライトコロナイズ  作者: きーち
第3章
17/49

2話 行動と結果

 砂漠を歩く上で重要なのは、自らの体力を具体視する技能である。普段から感じる、なんとなく疲れた、調子が良い。と言った部分を、曖昧にでは無く、明確に意識下へ置き続けることこそが肝心だ。

 そうして少しでも体力が低下したと感じたなら、休息を取る。そのための場所は常に周囲を見て把握しておく。具体的には日陰になりそうな場所である。頭は働かせるものの、肉体には絶対に無理をさせぬ様に心掛けなければならない。

「砂漠という場所ではな! 動けなくなるその何段階も前に命を左右する事態というものが起こっているのだよ! だから決して無理はしない! 無理をするということは、それ即ち、死へ片足を突っ込んでいる状況なのだ!」

 ならばそうやって大声を出し続けるのは、体力の消耗となり、死へ近づく行動ではないのか。そんな風にブラッホへツッコむ人間はいなかった。彼の体力はどう見ても有り余っていたからだ。

 俺達は夕暮れの中、砂漠を歩き続けている。調査であるため、着陸したペリカヌから円を描く様に移動し、それを徐々に広げていく。という進行になっていた。

 探索を続けながらも、ペリカヌは常に見える様にしておくことで、砂漠を迷う心配は無いのだが、思いの外砂の起伏が激しく、足を取られ、体力を消耗してしまう。

 できればペリカヌへ帰還するということもせず、期間一杯は砂漠の探索を行う予定のため、ブラッホの言う通り、体力配分をきっちり行っておかなければなるまい。

(昼と夜は極力行動しない。万が一疲労が限界近くなる者が出れば、すぐにペリカヌへの帰還を判断する…………まあ、そんなもんか)

 慎重し過ぎてあまり行動的では無いが、今回の探索にしたって、それほど全力を出すものでは無いと、指示を出した艦長は考えているのだろう。

(クジラさえ発見できればそれで良い。それでクリスト達の話の事実は証明できるし、探索で得た面白い情報として本国へ報告できる。わざわざ命を賭ける様な状況では無いし、それをさせるのは無能の証明だ………ってところか?)

 頭の中で、アニーサ艦長がどんな考えをしているかを想像する。

 彼女とは何故だか話す機会が多い。大凡、彼女が考えていることを、彼女の指示を通して分かる様になってきた。もっとも、彼女が裏で何かを考えている場合は、俺だってその裏が何なのかさっぱりであるが。

「あ、待ってみんな!」

 ひたすらに歩き、クジラらしき生物が見つからぬものかと視界を巡らせていると、突然、サウラが俺達一行の前に出て、手で制止した。

 俺達の動きが止まったことを確認すると、サウラは俺達の眼前にある砂漠の小さな起伏に近づき、それを足でなぞった。

「ほら、みんな。見て。これ! それともうっちょっと向こうにあるもう一つの起伏! 空から見たら、きっと何かが移動した跡よ、これ!」

 地図を製図する能力は、地上にいながら土地を俯瞰するできる力が備わるのか、少なくともそれに近い想像ができる程度にサウラは優秀だった。

「ふむ? これは風や雨に寄るものじゃあなさそうであるな!」

 喜ばしいものを見つけたと言った風にブラッホが笑う。まあ、彼の場合、何時だって笑っているが。

「つまり、クジラが下に潜った跡だとか?」

 恐らくはそうなのだろうと予想した上で、ブラッホに尋ねる。

「まだクジラと決まったわけでは無いがね! だが、我々がペリカヌから見下ろした何かである可能性は高いだろう!」

 地面の下を潜る生き物がそう多いとは思えない。俺達が探している生物の痕跡である可能性は十分にあり得ると思われる。

「ここを調べたら、一度、空から見たあの場所へ行ってみるのが良いかもしれんな!」

 ブラッホの言葉に皆で頷く。まだ夜は長い。あくまで慎重さを忘れないでいれば、じっくり調査できる時間はありそうだ。

「って、場所、わかるんっすか? 班長」

 主に俺と一緒に荷物持ち役をしているバーリンが、今さらそんな事を言う。

「私と班長がいればよゆーよ、よゆー。って言うか、バーリンくんは分かんないんだ?」

「は? こんな砂だらけの場所、どこがどうなんて分かるわけねぇだろ! ってか、前から気になってたんだが、くんってなんだくんって! お前は俺より年下だろ!」

「年上に見えないからくん付けしてんのよ! 悔しかったら方向感覚と景色の違いが分かるくらいの眼力身に付けたらどうなの?」

「あー? わかったわかった! 喧嘩売ってんだなてめぇ!」

 さて、二人の喧嘩を見ながら、俺はそれを同じく眺めているビーズへと近寄り、話し掛けた。

「なあ、あの二人、仲が良いのか?」

「ど、どこをどう見れば、そう映るんだ………?」

 怪訝な表情をされてしまう。普段からして暗い表情の彼にそんな顔を向けられるのは中々にショックだ。喧嘩するほど仲が良いと言うじゃないか。

「仲が良く無いってことは、そろそろ止めないとヤバいってことだよな?」

 だいたい危険な砂漠のど真ん中でチームメンバーが仲違いなど不安で仕方ないではないか。あれが仲の良いからこそのあれこれであったのならば、むしろ安心できたのだが。

「あ、安心しろ。だいたいここらで班長が止める」

 ビーズの言う通り、今にも取っ組み合いになりそうな二人の間に、筋肉の壁が入り込み、物理的な障害となって二人を分け隔てた。うん。体が大きいとは素晴らしいことだ。

「余計な体力を使うなと忠告したはずであるが、もしや上手く伝わらんかったかな! 言葉で駄目ならボディーランゲージを! という言葉もあることであるし、私はそれを実行すべきだろうか!」

 中々に普段見せぬ物騒な物言いだ。もしかしたら本気で怒っているのかも。他の班員としてからでは見えて来ない姿というものがここにはあった。

「とりあえず………ちゃっちゃと調査なり移動なり何かしないか? 立ち止まって叫んでるなんて、体力云々以前に人としてみっともねぇだろ」

 部外者である俺が締めた方が良い状況かなと思えたので、全員に向けて話す。ばつの悪そうな表情を浮かべるサウラとバーリンの姿を見て、なんとか建設的なことを進められそうだと胸を撫で下ろした。




「やはり、ここも似た様な跡が残っているようであるな! もしやこの周辺は縄張りと言う奴なのかもしれんぞ!」

 上空から何かが動くのを見た場所へやってくると、ブラッホはさっそくその周辺を調べ、さきほど見つけた様な砂の盛り上がり跡を発見したらしい。

「縄張りってことは、俺達はその縄張りに入った侵入者って立場かもしれませんね」

「………」

 ふとそんなことを思ったので言葉にしてみると、全員がしんとしてしまった。どうやら冗談ではない発言だった様だ。

「あ、俺さあ、ずっと思ってたんだことがあんだよ」

 漸く声を発してくれる者がいた。それがバーリンであるという事実は、やや不安を感じるものの。

「ふむ? いったい何を感じたのだねバーリン君! そういう何がしかの発想は大事だよ!」

「あ、じゃあ良いっすか? 俺思ったんですけど、ほら、なんか本格的に生き物がいねえなあって」

 確かに、バーリンの発言通り、俺達はこの砂漠において、俺達以外の生き物を見ていない。

「そりゃあ砂漠なんだし、生き物は少ないんじゃあないの?」

 当初はサウラの発言通り、そう思っていたが、良く考えてみればそれもおかしい。

「い、いや……生物ってのは存外しぶといんだ。こんな場所でも、生きてる奴はいるってのが、普通だ」

 ビーズの言葉に頷く。俺はこの砂漠と同じかもっと酷いかもしれない環境の場所で、植物が頑丈に育っているという光景を見たことがある。

 だが、この砂漠には植物すらも見えないのだ。

「おかしい。確かにおかしいであるな! 我々は空から見て、砂の下を動いているらしきものをどう思ったであるか?」

「そりゃあ、空から確認できる程度にはデカい………いや、待てよ? じゃあそのデカい生き物は、何食って生きてるんだ?」

 大きな生物は、必ず何がしか他の生物の存在のおかげで生きている。違うのは植物くらいだろうが、それにしたって、この砂漠では土の養分が少なく、それほどの大きさにはなれないはずだろう。

「これは探索方法を考え直さなければならんかもしれんぞ! とりあえず夜のうちはこれまで通り歩きながらの調査を続けるが、それで何も発見が無ければ、もっと違う方法を取ってみるべきである!」

「はんちょー。そのもっと違う方法って、具体的にはなんですかー?」

「………」

 サウラの質問に、沈黙で返すブラッホ。表情は白い歯の見える笑顔のままなので、突然目の前に像が現れたかの様な印象を与えてくる。

「はんちょー?」

 沈黙が何時までも続けば、困るのは質問をした側であるサウラだろう。笑顔のブラッホは、暫くサウラを困らせた後に、漸く口を開いた。

「新たな探索方法を模索するために従来の探索がある故な!」

 つまり、新しい方法はまだ分からないそうだ。なんとも前途多難な冒険もあったものだと、俺は溜息を吐いた。




 砂漠に存在する何かの痕跡。それが確かに存在している事は証明できたものの、そこから先の発展が望めない。短い調査期間の中で、如何に新しい成果を得るかどうか考えた結果、俺達以外の力を借りるという結論が出た。

 その結論を出したのはブラッホであり、誰の力を借りるかと言えば、船内で学者という役目を担っているデリダウ・ドーガという老人だった。

 彼は魔法士である。魔法士と言うからには魔法を使う。というか魔法使いだ。ガーヴィッド公国は魔法使いの存在を認めており、許認可制として選ばれた魔法使いに魔法学を学ばせている。デリダウもその一人ということ。魔法士は公的に認められた魔法使いを指す単語だ。

 魔法は文字通り、法から離れた社会を乱す常識はずれの法則のことだ。何も無いところから火を起こす。風も無いのに砂塵を上げる。手も触れずに物を散乱させる。そういったことを可能にする知識や技術と言えば良いのか、それを起こすのにも、それなりの理屈があるそうだが、俺達が生きる社会には組み込まれていない法則によってそれは成されるらしい。

 そういったものの総称こそが魔法であり、デリダウはその力と技術、そして知識を持つ老人であった。

「ふぅむ。跡があるばかりでその存在が確認できない。それどころか他の生物の存在すら発見できないとな? それは不思議じゃのう」

 蓄えた顎鬚を擦り、しわくちゃの顔を疑問で歪ませるデリダウを見て、どうしてこの老人はスーツを着ているのだろうともっともらしい問い掛けを俺はしたくなった。

 老人は老人らしい体格や顔をしているが、何故か衣装がスーツなのだ。ネクタイをして、黒と白の濃淡が目立つその衣装をしている。別に若い人間のみがその姿をして良いという理屈も無いだろうが、もう70になりそうな老人が着ると、どうしてなのかと尋ねてみたくなる。今、この場においてはしないものの。

「で、ご老体はどう考えますかな! 何がしかの予測ができるのなら是非とも聞かせていただきたいですな!」

 何時も通りにブラッホが率直に尋ねる。現在俺達は一旦ペリカヌへと戻り、デリダウに与えられたペリカヌ内の研究室で、彼の意見を聞き出そうとしている状況だ。

 ちなみに彼の研究室はそう広く無い。限られた空間で、個人に広い部屋を与えるというのが難しい事情もある。

 なので、押し掛けるのは俺とブラッホの二人だけだ。というか、やはり俺はブラッホ班長とセットにされている。もう一度頭の中を整理してみても、別の班員だった気がしてならないのだが。

「予測と言われてものう。聞かされた話の内容が少なすぎるというか、砂漠に跡が残っていただけじゃろう?」

 何か得るものが無いか。得るものが無いにしても、新しい調査方法は無いものか。そう期待してデリダウに尋ねるのだが、良い返事は貰えそうに無かった。

「切っ掛けでも良いのですがな! どうにもこう………正直なところ、手詰まり感が強いのです!」

 ブラッホの言う通り、調査は停滞していた。砂漠で、砂中を何かが動いたらしき跡は見られるものの、それ以上が見つからない。

 あの空から見た何者かの動きも、調査を始めてから新たに発見できたという事は無かった。

「さて、そう言われても、わしらみたいなのは、将来を予想するのじゃあなく、起こったことにあれこれ理由を付けるだけじゃから………ううむ。あくまで予想の範疇でしかないが、こういうのはな、まず正解が目の前にあると考えると良い」

「目の前にある正解って言うと、つまりこの生き物がまったくいない砂漠ってことですか?」

「その通りじゃな。ここは非常に生き難い場所であり、だからこんな砂漠になっておると考えられるのであれば簡単なんじゃが、その何かの動きが砂中にあったとするのならば、話は違ってくるのう」

 蓄えた顎鬚を擦りつつ、デリダウは予想を続ける。生命が存在しないはずの場所に、生命が存在している。そこからどの様な予想が立てられるのか、やや期待してみることにした。

「先生はいったい、例のクジラについてどう考えておられるのですかな!」

 先生。ブラッホがデリダウをそう呼んだのを見て、中々に似合った愛称だと感じる。しわくちゃなのに身形だけはしっかりして、尚且つやや変人なところもある彼は、先生と呼ぶのが相応しく思えた。

「クジラと呼ぶのが相応しいかどうかもわからんがね、なんにせよ生物だというのなら、一種の生態系を築いていると見るべきじゃ。そうして、地上にその生態系が無いとするのなら、そことは違う場所にそれらが存在していると見るべきじゃろう」

 デリダウはそう言うと、視線を下へ向けた。気落ちしたわけではあるまい。きっと、その目線はそのままの意味なのだ。

「地面の下に、クジラやその餌になりそうな何かが居ると、そう予想できるわけですか?」

「浮かぶ石を発掘して羽も無く空を飛ぶことができる生物だっておるじゃろう? なら、地面の下に潜って生きとる生物たちがいてもおかしくは無いと思うがの」

 不可思議と言うのならば、俺達自身が不可思議なのだから、他の生物がどれだけ不思議だろうと受け入れるべきだ。先生らしく、デリダウはそんな講義みたいな話を聞かせてくれた。




「んじゃあ砂でも掘れってんですか? 俺達全員で?」

 バーリンの不満な声が食堂に響く。ペリカヌに戻り、デリダウから話を聞かされて早々、ブラッホと俺は、他の作業員達と合流して、次の調査方法を話し合うことにしたのである。

「調査の予定期間はあと一日であるからな! やれることも限られているであろうし! そういう方法しかなかろうかなと!」

「はんちょー、無茶言わないでよー!」

「ち、力仕事は覚悟していたが、それはあまりにも………」

 ブラッホの提案は概ね不評であった。地中の中に未知の生物がいるやもと言う話から、発見するにはそんな方法しかないと俺も思うのだが、実際、スコップなどを持ち、この砂漠を掘り返すなどごめんだと言う気持ちが上回る。

「とりあえず妙な生物はいるかもしれない。それは砂漠の下に隠れてるかも。って結論じゃあ駄目なんですかね?」

 アニーサ艦長はその程度の成果でも良いと考えているはずだ。今回の調査にしたって、飛空開拓計画の本筋では無いのである。あくまで新たな開拓地を見つけるために得た情報の、確度を上げるための前段階と表現できるかもしれない。

 ここで空飛ぶクジラがいるのであれば、クリスト達から手に入れた情報通りで、彼らから聞いた人が開拓しやすい場所もある可能性も高まると、そういう理屈あっての仕事のはずだ。

(他に外界から来た飛空船の情報を集めるって部分もあるだろうが、どっちにしたって今回は外れだろ)

 空飛ぶクジラが実は飛空船の見間違いなのではないか。そんな風に考えた上で、アニーサ艦長はこの砂漠の調査に乗り出したのかもしれない。だが、それが実際には砂を泳ぐ何かであったのならば、大外れだ。

 そう思うのであるが、ブラッホはそれでも調査を真面目に進めたいと考えているらしい。

「確かに調査を短期間にしたのも、すぐ発見できぬのならば早々に諦めろという艦長の意思かもしれんな!」

「だったら………」

「だったら、冒険はしない方が良い……かね? それではあまりにつまらんと思わんか? 私だって上からの命令に逆らうなんてことはせんよ! 船とはチーム。船を動かす力はチームワークであるからな! それは乱せん! しかしだね、命令された日数はまだ一日あって、そこに全力を尽くすことに限れば、一切、誰にも迷惑は掛けんはずだよ!」

 むしろなんらかの成果を得られるかもしれない。例えば苦労して得たワクワク感だ。とでも言いたげだった。

 非常に暑苦しく、それでいて見返りが即物的では無い、ブラッホらしい考えだろう。

「あのなあ班長。迷惑ってんなら、俺らが疲れるって言うのがあるじゃねえか。そこんとこどう思ってんだよ」

 バーリンの言う通り、無駄な労力になる可能性は十分にある。その労力を温存しておくと言うのも、船のためになると言えばなるだろう。

「もっともな意見である! だからして、今回は強制せんよ! やりたい奴がやれという事だ! 無理強いされた者は落し物が多くなる! という言葉もあるしな! ただ、私は一日あれば一日掘り続けるというだけであるからな!」

 どこから用意したのか、数本のスコップを、大きな手で一握りにして、それを持ち出そうとするブラッホ。もしや一人でそのスコップすべてを使って砂を掘るつもりか。

「馬鹿なことやめてくださいよ」

「ふむ? そんなに馬鹿に見えるかね?」

 俺はブラッホの横に並ぶと、ブラッホから一本スコップをふんだくる。

「ええ、かなり間抜けですね。自分一人で全部のスコップ使うつもりですか? 俺の分は残しておくのが上役の勤めってもんでしょう」

 ブラッホの案は疲れるだけで見返りは無いかもしれない。だが、あと一日、暇に過ごすよりは面白そうだと思えた。だから乗ってみることにした。

「ほほう! まったくもってその通りであったな! ならば使うが良いぞ! 道具を使うというのは人間の知恵! 分け与えるのは人間の優しさである!」

 なんだか、ブラッホは何時もよりも笑顔が輝いている様に見える。きっと気のせいだろうけれど。

「も、もう一本。貰えないか?」

 と、俺とブラッホを挟んで反対側に近づく影が一つ。意外な事にビーズだった。

「疲れる仕事であるぞ? そして手に入る良きものと言えば、汗くらいかもしれんが……?」

「そ、その汗で構わない。考えてみれば、そういうのが欲しくてこの計画に参加したんだ」

 意味深がことをビーズは口にした。彼みたいな人間が、いったいどの様な目的で飛空開拓計画に参加したのか。そう言えば聞いたことが無かった気がする。

「ちょ、ちょっと! 本気でそんなスコップでこんなデカい砂漠を掘るつもりなの!?」

 サウラが俺達の前に回り込み、進行を阻止するかの様に立つ。

「デカい砂漠も一穴からという言葉もあるではないかな!」

「無いですよ! そんな言葉! ああもう! 仕方ないわねぇ…………余計な発言になるかもってあえて言わなかったけど………実は、砂漠を歩いてて、気になる場所があるの」

「なんと! それは良いことを聞いた! どんな場所かね? 是非とも聞きたいところであるよ!」

 別に黙っていたことを咎めもせず、ブラッホはサウラの仲間入りを歓迎している。彼らしいと言えるし、彼だからこそ、個性豊かな作業員班をまとめられているのかもしれない。

(カリスマとは違うんだよな。なんて表現するべきなんだ? 人徳? いやいやいや)

 なんだかしっくり来ない気分であるが、どちらかと言えば良い気分だ。何か見つからなくたって、こういう気分になれるのならまあ良いかと思えるくらいには。

「………え、ちょっ、待てよ! 俺だけ一人で待てってのかよ! だから待てって! 行く! 俺も行くからさあ! 置いてくなよぉ!」

 後ろから誰かの声が聞こえてくる気がするが、あえて無視して歩みを進める。どうせ、なんだかんだ言いつつ、他が働くならついて来るタイプの人間だし。


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